第二話 特異点
第二話 特異点
「ゲロッピーさん? “AI”か、何かですか?」と、比手元が、問うた。
「確かに、“AI”なら、説明が付くな」と、豚崎も、同調した。
「でも、ゲロッピーって“キャラクター”の“AI”なんて、入れてませんよ」と、比手元が、回答した。
「何だ? その“えーあい”ってのは?」と、ゲロッピーが、凄んだ。
「人工的なものかと思ったもので…」と、鼠谷は、口を挟んだ。そして、「じゃあ、ゲロッピーさんは、何者なんだい?」と、尋ねた。AIでなければ、何処かからの通信だと考えるべきだからだ。
「私は、“四次元人ゲロール”だ」と、ゲロッピーが、厳かに告げた。
「またまたぁ〜。ご冗談を…」と、豚崎が、返答した。
「豚崎先輩。“異世界トラック現象”が、起こっているのですから、ゲロッピーさんの四次元人というのも、本当かも知れませんよ」と、比手元が、真顔で、進言した。
「俺も、ピテの言う事に、賛成だな。ピテのスマホと四次元空間が、繋がったとも考えられるぜ」と、鼠谷も、口添えした。黄兎が、“異世界トラック現象”で、転移して居るのだから、ゲロッピーが、“四次元人”であっても、不思議ではないからだ。
「僕も、ゲロッピーさんの言う事は、本当だと思うよ」と、黄兎も、賛同した。
「ちっ! 多数決じゃあ、しょうがないな…」と、豚崎が、折れた。
「で、ゲロッピーさん。四次元人のあなたが、どうして、俺達に、接触を?」と、鼠谷は、問うた。何かしらの意図が在ると察したからだ。
「うむ。お前達の次元と私の次元の存亡に係わる事だ…」と、ゲロッピーが、示唆した。
「存亡に係わるって、穏やかじゃねぇな」と、豚崎が、半笑いで、口にした。
「豚崎先輩。何だか、嬉しそうですねぇ」と、比手元が、指摘した。
「いやぁ〜。ラノベ的な展開になりそうだからな」と、豚崎が、にんまりとなった。
「“四次元人”って、初めて聞きますねぇ。何だか、ワクワクしますよ」と、黄兎も、嬉々とした。
「あいつらは、放って置いて、話を聞かせて貰えないかな?」と、鼠谷は、促した。他人事には聞こえない口振りだからだ。
「うむ」と、ゲロッピーが、了承した。そして、「お前達、三次元人共が、“超兵器”を使いまくって、“次元の壁”に、亀裂が入っているんだよ」と、語った。
「確かに、俺らの世界で、“原爆”という超兵器を、二度使っているからなぁ〜」と、鼠谷は、理解を示した。たった一発で、何もかもが、消滅する物だから、“次元の壁”に、亀裂が入っても、不思議ではないからだ。そして、「三次元のあちこちって、“他の世界”でもって事か?」と、問うた。自分達の世界以外にも、存在するという事を、言っているようなものだからだ。
「うむ。“並行世界”と言うべきかな。お前達の世界のように、超兵器の使用の愚かさに気付く世界も在れば、やり方を変えてでも、争う世界も存在する。しかし、遡れば、選択が分かれて出来た世界だ。そこで、私は、お前達の次元に、干渉する事にしたのだよ。このまま放って置いたら、“次元の壁”が崩落して、双方の世界が、干渉し合って、対消滅するかも知れんからな」と、ゲロッピーが、考えを述べた。
「確かに、違う次元同士ですと、何が起こるのか、分かりませんし、原爆以上の悲惨な事になりそうですね」と、鼠谷も、同調した。四次元人が、干渉出来るのだから、次元の壁が、かなり傷んでいるのだと考えられるからだ。
「私は、三次元には行けんが、“特異点”へ、送ってやる手助けは出来るんだがな」と、ゲロッピーが、示唆した。
「特異点?」と、鼠谷は、小首を傾いだ。急に言われても、困りものだからだ。
「何だか、ヤバそうだな」と、黄兎が、日和った。
「つまり、“次元の壁”が、“決壊”しそうな“時”と“場所”へ送ってやろうと言う事だ」と、ゲロッピーが、説明した。
「じゃあ、何者かが、“超兵器”を使用する所へ、転移させてくれるって事かな?」と、鼠谷は、怪訝な顔をした。気が変になりそうなくらいの事が、目の前で起きているからだ。
「そうだ。しかし、時空が不安定で、大まかな場所しか判らない。正体が判っていれば、私だけで、対応していただろうがな」と、ゲロッピーが、淡々と言った。
「そうか。まあ、訳の分からん奴に、俺達の世界を、台無しにされるのも、癪だしな。やれるだけの事は、やるとするかな…」と、鼠谷は、溜め息を吐いた。とんだ休暇になりそうだからだ。
「はぁ〜。僕の世界に戻ってもなぁ〜」と、黄兎が、ぼやいた。そして、「どうせ、帰ったところで、ガリヴァーにしばかれて、何処かの異世界へ、跳ばされたちゃうかもね…」と、悲観した。
「鼠谷。さっきから、“ラノベ用語”的な言葉が、聞こえていたけど、ついに、ラノベに目覚めたのか…?」と、豚崎が、歓迎ムードで、問うた。
「違うよ」と、鼠谷は、素っ気無く否定した。そして、説明を始めた。
しばらくして、「うひょーっ!!」と、豚崎が、歓喜の声を発した。そして、「ゲロッピーさんの力で、異世界へ行けるって事なんだな!」と、上気した。
「おいおい。遊びに行くんじゃないんだぜ。そこのところ、分かっているのか?」と、鼠谷は、不安を漏らした。軽く捉えているようにしか見えないからだ。
「ですね」と、比手元も、同調した。
「こいつだけ、放置するか?」と、ゲロッピーが、提言した。
鼠谷は、頭をふり、「いや。独りにすると、碌な事にならないから、連れて行こう」と、冴えない表情で、言った。単独行動にしておくと、騒動を、起こしかねないからだ。そして、「どの“特異点”へ、転移させてくれるんだ?」と、尋ねた。何処へ行けば良いのか、分からないからだ。
「そうだな。先ずは、お前達の時間を、今から八〇年くらい前へ、遡らせて貰うとしよう」と、ゲロッピーが、告げた。程無くして、「終わったぞ」と、声を発した。
その直後、「え⁉」と、四人は、驚きの声を発した。実感が、無いからだ。
「あんまり、何も変わっていないみたいだが…」と、鼠谷は、周囲を見回した。少しして、コンクリートで造られた“研究所”っぽい建物が、視界に入った。その瞬間、「あれは、“毒ガス研究所”の建物…」と、口にした。他に、考えられないからだ。
「おい! 兵隊さんの扮装をした奴らが、近付いて来るぜ」と、豚崎が、呑気に言った。
「あれは、“本物”だ」と、鼠谷は、回答するのだった。




