第4話 担任まで信者とか、シャレにならん
「ちょっと、待ってよ!颯斗ぉ〜!!」
画面越しに手を伸ばす厄災ことモア。
俺は脇目も振らずに学舎へと一気に走り抜くことをここに誓った。
後ろからなんか叫び声がするが、知ったこっちゃねぇわけで。
「俺のことは、ほっといてくれ───!!」
駆け抜ける間にも、俺は人々の注目の的だった。
誰も、こんな注目のされ方は求めてねぇーよ!!
キンコンカンコーン。
そんな訳で、俺は無事?に学校へと辿り着いたわけなんだが……
周りのヤツの様子がおかしい。
いや、おかしいっていうレベルを超えてやがる。
「ねぇ、仁奈に変な告白した場違い男よね?」
ズキッ。
「うん。そう!!彼女欲しいからって告白するのが仁奈って……鏡見てからにしなさいよ!」
ズキッ。ズキッ。
傷心した胸に遠慮なく突き刺してくる女子の辛辣なお言葉。
痛い。
だが、心地良い。
あ、今のナシ!!
「仁奈もとんだ災難だったわよね?」
「そ、そんなこと……ないよ」
ビクッ。
俺の肩が思わず揺れた。
え、そうなの白川 仁奈?
白川へと視線を向けそうになる。
掌に爪を立てた。
ここで、向いたら男が廃る!!
「優しすぎだから!あんな男、地に堕ちればいい!」
ズキンっ。
パリーン!!
俺のガラスのハートが砕けた気がした。
芯を失った俺の身体はヒラヒラと紙のように倒れ込む。その先で、同胞が俺とスマホを行ったり来たりしてやがる。
「やっぱり、これ……枢木だよな?」
「間違いないって!!」
その目は羨望と嫉妬が渦を巻いていた。
あ?俺が羨ましいってか?
この状況の俺が!?
マヂで、冗談キツイぜ。
「なんで、あの男が……我らの」
────ガラッ。
唐突に開いた扉。
つっかけサンダルの乾いた音が教室に響く。
教壇に上がる担任 瀬名ちゃんのビジュがいつもと違う。
なんで?あんなにガッチリ決まってんの?
だ、誰よ?
「瀬名ちゃん、今日気合い入ってんね?」
その変わりようにクラスのヤツが口火を切った。
気怠そうな顔と寝癖セットが通常営業の瀬名ちゃんは見る影もない。
「ま、まぁな」
照れたように廊下に幾度も視線をやる瀬名ちゃん。
「ゴホン」
咳払いをひとつしたところで、瀬名ちゃんは廊下へと声を向けた。
「お入り下さ……は、入りなさい」
ガラッ。
予期せぬ訪問者が俺のクラスに入ってきた。
鼻を掠めた甘ったるい香り。
歩みとともに揺れるツインテール。
そして、俺を真っ直ぐ見つめる既視感のあるグリーンの瞳。
オイ。誰か嘘だと言ってくれ。
いや、夢だ。
誰か俺を引っぱたいて起こしてくれ。
喚き経つ教室。
黄色い声でいっぱいになる。
「静かにしろバカども!!すみません……モアン提督……」
は?
モアン提督だと……?
瀬名ちゃん、───まさか?!
「大丈夫よ、子分その78」
「あ、僕のこと認識されて……」
感極まった瀬名ちゃんは顔を手で覆う。
指の隙間から感涙の涙を垂れ流す。
オイ、何だ……
この茶番は……
俺の顔から感情が失せていく。
「どうも、初めまして。モアン提督こと、灰島 モアです」
小首を傾げ愛想を振り撒く、もう二度と会いたくなかった幼馴染。
細めた瞳が、俺を射抜く。
小悪魔のように微笑む唇。
その唇が音を発する。
ゾワッと逆撫でる感覚に襲われた。
な、何する気だ……
や、やめろよ!!!
「そして、そこにいる枢木 颯斗は私の婿殿なんで」
口元に添えられた指先。
教室の温度が急激に下がる。
「手、出したら……海の底に沈めるから、ね」
夜露死苦。
そんな漢字が見えた気がした。
凍りついた?クラスメイトたち。
解凍まで時間がかかるのは言うまでもない。
この日、厄災である灰島 モアが、俺のクラスに襲来し新たな学園生活の幕が開けた瞬間だった。
いや、来んなよ!!
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