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姿をあわらした影

 リシャールとエドガーは、魔力をもった影を探し続けた。


 光の玉で隅々まで照らし、お互いの影も常に警戒していた。


「兄上。ドガールは向こう側へ連れて行かれた。それなのになぜ」


「もう人ではなくなったってことだ」


 魔獣を憎悪しながらも、魔にとりつかれ、全てを超える存在に妄執していたドガール。


「消えるなら、魔獣も道連れに……か」


 魔力などほとんどない残骸。大したことは出来ないだろう。


 リシャールがつぶやく。


「もし、すべての魔獣を、と言うなら兄上は……」


 少しでも血が混じれば、人なのか、魔獣なのか。


「知らないだけで、混じっている者は多いと考えている」


 ――魔力持ち


 兄の言葉に、エドガーは鳥肌がたった。



「次が今日開かれたばかりの部屋だそうだ」


 エドガーが兄と自分の体にいくつもの防御魔法を貼り付けた。


 目の前には石の壁。小さな手形が目印。


 ゆっくりと押し開けられた。

 光の玉が吸い込まれ、中を煌々と照らした。


 ノエルの伯父がいるはずなのに、姿が見えない。


「!!!」


 エドガーの体に衝撃が加わり、それを弾く大きな音が部屋に響いた。


 瞬間、リシャールが扉に向けて攻撃魔法を放った。


 扉の影からアランが吐き出され、壁に叩きつけられた。


 すぐさまアランに結界魔法がかけられる。


 平たく伸びた影が逃げだそうと、床を這いずる。


「逃すか!」


 これでもかと、リシャールの攻撃魔法が繰り出される。


 闇は無音のまま、引き裂かれまいと抵抗をする。


「兄上! この中に!」


 エドガーが瓦礫となった扉の破片を闇に投げつけると、封印魔術が展開された。


「……やったな」


 リシャールが息を長く吐いた。


 ドガールは弱っていた。そうでなければ簡単に生け捕りなどできなかった。


 ゴツゴツとした瓦礫を足で蹴飛ばした。


 中で暴れる様子もない。


 ラウルを封印した魔術が役に立った。皮肉なものだと、つい笑ってしまう。


 エドガーが床に散らばる瓦礫を寄せ集め、破片を継ぎ目もない丸い球にした。


「古代文字で封をすれば……」


「ノエルに頼むのか?」


「金目の乙女に頼む」


 即答したエドガーの口元がわずかに緩んでいた。


 兄は黙って弟の背を叩いた。



 私室に運ばれたアランは、すぐに意識を取り戻した。


 ドガールのことは覚えていた。姿はなくても気配でわかったと。


「あいつも探していた……」


 ここに何かあるってことだ。


 エドガーが立ち上がった。


「僕たちも探そう」


「そうだな。ラウルにだけ背負わせたくない」


 リシャールもうなづく。


 魔獣の声を聞かずに、国を興した者の末裔として、やるべきことがある。


 アランは絵をじっと眺めていた。


 はっと顔をあげ、引き出しから遺跡の見取図を取り出す。


「この絵と同じ場所に立ってみたら、どうでしょう」


「この形は……」


 エドガーが窓に寄る。


 そして目に入った。


「あれだ」


 エドガーがお先に、と飛び降りた。


 神殿に続く階段の下に立ち、遺跡を見上げる。


 遺跡は崩れてる箇所はあるが円環。


 歪な形の窓。


 雲が途切れ、月明かりだけが遺跡を照らす。


 地に古代文字が浮かび上がった。

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