世界樹と零夜
「直接聞くのですか?」
ミシェルさんが不思議そうに聞く。
「そうよ!他に何があるっての?」
いや、他にも何かある気もしないでもないが。
「しかしどうやって聞くのです?その《人》はもはや世界樹そのもの、これまでにだってそういったことを試しても無駄だったという研究結果が出されている。」
哲也さんが眼鏡を抑えながら言う。
「うーん、まっ、《聞く》と言うより私たちが世界樹になって《見てくる》っていう説明の方が近いかしら?」
いまいち想像出来ない。僕らが世界樹本体になるというのか?
「これまでの研究では《植物会話》や《意識共有》なんていう能力でやっただけ。まだ世界樹の中に同居したやつなんてまだ居ないわよ。」
神崎さんが聞く。
「ちなみにどうやって世界樹の中に入り込むの?」
「そこの成功率は恐らく五分五分だけども、世界樹と私たちが結合の能力を使って一緒になればいいと思う。」
「ん?でもそれって《植物会話》とかみたいに無効になるんじゃね?」
夏海さんが疑問をぶつける。
「《植物会話》とかってのは、外部からの非物理的な能力なの。でも世界樹は物理的な能力なら傷をつけられるわ。実際に私のクラスメイトがこの前世界樹に剣術の能力で卑猥な言葉を書きまくってたわ。」
「ほんと男子ってなんであんななのかしら。」と友海ちゃんは小さい声で呟く。
「まっ!」と夏海さんが手を叩いく。
「実際に証言があるんだし、ここは信じて結合して中に入りましょうよ。」
「その事なんだけど」と友海ちゃんが次の瞬間、僕にとっては最悪な発言をする。
「この結合、零夜さんにやってほしいのよ。」
「?!」
なんで、なんで僕なの!?
「あなた、時間を戻すことは出来るのよね?」
「まぁ、戻せるけど。」
「この結合、普通の木でないことは確かなの。何が起こるかわからない。それに、結合したら肉体が木と一体化するのよ、もしそうなった時結合を戻すことは出来ないの。そういうのに対してあなたは時間を戻すことができる。それを使って木から戻って来ることが出来ると思うのよ。」
「いや、でもそれなら別の人がいってその間の時間を戻せば?」
当然の意見だ。
「そうしたら、記憶ごと戻っちゃうじゃないの。」
「…………」
たしかにそうだ。僕の能力は時間を巻き戻すことが出来るし限定した人すべてをそのままに周りだけを巻き戻すことも可能だ。だけど限定しにくいものがある場合、記憶を保ったままは無理だ。
「どうやら、その通りのようね。」
「あぁ、確かにそれは僕が適任かもしれない。ただ、こっちも考えたことを話していいか?」
「どうぞ?」
「僕が世界樹と一体化した時、記憶というものは脳にある。つまり僕はどうやって世界樹の記憶を保ったまま出てこればいいのだ?」
一同「あっ。」とそう言えばそうだという感じになってしまう。
「結局、誰が結合してもダメですね。」
哲也さんがはっきり言う。
「あっ、おもいついた!」
メアリーさんが言う。
「のうのなかで人はきおくするのでしょ?なら、きおくするぶぶんだげすこし木とがったいするってのはどうかしら?」
「おお!メアリー頭良い!」
と神崎さんが褒める。
「その手があったわね。」
友海ちゃんもあとに続く。
なんてことだ!せっかく勝ち取ったところだって言うのに!
