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色々と一気に情報が入ってきて私の頭の中はパンクぎみなのだけど……
そんな私を見て天使様方は笑っていらっしゃった。
私、笑われているけど、天使様の笑顔が見られるならいくら笑われても良い気がするわ!
「確かに、私たちの中では魔法よりも剣術や体術が主流なのが当たり前なので違和感はありませんが、
人間側からしたらとても不思議なのでしょうね。魔力が有り余っているのにわざわざ剣を握るなんて。」
ムニアン様は少し笑いながらそうおっしゃった。
それにバルデウス様も頷くとやはり楽しそうに口を開く。
「そうだよな。普通に考えて。なんかイメージ崩して申し訳なくなってくるよ。
普段は中央都市イクイリオンで全て理解した人間にしか会わないからなぁ。反応が新鮮で申し訳ないと思いながらも笑ってしまう!」
ううっ……楽しんでもらえたなら幸いです!
私は顔をうっすら赤くしながら返事をする。
「すみません、私、中央都市の騎士様に知り合いがいないもので、実際に天使様に会ったことのある方とお話したことがないのです。
全て世界史に書かれている内容しか知らなくて。お、お恥ずかしいです……。
魔力に相性があることも初めて知りました。まだ色々なことに関して知識不足ですね。でも、とても勉強になりました!」
バルデウス様もムニアン様もとても優しい笑顔を浮かべて頷いてくれる。
天使様は心もお美しいようだ……!
「イクイリオン・オーダー……中央都市の騎士たちも基本的には天使についての詳細は極秘事項として扱っているからね、
知り合いになっても教えてはもらえないだろうね。
だから知らなくて当然、気にしなくて良いよ。
それにもうイーリッカは天使本人に会っているわけだからね。知りたいことがあれば聞けばいいよ。
ん?極秘事項?いや、まあそうなんだけど、別にいいんじゃない?恩人なのだし、イーリッカが誰かに広めたりしなければ。
イーリッカに知られる分には問題ないよ、俺としてはね。」
バルデウス様はムニアン様と視線を交わしながらそうおっしゃった。
ひえー!本当に恐れ多い!でも嬉しくもある!だって本物の天使様が私を信頼して下さってるわけで……!
ついついにやけてしまう!
ムニアン様はそんな私たちを交互に見ると、観念した、というように苦笑いを浮かべて頷いた。
「そうですね。イーリッカ様は信頼に値するお方とお見受けします。
私も、バルデウス様の人を見る目に関しましては信頼していますので。」
ムニアン様にも信頼していただけるなんて……!光栄すぎる……!
「それでしたら!せっかくですし、我が家でおもてなしをさせていただけないでしょうか?
ゆっくりお茶を飲みながらお話させていただけたら……それに、天界にお帰りになるにしても少しお体を休めてからの方がよろしいのではないかと。
それともすぐに天界にお戻りにならないといけないのでしょうか?」
わくわくしながらそんな提案をしてしまう。だって、せっかくお知り合いになれたのですし!
もちろんお休みいただくのが一番の目的ではありますが。
私の言葉にバルデウス様は少し上を向いて天界を眺めるように視線を動かすと
「うーん、ムニアン。俺の壊した結界はすでに自動修復されているよな?」
と、ムニアン様に向かって声をかける。
ムニアン様はバルデウス様に向かって頷く。
「そうですね、私がバルデウス様を追って慌ててその破壊された結界を抜けた時点ですでに修復が始まり、破壊された部分が小さくなっていましたから。
確実に、もう塞がっていますね、あの穴は。
……となると、中央都市から戻るしかありませんね。
高性能な結界はこういうときやっかいですね。また外側から破壊して入るという手もなくはないですが……。
それをやったら私も、バルデウス様でさえ法で裁かれますね。こちら側に落ちてしまうときの穴でさえ、故意ではないとしっかり証明しないと法律違反ですしね。」
戻ってからは忙しくなりそうです、とムニアン様は眉間にしわを寄せている。
うん、どんな表情でも絵になる天使様、癒やされる。
ムニアン様が困っているのに私はほわん、としてしまう。おっと、いけない、いけない。
「それでしたら、中央都市イクイリオンを目指すのですね?直接行くのでしたらここは境界地なので近いのですが……緊急用の外門を開けてもらえれば、ですね。
