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変態の中の変態

「はぁ?何だよ事情って」


「事情は事情だろう……。訳だよ、訳……」


 歯切れの悪い回答に絵音は訝しげな表情を浮かべる。


「そんなもん汲んでやること、1ミリもねぇよ。相手は変態だよ?いつもの来夢なら同情の余地すらなしで警察に突き出してんじゃん」


「まぁそうだけど……。てか、ほらアレじゃん。アイツ直接人を傷つけているわけじゃないし、むしろ助けてるほうじゃん?人助けする奴に悪い奴はいないって言うか……」


「人助けしてたら公共の場にあんな姿さらしていいのかよ。見たくない人とか子供とかたくさんの人不愉快にさせて。人助けしている自分格好いいとか思いながら酔いしれてんだろ?自分自身に。そんで勝手に興奮して……。あんな姿で人前に出てきて公衆の面前でシコッてんのと同じじゃん。変態は変態だよ、大変態!そんなヤツの事情なんてこれっぽっちも知りたくない。これ以上来夢がアイツの肩をもつならもうこの話はお終い。――少し、来夢のことも軽蔑かも」


 横を向いた絵音の表情は少し悲しげにも見えた。やるせない気持ちの来夢は返す言葉もなく黙り込んでしまった。


 その雰囲気を壊すように大声で廊下から来夢を呼ぶ男が一人。宗田栄二だ。手招きして来夢を呼び寄せる。


「なんだよ」


「お取り込み中悪いな、コレ渡して欲しいって」 


 宗田の手には手紙のようなものが。来夢は思わず宗田の顔を無表情で眺める。


「俺じゃないぞ!渡してくれって頼まれたんだ。大体お前と俺のやりとりにこんな古風な媒体使う意味ねぇだろうが!」


「わかってるよ、誰からだよ」


「よおーわからん。髪の長い可愛いお嬢様系の女の子だったぞ。お前も隅に置けないねえ、あんな可愛い絵音ちゃんがいるってぇのに」 


 来夢は宗田のことばが終わらないうちに踵を返した。慌てて宗田は制服の裾を掴み引き留める。


「わったったった、待て待て。受け取らないつもりか?」


「理由も誰かもわからないのに行く義理もねえ。もしまた遭ったらそう伝えといてくれ。待たれても困るからな」


「自分で言えよ!俺は伝書鳩じゃねえよ?どいつもこいつも」


そうこうしているうちに予鈴が鳴り、ホームルームの時間となった。授業が進むうちに来夢もすっかりその事は忘れてしまっていた。


 

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