「じゃ、零夜さん。お・ね・が・い・し・ま・す」
友海ちゃんが少し可愛らしく言う。
「可愛く言ってもな!」
こうして僕と世界樹との結合案が決定してしまった。
「それでは今の話をまとめましょうか。」
ミシェルさんが落ち着いてみんながわかりやすくまとめる。
「まず、世界樹の謎についてですが、友海様のご提案で零夜様が世界樹と結合するという形で決定でよろしいですね?」
と言うとみんなが頷くので、しぶしぶ僕も頷く。
「それでは、この結果が良い方向にいけば世界樹の謎の大部分は解決すると思います。私たちが選ばれた理由と世界を救うという意味についても。」
ミシェルさんが続ける
「それでは次の話し合いですが、この案に出てくる《結合》の能力を持った人についてです。どなたかお知り合いの中でそのような能力をお持ちの方はいませんか?」
すると部屋の扉が開いて……
「その件なのだけど、私の友人にその能力を持った人がいるわ。」
とエリオットさんが入ってきて早々そんな事を言い出す。
「ほんとなんですか?」
と神崎さんが確かめる。
「えぇ、本当よ。それに日本の方で優しい方だから、協力してくれるはずよ。」
エリオットさんは微笑みながら協力的な意識をみせる。
「エリオット様……」
とミシェルさんが何かを我慢するかのようにエリオットさんを呼ぶ。
「また、また盗み聞きをしていらっしゃたのですか?」
「oh……ミシェル怖い……」
とエリオットさんが可愛らしく言う。
「あなたという人は……」
「それじゃ、その方に連絡してくるからまた後でね」と手を振りながら部屋を出ていく。
「あの方はほんと……」
「なかいいんですね。」
とメアリーさんがミシェルさんに言う。
「あの方にはいつも困っていますよ。」
メアリーさんが小さく笑う。
「協力してくれるって言ってましたよ」
とエリオットさんが報告をしてきた。
「それでは、エリオット様のお知り合いの方が協力して下さるとの事なので、問題はないでしょう。」
ミシェルさんが腕につけた時計を見る。
「時間は3時か……」
「ただいま3時ですが、まだ時間がありますし世界樹からもそう遠くないので実際に試しに行ってみませんか?」
とミシェルさんが提案してくる。皆今日は暇なようだと、なぜか僕はホッとする。「それでは行きましょうか。」とミシェルさんが車へ皆を連れていく。豪邸の扉を出る時に夏海さんが「人生で何回こんな豪邸の中を見れるのかな」と真剣に考えていた。
みんながさっき乗ったリムジンに乗って各自座ったところで出発する。
20分が経過した頃に車が止まりミシェルさんが「着きました」と言うと、車の扉が開く。
「やっぱりいつ見てもでかいですね。」
「うん」
と神崎さんと夏海さんが関心している。普段はそこにあるだけの背景という存在で、あまり気にしないでいるけど、いざしっかり見ると物凄い迫力だ。
「たしかこの近くの工房に住んでいるんですよね?エリオットさんのお知り合いの方は?」
と夏海さんが周りを見渡しながらミシェルさんに聞く。「はい、そう聞いております。」とミシェルさんが答えると「あっ、あの方では?」と哲也さんがミシェルさんにこちらに歩いてくる男性を見て聞く。
「おそらくあの方です。確認してきます。」
ミシェルさんは走ってその男性に近寄って行き、男性と何かを話してこちらに合図をおくる。
「そうらしいわね。」
友海ちゃんが隣に来て「準備は出来たわ」と後ろを指さす。それに従って後ろを見るとおかしな形をしたものが世界樹の根元に付いている。
「あ、あれは?」
と聞くと友海ちゃんは自信満々に「あれは脳で必要なところと木を繋ぐために私が形を変えたものよ!」と言う。はっきり言ってやろう。
「怖いな……。」
ミシェルさんが男性を連れて来た。
男性はどう見ても日本人と分かるような顔つきで、白髪と黒髪が混じるヘアスタイルだ。
「この方が今回、私たちの手伝いをして下さる方です。」
ミシェルさんが男性の説明を簡単にして名前を聞く。
「笹原ささはら 健けんです。皆さんも初めまして。今日は協力させて頂きます。」
……?……
《笹原》って姓……どこかで聞いたことが……。
「事情はなんとなく分かっています。」
「それはありがたい。」
と哲也さんが言うと「それなら、さっさと始めさせてもらうわよ」と友海ちゃんがまたもや偉そうに言う。
しかしやはりご老人、子どもの扱いは慣れているようで「そうですね」と言ってのける。どこからも怒りなどは感じない。
目の前にだんだんといびつな形に変形した世界樹が近づく。
「さっ、ここに頭を付けてちょうだい。」
と指定された場所に頭を付ける。目や耳を含め五感をは操る脳がすっぽり入るような形が頭を覆う。
「じゃぁ、座らすからちょっと待っときなさいよ。」
と言うと足元の地面が変形し始める。しばらくして僕は、友海ちゃんが作ったであろう椅子に座る。
「じゃぁ、笹原さんここの頭についてる気の部分と頭を結合してちょうだい。だけどここの部分はやんないでね。記憶が持ってかれると困るから。」
友海ちゃんが何やら笹原さんに説明しする。
「じゃぁ、いくぞ。少年、最初は痛いけど我慢しておくれ。」
と笹原さんが一言断り、激痛が走る。思わず声にならない悲鳴が口から出てくる。
「ぁぁぁあ………。」
伝わってくる。結合している感じが。
木が目を食い、鼓膜を溶かし、世界樹と結合した頭蓋骨が脳を結合し始める。
「………………!?」
気づくとそこは暗闇の広がる世界だ。




