第5話 俺の味方はいませんか?
「モアって言うの?」
「だから、なんだよ」
「かわいい名前だね。ボクはくるるぎ はやとだお」
「なっ、可愛いって言うな!!」
そう言って顔を赤くした幼いモアは、
男の子ではなくて、
────極道一家の娘でした。
チャイムが鳴った瞬間、俺は椅子を盛大に引いた。
この教室から逃げるように、俺は走り出す。
「颯斗ぉ」
猫なで声が耳にこびりつく。
聞こえない。
俺にはそんな言葉聞こえない!!
俺は今日で颯斗を辞める!!
「ちょっと、待っててば」
俺はドアに手を伸ばす。だが、それを阻む厄災の手先。信者とされる敵がこの学園にいたことを俺は思い出した。
「枢木……モアン提督が、お呼びだぞ」
グイッと締め付けた腕。
ブレザーにキツい皺が刻まれる。
「か、加藤……お前も、なのか」
震える眼が、加藤 司を捉えた。
その目は俺を逃すつもりはない。
「モアン提督、絶対。提督の為に俺は生きる!!」
いや、やめとけ。
あんな厄災、友としてオススメ出来ねぇ。
教室に反響する足音。
まず、上履きでこんな音出ねぇから。
「ありがとう。子分689」
澄ました声が耳に届く。
俺へと近寄るのを肌が察する。
「いえ、モアン提督の為なら俺は!」
敬礼し、頬を赤らめる加藤。
いや、敬礼って……
同級生だぞ?
自分とは違う世界を見ている感覚になってきた。
「もう、逃げちゃダメじゃない?」
足音が止む。
この甘ったるい香がトラウマになりそうだ。
俺は恐る恐る首を背後に捻る。
「…………」
目が合う。
俺の口の端がピクピク動く。
「颯斗、昨日は寂しかったよ」
逆光のせいか、モアの顔がだいぶ不穏に見える。
長い睫毛がグリーンの瞳を隠す。
「やっと会えたのに、逃げるように駆け出すなんて」
俺へと伸びてくる指先。
キラキラと怪しく光る鋭利な爪が俺へと迫る。
そ、それで刺すつもりか!?
逃げようとしても、加藤の馬鹿が俺の腕をしっかりと掴むもんだから逃げるに逃げられない。
「こんな可愛い私を道端に放置して、拉致られたらどうするの?颯斗……」
いや、お前を拉致した方が心配だぞ。俺は!!
「──そんなことするヤツがいたら、会ってみてぇよ」
苦し紛れにそう言って退ける。
普通の女子ならここで、もぉ!と怒るだろう。
だが、この厄災モアは嬉しそうに笑うんだ。
「ふふ。私のことそこまで分かってるのは、颯斗だけだよ」
俺の頬を撫でたモアの毛先。
ち、近ぇって!!
ブルブルと震える俺の腕。
あ?
なんで、震えてんだ?
俺は震えてる腕へと視線を落とす。
震えていたのは俺ではなく、掴んでいた加藤だった。
「……こんなに近くで、提督を感じられるなんて……俺、もう死んでも、いい……」
鼻を啜りながら喋る加藤。
いや、こいつにそんな価値ねぇから。
ここで命捨てるな!
他にもちらほら聞こえる嗚咽。
オイ?マジかよ……
「モアンちゃんと一緒の空気吸えるなんて……」
「幸せすぎるッ!!」
どっと身体から力が抜けた。
俺はどうやら、変な世界に転移?したのかもしれない。
※この物語は異世界転移ではありません。ただ、信者がいるだけです。
お読み頂きありがとうございます。
ブクマや評価頂けると嬉しいです!
次回もお楽しみに♡




