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GOD ABILITY  作者: 伊藤 良本
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世界樹の謎

 僕が世界を救う……ねぇ。


 あそこで解散したあとすぐにミシェルさんが連絡をくれた。連絡がしっかりと届くかの確認をしているらしく、同じようにほかの人達の方にも連絡を送っていた。

 正直あの7名で世界を救うなんて考えられない。ミシェルさんはともかく夏海さんは少し頼りないし、友海ちゃんは僕より年下、美穂さんは救うっていう感じでもないし、メアリーさんは……案外強そうだけど女性だし、哲也さんはおこりんぼだし、僕は《時間を操る》以外でなんの取り柄もない。


「ほんとに世界を救う7名なのかな……。」


 着信音が鳴る。


 ミシェルさんからだ。

 ────────────────────────

 皆様へ。

 私の主様が部屋を一つ貸してくださるとおっしゃっているので、次の日曜日にこちらに集まって落ち着いて話し合いをしませんか?


  2019/6/17

 ────────────────────────

 次の日曜日の予定を確認しようとしたが思えば僕は予定をつくれる程の人間ではない。案の定日曜の予定は空白のカレンダーを見て分かる。

 5日後か……ミシェルさんが仕事してるところの富豪のお家ってどんな所なんだろうな。と思っているとミシェルさんから追加で連絡が来た。

 送られてきたのは、ミシェルさんが仕事してるところの家の周辺の地図だ。周りに何があるかを見てみるがよく分からない。地図の下を見るとしっかり住所も書いてあったので、すぐに端末の地図を開き検索してみる。

「結構遠いなぁ……。」

 遠いと言っても10キロ離れた所にあって、公共交通機関を使えば30分もかからない所にある。そう考えれば案外近い場所に住んでいたんだと感じる。

 ふと時間を見る。


  7:50


 と、携帯端末の画面の上には表示されていた。

 いつも家を出て学校に行く時間だ。

 そろそろ学校………っ!

 今僕がやっていることがいつもの事じゃないということに気づく。いつも家を出る時間が7時50分であって7時50分にまだ寝間着なのはおかしすぎる……。

 我に返る。


「遅刻じゃぁぁぁぁぁあああ!!!!」



 自分の教室のドアを片手で掴んで、腰と膝を曲げて息を切らしていると、「めずらしい」というような声が教室の色んなところからヒソヒソと聞こえてくる。とりあえず自分の机で休もうと、ハァハァと息を切らしながら、机に腰を落とす。顎をあげて天井を見ながら呼吸を整えていると隣の席から「なんで遅刻しそうになってたの?」と聞かれた。ここは適当に……。

「寝てた。」と素っ気ない態度で答えた。


 学校中に鐘の音が響き渡る。


 先生が教室に入ってきてSHLが始まる。

 いつも通り先生の長い話を聞き終えて1時間めの授業の準備をする。最初の授業は地理だ。偶然にも内容が世界樹についてだった。


「という感じに、航空写真を見比べてみると分かる通り、600年前にあった《鬼神寺》があった場所と今の世界樹は、ほぼ同じ場所にあります……」


 しかし、何故そこに世界樹が生えているかの説明はない。ただ考えられることとしたら、昔あった鬼神寺と世界樹には何らかの関わりがあるという事。あの時、僕の頭に入ってきたあの映像には寺らしいものなどは無かったから、関係はないのだろうか……まぁ、半径1000メートルもある樹木だし、たった数坪の敷地がどこにあってそれと世界樹が関係あるということは断言できない。ほんとに世界樹の中に人がいるのだろうか……。


 難しい顔をして悩んでたのだろう、隣の席の奴にまた心配されてしまった。

 とりあえずこの事については日曜日に集まって考えよう。


 ┷┯┷┯┷┯┷┯┷┯┷┯┷┯┷┯┷┯┷┯┷┯┷┯


「今の時間は……」

 携帯端末を見ると《11:30》の表記が映し出されている。

 蝉の鳴き声が響き渡るここは、都会であることを忘れさせるくらいにうるさい。額から顎にかけて皮膚を汗が流れていく。集合時間は《12:00》なのであと30分で集合場所に行かなくてはならない。ちなみに今は最寄りの駅に居てそこから200メートルほど離れたファストフード店に行かなくてはならない。残り200メートルほどなので着いたら昼ごはんを食べようと思っている。


