用語・登場人物解説2
【用語集・登場人物紹介】
■■■ 用語集 ■■■
●クローン(ホムンクルス)
アレクトゥスが独自の魔法で作り出した人造人間。アレクトゥス自身の記憶を転写されており、いわば「同じ記憶を持つ別の身体」。作中では主にクローン呼びされる。
●記憶転写魔法
アレクトゥスが編み出した、記憶を情報として扱いホムンクルスに移し替える独自の魔法体系。この魔法によって最初のクローンが誕生した。中身がどう働いているのか解明されないまま同じ結果だけを出力する、いわばブラックボックス的な性質を持つ。
●アイデンティティ・コリジョン
既に自我を持つ人間に記憶転写を行った際に生じる現象。被験体の自己崩壊・廃人化に関わっているとみられ、タウミエル魔獣研究所の資料からその存在が判明した。
●二次クローン(クローンの複製)
クローンをさらに複製する試み。かつて初期段階で試されたが個体の寿命が著しく短くなる欠陥が判明し、以降は行われていなかったとされる。しかし21号によってこの禁が破られ、量産クローンシリーズ「クリフォトゥス」が生み出されている。
●製造番号
クローンたちに割り振られた個体識別番号。番号が若いほど製造が古い(年長)とされる。社会では別の名前を名乗って生きているが、番号で呼ばれることは「素の自分」を突きつけられることに近い意味を持つ。
●魔法の原理
この世界ではもともと呪いが蓄積すると魔力となり、魔法を行使していると言われていた。
コルテスの研究により呪いの正体が判明。
呪いとは人間が自然観察したときに法則性を見出そうとする想像力の不合理が、実際の自然法則と不一致したときに生じる情報の齟齬による摩擦である。
コルテスはこれを虚数情報と命名。
魔法とはこの虚数情報によって自然法則を侵食する技術のことを指す。
●体系魔法と呪術
魔法には二つの系統がある。ラティウスの強化魔法などは「体系化された魔法」で、戦力として扱いやすい反面、魔力を探知されやすい。一方プラエトルが用いる魔法は「呪術」と呼ばれ、個人依存・秘匿性の高い技術。探知されにくい代わりに再現性に乏しい。魔法の原理的に考えれば、魔法以外の法則=科学のはずだったが、呪術の存在によりこの世界の科学技術の発展を阻害する一因ともなっている。
例えば物が落下する速度に法則性を見つけても、それが自然法則なのか呪術によるものか判別できない。この判断を間違えて、呪術を科学と予断したものをこの世界では「呪われた」と慣用表現する。
●黒い泥
魔法を行使した際や、魔獣が死亡したときに発生する虚数情報の塊。大地に染み込んだ黒い泥は地脈を通じて集約され、時折地上に噴き出す。その性質上記憶転写魔法や魔獣の誕生と深く関わる。
●魔獣
自然動物とは別に存在する、理性を持たないが魔力を扱うモンスター。半人半狼のほかにも様々な姿を持つ。どんな形であれ魔獣同士であれば生殖が可能であり、代を経ると単為生殖すら行う。地上に吹き溜まった黒い泥から発生することもある。絶命すると黒い泥に溶け落ちる。その正体は、肉体改造魔法を使い続けた人間の末路である。
●魔獣ドローン
複数の個体が命令を入力され連携して行動する、通常の魔獣とは異なり人間に使役されている一群。哨戒任務での運用に加え、自動運転の馬車を引くなど民間利用も始まっている様子が窺える。
もともと貴族の間では自然動物を使い魔とすることがステータスだった時代があり、魔獣ドローンはその魔法の応用によって生まれた。
戦争の長期化により使い魔を軍事利用する発案がなされたが、動物よりも量産しやすくコストがかからない魔獣がドローンの素体として選ばれた。
●魔法食品・魔力抜き
魔法で生産力を強化した食品。摂取者の体内魔力が保たれている間は通常の食品と変わらないが、魔力が枯渇した瞬間に消失し、深刻な栄養失調を招く危険がある。軍人など魔法を常用する職業では摂取が厳しく制限されている。誤って摂取した影響がなくなるまで魔法使用を控えることを、魔力抜きと言う。
●大ティダス帝国
かつて存在した帝国。共和制に移行したのち東西に分裂、テラソリス王国とノヴァ・ティダス共和国に分かれたとされる。宗教的争いが分裂の原因と言われている。エラクの語るところによれば、この帝国はかつて悪魔の民族の祖先と交戦しており、天災による大飢餓・疫病の混乱の中で、彼らを北方へ追放したという。
