第七話 白兎弁護士、異議しかない
裁判回です。
ラビが少し格好いいです。
「異議あり!」
ラビが机を叩いた。
黒の法廷。
裁判長は黒の女王。
陪審員はトランプ兵。
被告人は俺。
そして弁護人は白兎。
不安しかない。
黒の女王が微笑む。
「被告、朝霧レイ。罪状は逃避。人間不信。停滞。そして、他者を信じる勇気の欠如」
言い返せなかった。
全部、本当だった。
ハート妃が扇を広げる。
「彼は恋人に裏切られ、世界を憎みました」
スペード卿が剣を鳴らす。
「彼は恐怖に負け、部屋に閉じこもりました」
ダイヤ侯が笑う。
「彼は楽な夢へ逃げようとしています」
クラブ将軍が怒鳴る。
「怒れ! 憎め! その方が楽だ!」
言葉が刺さる。
俺は何も言えなかった。
その時、ラビが俺の前に立った。
「異議あり」
今度の声は、静かだった。
「彼は逃げたんじゃない。生き延びたんだ」
法廷が静まる。
「傷ついた人間が、すぐに立ち上がれないことを罪と呼ぶなら、この世界はあまりに乱暴だ」
ラビは懐中時計を掲げる。
「でも彼は進んだ。求人に応募した。面談を受けた。過去の相手と向き合った。そして、誰かを好きだと言えるところまで来た」
ミオが涙を浮かべて俺を見る。
「レイは、ちゃんと歩いてる」
胸の奥が熱くなる。
黒の女王が俺を見下ろす。
「では聞こう。朝霧レイ。お前は過去を許すのか?」
俺は首を振った。
「まだ許せない」
女王が笑う。
「なら、何も変わっていない」
「違う」
俺は立ち上がった。
「許せないままでも、進める」
法廷が揺れる。
「傷が消えなくても、人を好きになっていい。怖くても、働いていい。過去を抱えたまま、生きていい」
床に光が走る。
黒トランプ兵たちが後ずさる。
黒の女王の仮面に、ひびが入った。
「黙れ」
女王が初めて怒りを見せた。
「進めば、その娘は消えるぞ」
俺はミオを見る。
ミオは震えながら、それでも笑った。
俺は拳を握った。
「だったら、消えない方法を探す」
ラビがにやりと笑う。
「それでこそ主人公だ」
この物語を楽曲にしてみました。よろしければご視聴頂きましたら嬉しいです。
https://music.youtube.com/watch?v=YT68z-vp55U&list=RDAMVMYT68z-vp55U
レイは“完璧に治る”のではなく、“抱えたまま進む”ことを選びました。
次回、ミオを救う方法が明かされます。
次話
第八話 感情鑑定の本当の力




