第3話 俺の居場所把握されてんだけど?
「行ってきます……」
玄関のドアを開ける。
気の進まなすぎる朝。
足に生き霊がしがみついているように重い。
なのに、空はバカみたいに青く澄み渡ってやがる。
「日本沈没しろ」
そんなやっかみを吐いたとこで、俺の肩を叩くヤツが現れた。
「朝からヤサグレんなよ?枢木 颯斗」
顔をそこに向ければ今にも吹き出しそうなヤツと目が合った。
その瞬間、顔を背けブッと吹き出されたわけだが。
「ざけんな!!触んじゃねぇよ!」
肩に乗せられた気安い手を跳ね除ける。
「朝から荒れてんなー颯斗」
艶っとした顔で俺を見るのは長谷部 凌大。
俺はコイツが嫌いだ。
「うるせぇ、話しかけんな!この男の敵が!!」
ギロッ睨みつける。
あーツヤツヤ肌が許せん!!
ピコン。
俺のスマホじゃない通知音。
「あ、ちょっとタンマ。えっと、誰だ?」
チラッと見えたスマホ画面。
そこにあったのは女の名前。
ブチッ。
ピコン。
また通知音。
俺のじゃない。
「こっちもか……どうするかな」
困ったように眉を寄せ、スマホから俺へと視線を移す凌大。
俺にスマホ画面を見せながら、口を開く。
提示して来た画面には女の名前がズラっと並んでいやがる。
「なぁ、颯斗?どっちとデートすべき?」
ブチブチッ!!
「知らねーよ!!このヤリチン野郎が!!」
傷心した俺に塩を容赦なくって塗り込みやがって!!
「え?そこはちゃんと紳士に……」
「聞いてねぇーよ!!」
こんなヤツと同じ空気を吸いたくなくて、俺は足を動かす。
とにかく、先を急いだ。
「なぁ、颯斗?」
投げられた俺の名前。
俺の後ろを歩く凌大。
なんで後ろにいやがるんだ!
「なんか……お前、見られてねぇ?」
は?そんなわけ……
視線を上げる。
知らない人間が俺をジロジロ見てくる。
耳に入った今、最も聞きたくもないワード。
むしろ、忘れていたその記憶。
「告白で玉砕した……子だよね?」
ブレザーがリュックの重みでズルっと下がった。
あ、俺……
黒歴史を拡散されてた、わ!!
頭を抱え、空へと声を穿つ。
「だ、誰だよ!!俺の───」
「あ、ここにいた!」
は?今の声……!?
俺は辺りを見渡す。
あの姿はない。
「どうしたんだ?颯斗」
この状況を理解していない凌大は、首を傾げる。
でも、身体はひしひしと感じている。
厄災と書いて……
灰島 モアと読むあの女の存在を。
「先に行くなんて、婿殿は亭主関白、なのかな?」
その言葉に俺は勢い良く振り返った。
そこには姿はない。
だが、代わりにスマホ画面が差し向けられていた。
面識の無い人物は俺に強い眼差しを注ぐ。
いや、あんた……誰よ?
そこに映し出された人間は……
「……な、なんだ?」
生唾を呑み込む。
怖気付いた俺の足は不覚にも後ろへと下がった。
「颯斗が先に行くから、だよ?私の子分たちの力、甘く見ないでね?」
目を細めて笑う。
画面越しに映る姿はまさにハーフ美少女。
しかし、この女の姿に騙されてはいけない。
この女の真の姿は……
厄災そのものだからな!!!!
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