第四話 ミオと午後三時のカフェ
恋愛回です。
ただし、甘さのあとに敵が来ます。
ミオと現実のカフェに行くことになった。
なぜ不思議の国の少女が普通に現実のカフェにいるのか。
疑問はある。
だが、ミオは当然のようにメニューを見ていた。
「この、白うさぎパンケーキ」
「ラビっぽいな」
「食べたら怒るかな」
向かいの席で新聞を読んでいたラビが顔を上げる。
「印税が入るなら許すよ」
「どこから発生するんだよ」
ミオが笑った。
その笑顔を見るだけで、胸が苦しくなる。
人を好きになるのは怖い。
また裏切られるかもしれない。
また笑われるかもしれない。
でも、目の前の彼女から目をそらしたくなかった。
「レイ」
「ん?」
「私といるの、怖い?」
心臓が跳ねた。
感情鑑定を使うまでもない。
俺の答えは分かっていた。
「怖い」
ミオの表情が少し曇る。
「でも」
俺は続けた。
「会えなくなる方が、もっと怖い」
言ってから、自分で赤くなった。
ラビがコーヒーを噴く。
「早い! 恋の展開が早い!」
「お前が恋を急かしたんだろ!」
ミオは頬を赤くして、小さく笑った。
「嬉しい」
その一言だけで、世界が少し明るくなった。
だが、窓の外に黒い影が立っていた。
胸にハートの紋章。
黒い兵士。
そいつの顔は、俺の元恋人に似ていた。
「また、信じるの?」
カフェの音が消える。
俺の視界に文字が浮かぶ。
黒ハート兵が剣を抜く。
周囲の客は気づいていない。
でも、カフェの床には黒い薔薇が広がっていく。
ミオの体が少し透けた。
「ミオ!?」
ラビが叫ぶ。
「ハート兵は恋を壊す。君が過去に飲まれると、ミオが消える!」
俺は立ち上がった。
怖い。
怖いに決まっている。
でも、俺はミオの手を握った。
「お前は、あいつじゃない」
黒ハート兵の動きが止まる。
「ミオは、俺を裏切った人間じゃない」
剣が震える。
「過去の誰かを理由に、今目の前にいる人を疑いたくない」
ハート兵の鎧にひびが入った。
「俺は、怖いままでも信じたい」
黒ハート兵が砕けた。
その瞬間、ミオの体が元に戻る。
ラビがカードを拾い、俺に投げた。
「報酬だ」
スマホが鳴る。
採用先からのメールだった。
――研修評価により、正式採用前提で進めます。
――あなたの応答姿勢を高く評価しました。
俺は呆然と画面を見た。
ミオが嬉しそうに笑う。
「レイ、また進んだね」
俺は頷いた。
そして思った。
この子を守りたい。
たとえ、彼女にどんな秘密があっても。
レイは「過去」と「今」を分けることを覚えました。
次回、物語の外敵が本格的に動きます。
次話
第五話 黒の女王は現実にも手を伸ばす




