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石は転がる

 兄弟二人に遅れて、アランも階段の下にたち、遺跡を見上げた。


 そして地にうつる影。


「なるほど……」


 現れた巨大な古代文字。転移魔法陣だ。


 何かが足りない。


「ノエルを呼ぶしかないな」


「いや。エマがいる」


 兄の言にエドガーは首を横にふる。


「ラウルがついてくる」


 しばらく黙っていたリシャールは大丈夫だと、ノエルを呼ぶことを決めた。



 ノエルはクリスタに王都の屋敷へ呼び出された。


「お母様、ご用はそれだけですか?」


「そうよ。一緒に買い物に行きたいの」


 クリスタは娘と出掛けるのが夢だったという。


「それは嬉しいですが」


 ノエルの手の中で石がピクリとする。


「ラウル。あなたは留守番よ。いいわね」


 クリスタがこっそりとノエルには息抜きが必要だと石へ魔力を飛ばす。


「代わりに僕が相手してやるよ」


 リシャールが石を受け取る。


「離れたくないけど、お土産を楽しみにしていてね」


 石はほのかに熱をもち、静かになった。


 クリスタの私室。


 なぜかパンツに着替えるように言われ、魔法陣で保護棟へ。そこからすぐにお猿の里へ飛んだ。


 待っていたのはアランとエドガー。


「なぜここへ?」


 商店はない。ノエルは戸惑うばかり。


 クリスタの顔をみると、笑っている。


「今日行くとは言ってないわ」


「ではまたの機会に。楽しみにしています」


 ノエルもつい笑ってしまう。


 エドガーがノエルに歩み寄る。


「金目の…。力を貸していただきたい」


 命令ではないと。


「エドガー様……」


「魔術師でも王子でもない者の頼みだ」


「もちろんですとも。友人の頼みならば喜んで」


「友人か。それも悪くない」


 エドガーが小さく笑う。


 心はまだ寒いままだが、友人なら離れる事はない。


「ノエル。こっちに来ておくれ」


「伯父様、お元気そうで何よりですわ」


 溌剌とした姿に、ノエルは安心した。


「ここの生活は楽しいよ。ノエルありがとう」


「シャーリーは」


「それなんだがね」


 父親シャルルが甘いのか、どこの魔獣家族も甘いのか。


 子猿は気の赴くままに、遺跡中を走り回った。


 文字が見つかったのは外だったが、アランが書き留めていた地図が役立った。


「大発見です!」


 ノエルはお任せして良かったと。


 エドガーに案内されて、階段の下に立つ。


 たしかに魔法陣があった。


「中央に何か置くのかしら」


 空白の部分が気になる。


「たぶんなんだが……」


 金目の乙女が立つのではないか。


 これはリシャールも同じ意見だった。


 中央に立ち、歌えば、反響する。


 すべての魔獣を呼び寄せ、空へ返す。


 儀式だ。


「ラウルはどうするつもりだったのかしら」


ノエルがハッと顔を上げた。


 オルゴール……。


 それならば、誰も立たなくても。


「ノエルも持っていたね」


 エドガーは少し安心した表情だ。


「いえ。森の家にあったのは、ユーグ様の奥様アウラ様のもの。もう魔力も残っていなくて」


「それならば、君の歌を入れられるのではない?」


 やってみる価値はある。


 森の家からオルゴールが持ち込まれた。


「転移魔術は本当に便利」


 疲れ知らずで、ノエルはオルゴールの裏の魔法陣を眺めていた。


 ちっともわからない。


 貸してとエドガーの手に渡った。


「現代の転移魔法陣の原型は、あれだったのかな」


 二人で窓辺に並んで外を見る。


 日がのぼり、影は形を変えていた。


「エドガー様は魔人と名付けられたのですね」


 高度な魔術を生み出した魔人。魔術師とも違う。


「人はやはり、魔人とも魔獣とも共に生きるべきだ」


 たとえ魔力のない世界になっても。


「そうですね。失いたくない」



 日が高くなる頃、子猿がやっと起き出した。


「キキー」


「シャーリー。お寝坊は駄目よ」


 ノエルを見つけたシャーリーは嬉しそうだった。


 手を出して土産をねだる。


「マリエッタに言われたのかしら」


 何も持ってないと手を広げた。

 とたんにシャーリーはご機嫌ななめ。


 次にエドガーに狙いを定めた。


「何もないよ」


「キキー!」


「あっ! 返せ!」


 エドガーが足止め魔法を放つが、かわされた。


 そして、あっという間に遺跡のどこかへ消えた。


「エドガー様。何をとられたの?」


 エドガーの慌てようにノエルが驚く。エドガーは幼獣には甘かったのに。


「あれは、ドガールを封印した石だ」


 詳しくはまた後でと言われ、エドガーに続き、ノエルも駆けだした。


 迷路のような細い通路。


 扉をあけ、また次へ。


 わずかに扉の開いた部屋の前に立った。


「驚かさないように」


 ノエルがうなづき、小さな声で子守り歌を歌う。


 コロン コロン


 転がる音。石だ。


 中に入ると子猿は夢の中。


 だが、石は転がっていく。

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