第三話 引きこもり、面談で本音を見る
今回は現実報酬回です。
主人公が能力で初めて社会的に評価されます。
オンライン面談は、午後三時からだった。
数年ぶりに履歴書を開いた俺は、早くも逃げたくなっていた。
職歴なし。
空白期間あり。
人間不信。
特技、なし。
いや、昨日変な能力は手に入れたが、履歴書に書けるわけがない。
画面の端にラビが映る。
「背筋」
「うるさい」
「髪」
「母親か」
「恋と就活は第一印象だよ」
何も言い返せなかった。
面談開始。
画面に映ったのは、三十代くらいの女性だった。
名前は白石さん。
「朝霧さんですね。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
声が裏返った。
終わった。
俺の社会復帰、開始五秒で終了。
だが、その瞬間。
白石さんの胸元に文字が浮かぶ。
俺は目を見開いた。
明るい職場です、が嘘?
いや、たぶん悪意のある嘘じゃない。
無理して明るく言っているだけだ。
白石さんが質問する。
「朝霧さんは、どうしてこの仕事に応募されたんですか?」
いつもの俺なら、用意した薄い志望動機を読むところだった。
でも、今は違った。
「……俺は、人と関わるのが怖いです」
画面の向こうで、白石さんが少し驚く。
「でも、怖い人の気持ちは少し分かります。誰かに大丈夫って言われても、大丈夫じゃない時があることも」
自分でも不思議なくらい、言葉が出てきた。
「だから、そういう人の話を、急かさずに聞く仕事なら……俺にも、できるかもしれないと思いました」
沈黙。
やらかしたかと思った。
だが、白石さんの表示が変わる。
「朝霧さん」
「はい」
「正直に言うと、この仕事は楽ではありません。明るい職場です、と求人には書いていますが、重い相談もあります」
知ってます。
表示で見ました。
「でも、あなたのように自分の弱さを言葉にできる人は、必要です」
胸が詰まった。
必要。
その言葉を聞いたのは、いつ以来だろう。
面談は三十分で終わった。
一時間後、採用通知が届いた。
研修期間あり。
在宅勤務可。
報酬は高くない。
それでも、俺にとっては奇跡だった。
「……受かった」
呟いた瞬間、部屋の隅から拍手が聞こえた。
ラビだった。
「おめでとう。人生一歩前進」
「勝手に部屋に出るな」
「白兎だからね」
「理由になってない」
その夜、ミオに会った。
不思議の国の小さな湖。
月が水面に浮いている。
「レイ、すごいね」
「すごくない。たまたまだ」
「たまたまでも、逃げなかった」
ミオはそう言って笑った。
胸が熱くなる。
でもその時、湖面が黒く濁った。
水の中から、赤い目がこちらを見ている。
ハートの紋章。
ラビの顔が険しくなる。
「次は裏切りの兵だ」
湖面に、かつての親友と元恋人の顔が映った。
俺の心臓が凍る。
黒い声が囁く。
「また信じるの?」
レイは初めて現実で評価されました。
次回、恋愛と過去の裏切りがぶつかります。
※この物語の関連動画です⇒ https://youtu.be/K9i22uT2MHo
次話
第四話 ミオと午後三時のカフェ