●テラソリス王国
現在の戦争の当事国のひとつ。ラティウス(140号)が軍人として所属する国家。アスト・ラナ教が普及している。
●ノヴァ・ティダス共和国
現在の戦争の当事国のひとつ。プラエトル(51号)が上院議員として所属する国家。サルボ教が普及している。
●アスト・ラナ教
大ティダス帝国で信仰されていたサルボ教から分派した宗教。教えに従って良く生きれば転生者になれるという教義を持つ。ユイはこの宗教の転生者について研究している。
●サルボ教
アスト・ラナ教の分派元となった宗教。救世主による救済が教義の核であり、転生の存在を否定している。
●北の異民族(悪魔の民族)
北方から侵攻してきている第三の勢力。長はエラク。民族の存続のため外部の人間を攫い交雑を行っているとされる。ノヴァ・ティダス共和国にとって彼らは排除すべき異民族であり、接触、誘致した者は厳しい目で見られる。エラクの語るところによれば、彼らの祖先は大ティダス帝国との戦争の末、疫病の噂を理由に北方へ追放された経緯を持つという。
●獣化魔法
悪魔の民族が用いる、肉体を変容させる魔法。虚数情報を体内に取り込み、人間を魔獣へと変える技術である。
●ルーペス砦
テラソリス王国、ノヴァ・ティダス共和国、北の異民族の三勢力が衝突している戦場。物語冒頭の舞台。
●セリカリア
ルーペス砦から南へ向かった先にある、絹織物と工芸で知られる街。上流階級にも人気の織物を産出する。
●テクストール工場
セリカリアにある織物工場。表向きは織物生産のみを行っているが、実態は稼働を停止した「クローン生産工房」である。工場長は20号セディウス。ジュリア(28号)が誕生した場所でもある。
●タウミエル魔獣研究所
コルテス(21号)が所長を務める研究機関。スコリア(143号)ら研究員が所属し、魔獣ドローンの開発・運用に携わっている。黒い泥の調達費の異常な膨張や、担当研究員の失踪といった不審な動きが確認される。地下には巨大施設「シャンバラ」が秘密裏に建設されている。
●シャンバラ
タウミエル魔獣研究所の地下に広がる巨大な秘密施設。表向きは「永遠の命」と「楽園」を提供する会員制施設とされ、「権力」「飢餓」「疫病」「戦争」の四エリアに分かれた「終末回避シミュレーション」を展示している。
「権力」エリアでは、個体差を持たない魔獣たちが暮らす擬似的な原始共産制の共同体が展示されている。
「飢餓」エリアでは、多様な魔獣種が共食いによる食物連鎖を形成し、人間の食料事情から切り離された循環が展示されている。
「疫病」エリアでは、あらゆる病原を集めた標本と、それら全てを一身に受け止め生かされ続ける原型を留めない肉塊が祀られており、そこから病のワクチンが抽出される仕組みになっている。
「戦争」エリアでは、巨大ゴーレム兵器「タロス」をはじめとする強力な魔獣ドローン兵器が開発されている。
これら展示は単なる見せかけではなく、実地で行われている人体実験であり、研究費獲得のためのスポンサーに見せるパフォーマンスである。
●タロス
シャンバラ「戦争」エリアで開発された巨大ゴーレム兵器。高さ十メートルを超え、物理・魔法双方に対する耐性(対魔法装甲)を備える。
●魔獣化ウイルス
獣化魔法の原理を解析して作られた、人間のみに感染する魔法性のウイルス。感染者を魔獣へと変質させる。戦争エリア産の飛翔自爆魔獣ドローンに搭載され、世界中への散布が実行された。
●フェリクス村
テラソリス王国辺境にある村。ユイが転生者研究のために訪れた。悪魔の民族の襲撃を受け、村人が攫われる被害に遭った。村外れの精霊の森に泉があり、魔女ポエナが住んでいるとされる。
●精霊の森
フェリクス村のはずれにある森。奥に泉があり、ポエナが暮らしている。枯れた大木があり、かつて何かを祀っていた形跡が見られる。
■■■ 登場人物紹介 ■■■
◆アレクトゥス・フィデリウス【消息不明】
テラソリス王国の貴族の家に生まれた青年。記憶転写魔法を編み出し、自らの記憶を転写したクローン(ホムンクルス)を生み出した張本人。研究のためなら禁忌にも手を出す危うさを持つ一方、生み出したクローンたちには奇妙な情の深さを見せる。現在の生死・所在は不明。
