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第二十三話 ワールドエンド・ケテルクラスター



テラソリス王国 王国防衛評議会 第一回


日時:事変後0日目(着弾当日) 夕方

場所:王城 評議の間

出席者:国王陛下、宰相、軍務卿、内務卿、アスト・ラナ教大司教、貴族院代表、王都守備隊長


議事概要

【軍務卿】 本日夕方、王都および主要都市数箇所において、正体不明の爆発性飛翔体による同時多発的な着弾が確認されました。現時点で判明している被害地点は王都、セリカリア近郊、および北部三都市です。主な被害の性質は爆発物によるものではなく、着弾地点周辺で魔獣の魔力反応が急激に上昇していることから、魔獣ドローンを用いた自爆テロと推定しております。死傷者数は現在集計中ですが、王都だけで負傷者三十名以上と見られます。

【内務卿】 王都の市民には「悪魔の民族による散発的な襲撃」として説明しております。混乱を避けるため、当面はこの説明を維持したいと考えます。

【貴族院代表】 悪魔の民族の仕業にしては手口が異質です。飛翔する魔獣を用いた同時攻撃など、これまでの彼らの戦術にはありません。ノヴァ・ティダス側の関与を疑うべきではないでしょうか。先の漁業権紛争以来、彼らとの間にはまだ火種が燻っております。

【軍務卿】 その可能性も含めて調査中です。ただし着弾地点の一つはノヴァ・ティダス領内の都市にも及んでいるとの未確認情報があり、単純な敵対行為とは断定できません。

【アスト・ラナ教大司教】 王都神殿においても、着弾直後より原因不明の悪心・眩暈を訴える信徒が散見されております。物理的な負傷とは別に、何らかの呪いの影響が疑われます。詳細は追って報告いたします。

【国王陛下】 原因の特定を最優先とせよ。同時に、ノヴァ・ティダス側へは非公式に事実確認の使者を送る。いたずらに軍を動かすことは慎め。




ノヴァ・ティダス共和国 元老院非常事態対策院 第一回


日時:事変後0日目(着弾当日) 夜

場所:元老院議事堂 特別会議室

出席者:元老院議長、内政執政官、軍務執政官、公安局長、財務担当元老院議員


議事概要

【公安局長】 夕方、首都および南部二都市にて、飛翔する魔獣による爆発被害が発生しました。首都での負傷者は現在確認中ですが四十名を超える見込みです。魔獣は着弾と同時に爆散消滅、または黒い泥状の残滓に変じており、通常の魔獣ドローンとは異なる挙動を示しております。

【軍務執政官】 テラソリス側の関与を強く疑っております。彼らは先の紛争で我々の魔獣ドローン技術を目の当たりにしており、模倣・応用した可能性は十分にあります。

【財務担当議員】 一点、報告がございます。本院所属のプラエトル議員でありますが、事変発生の直前より、タウミエル魔獣研究所方面へ視察のため出張しており、以後連絡が途絶しております。護衛および随行の記録係からも音信がございません。

【元老院議長】 タウミエル、ですか。あそこはプラエトル議員の管轄下にある研究施設ではないか。

【財務担当議員】 はい。議員は先般、同研究所の会計に不審な点があるとして、独自に視察へ赴かれておりました。今回の事件との関連は不明ですが、時期的な符合が気にかかります。

【内政執政官】 現時点でその線を公にするのは時期尚早です。まずはテラソリス側への抗議と、こちらの被害状況の把握を優先すべきかと。

【元老院議長】 よろしいでしょう。ただし、タウミエルへは別途、内密に調査班を送ること。プラエトル議員の安否確認を名目にしてよい。




テラソリス王国 王国防衛評議会 第三回


日時:事変後七日目

場所:王城 評議の間

出席者:国王陛下、宰相、軍務卿、内務卿、アスト・ラナ教大司教、王都守備隊長


議事概要

【軍務卿】 この一週間で、着弾地点周辺を中心に魔獣による小規模な襲撃事件が計十七件発生しております。いずれも突発的で、事前の魔力探知に反応がありませんでした。これまでの魔獣とは発生の仕方そのものが異なります。

【内務卿】 加えて、ノヴァ・ティダス領のタウミエル魔獣研究所──かの地に拠点を置く研究機関に対し、本件の技術的関与が疑われるとして、両国合同での査察を打診いたしましたが、当該施設側はこれを拒否。現在、施設周辺に武装した集団が展開しているとの報告があり、事実上の実力による封鎖状態にあります。

【宰相】 ノヴァ・ティダス政府は、あの研究所を自国の管理下にあるものと認めるのか、それとも無関係を主張するのか、はっきりせぬな。

【内務卿】 先方も混乱している様子です。所管する元老院議員が行方不明との情報もあり、政府としての統制が効いていない可能性がございます。

【王都守備隊長】 恐れながら申し上げます。市井の一部で、「これは魔獣ではなく、人が変じたものではないか」との噂が流れ始めております。出所は不明ですが、放置すれば動揺が広がりかねません。

