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魔法士希望の令嬢は武闘派天使と世界を救う  作者: 綾瀬 ちいの


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2

「俺はバルデウス。さっきは治癒魔法助かった。ありがとう、本当に感謝している。」


うっ……笑顔がまぶしい……!


金髪天使様のバルデウス様はキラキラした笑顔で挨拶してくださる。

先ほどまで横になっていたバルデウス様も今は体を起こして座っていらっしゃる。

とにかく良かった、体は大丈夫そうで。

しかしながら……凄い、見た目も雰囲気も美しすぎて――この顔面に慣れるでは一瞬固まってからでないと返事ができないだろう。



「は、はじめまして!私はこの境界地を治める伯爵、境界伯家の長女イーリッカ=ブロムベリと申します。

あの、お体は大丈夫でしょうか?お怪我をされていたようで……私、まだ魔法に自信がなく……」


いつもはこんなにたどたどしくないのよ!本当は、ちゃんとご令嬢のご挨拶が、できるんだから!

今はちょっと動揺しているだけで……。


「イーリッカと言うのだね、素敵な名前だ。そうか、ここは境界地なのだね……。

ああ、それなんだけど、すまなかった。怪我は大したことなかったんだよ、本当はね。ちょっとしたかすり傷ぐらいで。

でも治癒魔法でかすり傷もすっかり治ったよ。ありがとう。自信がないというけれど、全然そんなことない。

治癒魔法はしっかりかかっていたし、魔力量も申し分ない。自信を持って良いと思うよ。」


バルデウス様がそう言うと、銀髪天使様のムニアン様がこれ見よがしにため息を付き、


「本当に……バルデウス様が天界から落ちただけでどうこうなるような事はないでしょうに。

私からも改めて謝罪を……本当に申し訳ありませんでした。」


と言って頭をさげる。

いや、ここまで謝られると私の方が申し訳なくなってくる……


「あの、いえ、ご無事なのでしたらそれで……。

しかしやはり天界から落ちてしまわれたのですね?

それでかすり傷とは……さすが天使様ですね!とても丈夫なのでしょうか?

あ!あと、目を覚まさない振りをなさっていたのは、私と関わらないためだったのでは?

もしそうでしたら、私、何も見なかったことにして今すぐ立ち去ります!」

 

緊張も相まって早口で色々喋ってしまった。

いつもはもう少し落ち着いているのよ!お母様にも良く注意されるから、気をつけているの!


私の話を聞いたお二人は顔を見合わせると、バルデウス様が頷き、こちらを向いて話し始めた。

お二人は阿吽の呼吸ね、なんか、尊いわ!


「先に誤解を解いておくけど、君に関わりたくなくて目覚めなかったわけではないんだ。

そのー……うーん……レディーにこんなことを言ったら気持ち悪がられてしまうかもしれないけど……

イーリッカの魔力がね、とても心地良かったんだ。だからもうちょっと魔力を感じていたいなあ、なんて思って……」


「なに気持ちの悪いこと言っているのですか。本当に、初対面の女性になんてことを!

それになんですか、その理由。例え本当であってもやっていいことと悪いことくらい分かるでしょう!子どもではないのですから!

いえ、幼い子どもだって分かりますよ、心配させたまま人のご好意を享受するなど……!」


ムニアン様が間髪入れず突っ込みを入れる。やっぱり息ぴったりね!


「あの、えっと。魔力が心地良い、とは?人から治癒魔法を受けると心地良いものなのでしょうか?」


さっきから質問ばかりね、私。でも気になりすぎて大人しくしていられない。


「そうですね。他人から治癒魔法や、支援魔法などを受けると相手の魔力が自分の中に入ることになるので、

そこで多少は魔力の相性のようなもので心地良く感じたり、少し違和感のような不快感を感じたりする場合がありますね。

特に天使は自分の魔力量が多いので、自分の魔力と合わないと敏感に感じ取ってしまうことがあります。

ですから、バルデウス様なんて、あいつからは絶対に魔法は受けない、などと選り好みが激しくて……。

まあ、もし本当に死にかけてたら問答無用で受け入れてもらいますけどね。」


ムニアン様が笑顔で解説して下さる。

内容と表情が合っていない気もするが、美しいからなんでも許せる……!


「ムニアン、そうは言うけど俺は死にかけたことなんて今まで一度もない。

イーリッカ、天使はね、人間より魔力をたくさん持っていて強い魔法をたくさん使えるのは事実だ。

でも逆に言うと魔法が強すぎて人間のように繊細な魔力の調節は苦手だ。そうなると考えなしに魔法を使うと大惨事になる。

……対象物以外を巻き込んでしまったりね。

だからこそ!天使は剣と体術を小さい頃からみっちり仕込まれるんだ。

あと支援魔法に含まれる、身体強化魔法。これをね、24時間365日発動させていられるようにね。

だから例え天界から地界に落ちてもかすり傷くらいですむんだよ。」


まあ、今回落っこちたのも、剣術の訓練をしていたら勢い余って結界をぶち抜いてしまったからなんだけどね。


バルデウス様も笑顔で話す。うう……まぶしい……いや、そうじゃない!


「え、え?天使様って神より授かりし魔法で魔物を討伐するって……世界史の本でお勉強したのですけど……

あれ?天使様って、魔法の操作苦手なのです?え?あれ?

確かに、魔力量は多くて魔法は強力、確かに、それは合っているのですけれど……それを滅多に使わない?

その変わりに剣術、体術!?え。そんなお話聞いたことありません……美しい見た目で、まさかの武闘派……?え、えーーーーー!!??」



イーリッカ、12歳にして憧れの天使様像が、がらがらと音を立てて崩れていくのが分かりました……。

夢のような憧れって、本当に夢なのですね――。


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