 着いて端末を見ると《11:40》だ。

「神山君だっけ?」

 鼓膜を心地よく震わせるその声を僕はしっかりと覚えている。

「神崎さん、こんにちは」

 と、愛想よく挨拶をすると、神崎さんは慌てて「こんにちは」と返してきた。歳上だと分かっていても可愛くて今にも抱きしめたいくらいだ。

 そんな高鳴る胸の鼓動を抑えつつ僕は「お昼まだなので」と言って店の中に入ると後ろから、少し小走りに神崎さんが「私もまだなので」と言って後ろに並ぶ。


「いらっしゃいませ、ご注文は?」

 と、接客スマイルで店員が聞いてくる。

「ピリ辛マヨネーズバーガーを2つ、それからコーラのLを1つ、あとブラックポテトを1つ。」

「以上で」と言おうとした瞬間、神崎さんが隣に来て、「あとチーズバーガー1つと、カフェオレのMを1つ。以上で。」と乗り込んできた。


「何してるんですか。」

 小声で焦るように言う。

「おごってあげる。」

「いやいいですって、自分の分は払います。」

「私は大人よっ、ハンバーガーの一つや二つおごってあげるわよ。」


 結局そのまま押し切られてしまい、奢ってもらう形になってしまった。


「どぉ?美味しい?」

 まるで自分で作ったかのように神崎さんは言う。しかし、その表情は可愛らしくて苛立ちを覚えない。

「神崎さんが作ったわけじゃないのに……。」

 しかし、考えればやはり奢ってもらったのは嬉しいがこっちも男なので、おごられるのは少し気に食わない。ただ奢ってもらったからお礼は言う。

「だけど……ありがとうございます。」

 すると神崎さんは天使のような笑顔で「どういたしまして」と言った。思わず赤面する。これ以上神崎さんの顔を見てると天国に行ってしまいそうなので、慌ててバーガーにかぶりつく。

 僕が食べている間もずっとニヤニヤと神崎さんが微笑んでいて結構食べにくかったが、幸せな時間だった。

 気づくと12時になり、慌てて神崎さんと僕は、店の外に出る。


「おや、お先にお着きになってたのですね。」

 ミシェルさんが、不思議そうに僕らを見る。

「はい、お昼がまだだったので。」

「……。」

 ミシェルさんが黙り込んで見つめてくる。気づけばミシェルさんの他にも4人がじっと僕の方を見る。

「どうかしました?」

「あっ、これは失礼。いえ、お店の中からあなた達が出てきたので、いつの間に仲良くなったのかと思いまして。」

 と周りを見ると、全員が頷いている。

「い、いえっ、これは、その、さ、ささ、さっき早く来てご飯食べようとしたら神崎さんも今から食べるってことだったので、一緒にたべてただけです!」

 思わず慌ててしまう。神崎さんはというと、ニコッと笑っただけである。


「とりあえず、車を待たせていますので出発しましょう。」

 とミシェルさん先頭に車の方へ向かっていく。やはり想像通り、リムジンという車だった。


「うーわっ、ほんとにこうなってるんだ。」

 夏海さんが驚いている。

「こんな造りなのか。」

 哲也さんも初めて見るらしい。

「うわぁ」と女性陣3人が口を揃えて驚く。

「ほぇぇぇ」と…僕も思わず声を漏らしてしまう。

 その車の中は、車とは思えないほど綺麗で、いっそのことここで話し合いができそうな空間が広がっている。明かりもしっかりしていて、まるで高級ホテルの一室がギシッと凝縮されたようだ。


「それでは、今から30分ほどかかりますのでこの前言いきれなかった自己紹介や世界樹について話しましょうか。」

 とミシェルさんが進める。


「では、私から……私、ミシェル・デュ・バリーは能力として銃術の才能があります。武器種類は吸収型と言われています。」

「吸収型ってあまり聞かないのですが、どんなものなんですか?」

 とメアリーさんがぎこちない日本語で聞く。

「例えば私の銃術は撃ち抜いた相手の血を吸収して銃の性能が良くなっていくというようなものです。人によっては、記憶や寿命を吸い取って性能が上がる人もいますし、能力を吸収してその能力を銃につける人もいます。」

 一同がへぇと関心する。


「それじゃぁ、次は俺がやろうかな。」

 と夏海さんが能力を紹介する。

「俺の能力はミシェルさんの能力に似ているんだけど、俺は剣術の才能があって捕食型。捕食型は、吸収型に似ているけど、相手を斬って殺した時に剣自体がその肉体を捕食して、その相手のステータスによって剣の形が変わるっていう能力なんだ。」