【アスト・ラナ教大司教】 ──それを唱えているのは、悪魔の民族に与していたとされる研究者の一団だと聞いております。信憑性は測りかねますが。

【国王陛下】 噂は噂として静観せよ。それより、タウミエルの件だ。武装集団を配置してまで査察を拒む理由は何か。宰相、ノヴァ・ティダスへ改めて申し入れよ。両国の緊張をこれ以上高めぬためにもだ。




ノヴァ・ティダス共和国 元老院非常事態対策院 第四回


日時:事変後七日目

場所:元老院議事堂 特別会議室

出席者:元老院議長、内政執政官、軍務執政官、公安局長、財務担当元老院議員


議事概要

【公安局長】 タウミエルへ派遣した調査班との連絡が、四日前より完全に途絶しております。施設周辺には何者かの武装集団が展開しており、我が方の使者に対しても立ち入りを拒否した模様です。

【軍務執政官】 所属不明の武装集団、とのことですが、装備・練度から見て正規軍ではありません。私兵、あるいは研究所独自の防衛戦力と思われます。

【元老院議長】 プラエトル議員の安否は。

【公安局長】 依然不明です。……なお、一点付言いたします。当該研究所の元職員と称する者たちより、非公式な報告書が本院宛てに提出されております。差出人はミヌキア、ならびにユイを名乗る者。内容は──今回の一連の事件が魔獣の単発的な襲撃ではなく、人から人へ感染し、やがて人体そのものを魔獣へと変質させる病、すなわち「疫病」である可能性を指摘するものです。

【内政執政官】 ──荒唐無稽な話だ。魔獣が病であるなど、前例がない。

【財務担当議員】 しかしプラエトル議員が視察に赴かれた経緯を鑑みれば、まったくの根も葉もない話とも思えません。

【元老院議長】 真偽の判断は専門機関に委ねます。ですが、今この段階で「疫病」などという言葉を公にすれば、いたずらに市民を恐慌させるだけでしょう。当該報告書は非公開の扱いとし、内々に検証を進めること。

【軍務執政官】 テラソリス側からタウミエルへの合同査察の再提案が届いております。いかがいたしましょう。

【元老院議長】 今は応じられません。あの施設の実態が明らかになれば、我が国の管理不行き届きを問われる。……体裁を整えるまで、時間を稼ぎなさい。





 プラエトル、ラティウス、黄泉路歩きの足止めにより、ミヌキアは無事シャンバラからの脱出をした。その後、すぐにプラエトルの事務所へ向かうと、ユイ、スクリバ、エラクとの合流をする。彼女は事情を話し、プラエトルらの救出を提案するがエラクにより戦力不足を指摘され、これを断念。そのため、国の助力を受けようとクローンの人脈を通して陳情するが、相手にされず。その間、着々と魔獣ウイルスの感染者は増えていき、一週間も経つと各都市で魔獣増加の被害が目立つようになる。これを見たミヌキアたちは自分たちで事態の対処を決意。残ったクローンたちを招集し、ウイルス対策組織CV「クストディア・ヴィタエ」を起ち上げる。しかし、招集に応じないクローンもあり、それはコルテスによる記憶転写の影響下と見られた。実際、陳情の影響もあり早期にタウミエル魔獣研究所が疑われ、ノヴァ・ティダス共和国とテラソリス王国の両方から査察を打診されていたがタウミエル側はこれを拒否、コルテス派のクローンたちが集結し、研究所周囲に武装集団を配置、両国との緊張状態が形成された。

 だが刻々と事態は悪化していく。小規模な感染クラスターが広がり、人が魔獣へと変貌する瞬間の目撃情報が相次ぐ。噂は新聞などを通し瞬く間に広がった。これと合わせ政府要人にもウイルス感染例が多数発覚し、その混乱は政府機能を徐々に低下させつつあった。

 そして事態はさらに急転する。

 事件発生から二週間経ったころ、所属不明の軍隊によってタウミエル魔獣研究所が攻撃されたのだ。使用されたのは対地下基地用の大規模地中貫通爆破魔法バンカーバスター計14発。これによってタウミエル及びシャンバラは壊滅的ダメージを負う。この時点で未だプラエトルら三人の生死不明であったが、生存は絶望的と思われた。

 ノヴァ・ティダス共和国、テラソリス王国は両者共に攻撃の関与を否定。しかし両国の関係は悪化の一途をたどり、大規模クラスターによる感染拡大もあり政府機能が事実上麻痺状態に陥り、軍部が暴走を始める。

 これにより宣戦布告なく軍事行動が拡大、二国は全面戦争へと突入する。


 事件発生から三カ月。全てが手遅れとなった崩壊した世界の中、テラソリス王国のフィデリウス家地下にあるクローン工房で、一人のクローンが目覚める。





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