それがだめなのでしたら一度王都までいかないといけません。
あ、お伝えするのを忘れていました。ここはニヴリム国です。ニヴリム国の境界地になります。
どちらにしても一度我が家へお越しいただくのがよろしいかと!きっと私の家族もお力になれるかと思います。」
「そうだな、どのみち天界に帰るのであれば王都経由になりそうだし。……さすがに緊急用の外門を開けたら追加の始末書になりそうだしな。
と、なると王都の転移陣でイクイリオンに入るしかないか。」
バルデウス様はこちらを向いて頷きながらそうおっしゃった。
ちょっと大変そうだな、と私からしたら思うのだが、なぜかバルデウス様は楽しそうな表情を浮かべている。
なぜだろう?私は不思議に思って首を傾げる。
ここ、人間の住む地界は一つの大きな大陸でできていて、その大陸の中央に中央都市「イクイリオン」があり、その地だけが天界とつながっている。
そのイクイリオンには魔物が発生する空間の歪みがあるため地界の他の場所から隔離するために防壁と魔法結界が張られており、基本的には各国の王都、王城内にある
転移陣からのみ行くことができる。
中央都市以外の地界はどうなっているかというと、中央都市を囲むように5つの国に分かれている。
そして各国、中央都市の反対側、つまり大陸の端の方に王都は位置する。
なぜかというと、中央都市の周辺にはごく稀に小さな空間の歪みができることがあり、そこから大きくはないが魔物が発生することがある。
そのため王都の重要な機関に被害が及ばないようにするため、空間の歪みができにくい中央から一番離れた場所を選んだのだそうだ。
この王都の場所の理由には色々なふかーい理由もあるらしいけど。
中央都市の周りには森がぐるりと囲っているのだが、そこは各国境界地と呼び、いつ空間の歪みができても対処できるようにと、
境界地をまもる役目を担う境界伯を任命し、その境界伯には王国騎士団とは別に境界伯の権限で動かせる境界騎士団を保有しているのだ。
なので中央都市の防壁に緊急用の門が各国の位置にそれぞれ1つずつ設置されてはいるが、中から強力な魔物を逃がさないためにも
滅多なことがない限り開いてはいけないことになっている。
私は5つの国のうちの1つ、ニヴリム国の境界伯の令嬢なのだ。
だからここから中央都市は近いのだけど、入れないよね、っていう話だ。
ここは大陸のほぼ中央なので、そこから王都に行くには大陸の端まで移動しなければならない。
結構な距離だ。……私は産まれてから一度も王都には行ったことないけども。
うーん、移動、大変そうだけど、バルデウス様は楽しみなのかな?
ムニアン様がバルデウス様の言葉にため息をつきながら頷く。
「仕方ないですね。時間はかかってしまいますがそのルートが妥当でしょう。
……バルデウス様、ずいぶんと楽しそうですね。普段降りることのできない地界を旅できるのは楽しそうだ、とか思っているのでしょうけど……
天界に戻った後は色々と大変ですからね、覚悟はしておいてくださいね!
飛んで行けたら早いでしょうけど、さすがに地界ではできないですからね。
とにもかくにも。一度イーリッカ様のお屋敷にお邪魔をして旅の準備やニヴリム国王への紹介状などを手配していただかないといけません。
あ、あとは一度天界にも連絡を入れておくのと、イクイリオン統括にも連絡を……ああ、頭が痛い……。」
そう言って頭を押さえるムニアン様。確かになんか大変そう……よく分からないけど。
そうか、私たち人間が天界を未知の地として憧れるのと同じで、天使様も地界にいらっしゃることはないから、
そこを旅できるのは楽しいのかも……?
バルデウス様はとっても好奇心旺盛な方のようだ。
なんか天使様って静かなイメージがあったけど、本当に全然真逆だ!びっくりだけど、私的にはとっても親近感がわく。(外見以外ね)
しかしながら、天使様を我が家でおもてなしできそうだ!なんて素晴らしいのだろう!
きっと最初で最後だ、こんな機会は。
お父様もお母様もきっと驚くわ!
……お兄様は王都にいらっしゃるから残念だけれど。
私お兄様の分も頑張って天使様を精一杯おもてなしするわ!
私は天使様お二人を見るとにこっと笑い、
「ようこそ、ニヴリム国境界地、ブロムベリ境界伯家へ!
こちらです、ご案内いたしますね!!」
と、元気よく声を弾ませた。
さあ!はりっきっておもてなしね!!
読んでくださりありがとうございます!