◆140号 ラティウス【行方不明】
テラソリス軍に所属する若い少尉。軍刀レイピアとマスケット銃を扱う。歯に衣着せぬ物言いで、年長のプラエトルにも臆せず噛みつく気の強さを持つ。
◆51号 プラエトル【行方不明】
ノヴァ・ティダス共和国の上院議員を務める老人。クローンの中でも古株にあたる。落ち着いた物腰の裏に、状況を読み切る老獪さを秘めている。クローンたちの研究予算の分配、各種隠蔽工作などを請け負っており、ゆるい繋がりでしかないクローンたちの実質的なまとめ役。
◆66号 ユイ
小柄でトピー帽を被った女性。理知的で場を収めようとする調整役だが、独自の信念のもと北の異民族と行動を共にしており、アスト・ラナ教の転生者研究のためフェリクス村を訪れていた。
◆エラク
悪魔の民族を率いる長。血に濡れた斧槍ハルバードを武器とし、圧倒的な質量と魔力を纏う巨躯を持つ。一族の宿命として血の暴走のリスクを抱えており、自らの内に流れる「血」そのものへの憎悪を滲ませる。
◆45号 黄泉路歩き【行方不明】
激しい戦場に現れては死を振りまく厄災として恐れられているクローン。自らの敵を、世を乱す悪鬼として定めている。
◆28号 ジュリア
ユイと親しく、ルーペス砦の抜け道のことを事前に伝えていた人物。テクストール工場地下の秘密工房で誕生した初の女性型クローン。生まれた直後は誰とも口を利かず、食事も拒み、暴れて泣き崩れる激しい混乱期を経験した。セディウスの根気強い関わりの中で少しずつ言葉を取り戻していった過去を持つ。
◆20号 セディウス
セリカリアのテクストール工場の工場長。糸くずのついた作業服の老人で、飄々とした語り口の裏に長年クローンたちを見守ってきた情の深さを持つ。28号ジュリア誕生の場に立ち会った古参であり、彼女が言葉を取り戻すまで根気強く寄り添った。同期に21号がいる。
◆143号 スコリア【死亡】
タウミエル魔獣研究所に所属していた女性クローン。ラティウスとは同じ工房で生まれた同期で、旧知の間柄。21号コルテスによって記憶を上書きされ、二重人格の状態に置かれていた。また、彼女自身もクローンたちに対する記憶転写の実験に加担していた。
◆21号 コルテス【死亡】
タウミエル魔獣研究所の所長。20号と28号とは同期。かねてより施設の不審な動きの中心人物とみられていた。プラエトルとの対峙で、失われたオリジナル・アレクトゥスの発見こそが自らの目的だと判明。魔獣・記憶転写両技術の集大成として開発した魔法ウイルスを世界中へ散布させた。シャンバラ最深部でラティウスの奇襲を受け致命傷を負い、絶命した。
◆83号 スクリバ
プラエトルの記録係を務める青年。丁寧な物腰で実務に抜かりがなく、戦況報告や会計書類の整理などプラエトルの側近としての役割を担う。タウミエル魔獣研究所の予算・人員の異常にいち早く気づきプラエトルへ報告したほか、黄泉路歩きの過去二十年の出現記録をまとめ、その規則性をユイに開示した。
◆150号 ミヌキア
タウミエル魔獣研究所に配属されたばかりの新人クローン。とても小柄で見た目はほぼ女児。支給された白衣が全く身体に合っておらず、間延びした喋り方が特徴。本来再現性のないプラエトルの呪術を即座に読み解き、体系的な形へ組み替えてみせた。
◆クリフォトゥス
21号コルテスを量産化したクローンシリーズ。短命化により忌避されていたクローンの複製という手法によって生み出された特殊な個体で、複数体が同時に存在する。若く精悍な頃のコルテスと同じ容姿を持つ。コルテスの記憶と目的をそのまま継承しており、本体の死後もその計画を代行・実行する役割を担っている。
◆ポエナ
フェリクス村外れの精霊の森に、泉とともに住むとされる女性。銀髪に白いドレス、肌に蠢く黒い模様が特徴。全身が黒い霧に覆われて見えるため一般人には視認できず、彼女と会話した記憶も長くは保持されない。一部の村人にとっては知恵袋的な存在。ユイに「この世界の仕組みを知りたいなら悪魔を頼れ」と助言し、悪魔の民族について「神への反逆者」と評した。
(用語集・登場人物紹介は今後随時更新していきます)