「次は私の番ね。」

 と神崎さんが紹介を始める。

「私の能力は、結構人に引かれやすいんだけど……。」

 と、少し言いたくなさそうに神崎さんが言う。

「私の能力は、相手の思考を操作することが出来るの。例えば……」

 とその瞬間僕の目の前は真っ暗になる。

「っれ、神崎さん……一体何を?」

 周りを見ると、みんなが焦っていたのか、突然目の前で落ち着き出す。

「と、とと、とりあえず、神崎さんの能力も分かったし次は哲也さん、いきましょ?」

 と夏海さんが慌てて次に進める。


「俺の能力は、炎を自由自在に操ることができます。」

 と……かなり短くまとめて話したと思ったがその能力では話すこともないだろうと言うことは、哲也さんのその顔を見てわかる。


「じゃぁ、次はわたしかな。」

 メアリーさんが話す。

「わたしは、ゆきをじゆうにつかえます。」


 メアリーさんは雪を自由自在に操れるそうだ。


「じゃ、次は僕がやります。」

 と、僕も能力紹介を始める。

「僕の能力は時間を操ることが出来るんですが……訳あって、時間を遅くするか過去に戻るか時間を止めるなど限定的にしか使えないんです。」

 周りを見ると、少し心配そうに見てくるので慌てて「そんな深い事じゃないですから安心してください」と言う。


「最後は、私なのね。」

 と少しふてくされているのか友海ちゃんが話す。

「私は物質を自由自在に動かしたり変形させたりすることが出来るのよ。例えば……」

 すると友海ちゃんは、目の前にあったガラスのコップに手のひらをかざしす。すると瞬く間にそのガラスのコップは変形して綺麗なガラスの十字架が出来上がる。

 一同、「うおぉぉぉお」と声を上げて驚く。

「まぁ、こんな感じよ。」

 友海ちゃんが少し自慢げに言う。



「それでは、あと10分ほどで着きますがここでもう世界樹や今後のことについて話しましょうか?」

 とミシェルさんが勧め始める。

「うーん、10分でって結構中途半端になるし。」

「そうですよねぇ」

 夏海さんと神崎さんが悩む。

「それでは、着くまで一休みとしましょうか。」

 ミシェルさんが的確な答えを出す。その案に対して誰一人として反論はしない。その様子を見てミシェルさんは何も言わずに椅子に深く腰掛ける。それを見てみんなも深く腰掛ける。

 僕も深く腰掛けて考え込む。


 今、みんなの能力を聞いた限りだと普通の能力だ。別に珍しすぎるほどのものでもない。なのに何故僕達7名が世界を救うんだろう。消えた時間と世界樹と鬼神寺……何かがある。だけど何があるのだろうか。


「皆様、つきましたよ。」

 とミシェルさんがみんなに呼びかける。あんまり時間もたってないと思っていたけど……だいぶ悩んでたのかな?



「ほぇ」

 みんながその広すぎる敷地と豪邸を見て驚く。

「街中にこんな広い敷地……よくもまぁ買えたものだ。」

 哲也さんがリアルな話をする。


「ささ皆様、お暑いですから中に入りましょう。」

 ミシェルさんが手招きをする。それに従って僕たちは豪邸の中に入っていく。


「ほぇ」

 驚きが止まらない……。

「いらっしゃい。」

 驚いている僕らに、優しく響く声が届く。


「私がこの家の主をしております。クリスティン・フォート・エリオットと申します。」

 その人は輝かしい白髪を短く切りそろえて顔から見ても60歳は超えているのに、そのしわさえ美しく見える絵に描いたような老女だ。

「ささ、こちらへ」とエリオットさんが手招きをする。すると慌ててミシェルさんが「エリオット様この方達は私の客人です。私が案内しますので。」とエリオットさんを抑えて手招きをする。ミシェルさんに連れられてとある部屋に入る。そこはこの豪邸にしては少し小さめなこじんまりとした、しかし豪華な雰囲気がある部屋だった。ちょっと大きめなテーブルに3人が座れるソファが3脚。1人用が1脚置かれている。


「お好きなところにお座り下さい。」

 と言われみんな1人用の所にはミシェルさんが座ると思って2人ずつで3人用のソファに座る。案の定ミシェルさんは1人用のソファに座る。


「では、」とミシェルさんが話を進めようとした途端、扉が開きエリオットさんが「クッキーを焼いていたのよみんなもどお?」とクッキーを盛った皿を持って入ってくる。ミシェルさんがため息をついて、観念したように「ありがとうございます。エリオット様」と言ってクッキーを受け取り、エリオットさんはニコリと笑って「ゆっくりしていってね」と言って部屋を出ていった。


「もぅ、私が執事をやっている事をわかって欲しいです。」とミシェルさんがため息をつく。


「それでは今回の事について話し合いを始めましょうか。」とミシェルさんが話を進めていく。

「今回の件についてですがこちらで色んな本や歴史、当時のネットの情報などを調べましたが分かったことは皆さんもご存知でしょうが、《鬼神寺》という寺と《世界樹》の中心が同じ場所にあるということです。そして、以前初めて皆様とお会いした時に起こったことを推測するに、世界樹にはあの映像を私たちに見せた《人》がいて、その映像を見たのはその《人》本人であることということが推測できるくらいです。」

 ミシェルさんがとても真剣な表情でまとめたことを言う。


 周りを見渡すとみんな同じように真剣な表情で聞いている。


 しかし世界樹に関する情報が少なすぎる。どうやって世界樹の謎を解けばいいのだ。


「それなら直接本人に聞けばいいのよ。その《人》に。」


 友海ちゃんが凄いことを言い出した……。

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