あれから10年
馬車で泣き始めた俺は以前も話はしていたが改めてこれから一緒にやっていく四人にいままでの事を話した。
幸い時間はあった。目的の村へは馬車で2週間はかかる、だから色々と話した。
その中で前団長の話になり、譲り受けた槍の事で思い出す。俺はこの槍を公爵家に返還するつもりだった。
戦死者の遺物として報告を上げた数日後、公爵家に招かれた。どういう理由かは分からないが事実を話すだけだと思い、公爵家に向かった。
城かと思えるような巨大な屋敷の中に案内されるとすぐに公爵夫妻が現れ、息子の話を聞かせてほしいと言われ、ただただ淡々と話し始めるが感情を殺して話せるほど、彼の事を冷静には語れず、後半は興奮状態で最後には涙ぐんでしまった。
何とか話し終えると公爵夫妻も涙を流しており、感謝を述べられ、槍は形見分けとして貰って欲しいと言われた。それが息子の望みだと言われ、断る事は出来ず、持ち帰る事になった。
いつか墓参りにあのフログ高原には皆で行きたい。
それから村に着くとすぐに村長に王命を見せ以前より代官が使用していた館に入る事になった。
到着から翌日、村長が村の主だった者を連れ館を訪れた。
はじめに、この街に唯一の商会であるバーモン商会のユギール バーモンと村の自警団の団長であり村長の息子のガンガである。
この村は千人程の村でほとんどが15歳以下の子供が多く、先の魔王軍との戦争には直接巻き込まれてはいないがモンスターの活性化や物資の枯渇などで元々は三千人くらいいた村人はモンスターに殺されたり、この村の生活を諦めて他に移り住んだりもしたようだ。
さっそく、ドラドとフライとリンクに自警団との引き継ぎをすることとその引き継ぎにアドバイザーとしてネイビーを付け行かせた。
村長と商人とで俺の役割を確認する。十五歳を超えた村人から年間の収入の1割を徴収しその半分を領主に納めることと村の安全を確保することの大きく分けるとこんなところだ。
村での揉め事は村長が引き続きしてくれる。その為、報奨金として年間で金貨10枚分の税を免除される。
商会は追加で1割多く関税として納税する決まりとなっている、これらは王都で受けた教育で知っている。この世界の税金のシステムが簡素で助かる。
それから数日は主だった村人に挨拶するとともにドラドたちと一緒に村周辺のモンスター狩りをやった。
モンスター狩りは魔石という名の稼ぎにもなるし肉が手に入るメリットに加え、まだ魔王の影響は完全に無くなった訳では無いため、モンスターの数を減らし村人や行商人の被害を減らせるため一石三鳥になる。
それと食料は村に親無しの子供が多い為、炊き出しをするのにも役立った。
それから、老朽化して何度も問題を起こしていた水車を新設する為に皆で奔走したり、防壁を強化する為に素材集めに山を散策して石灰石を見つけたりと、あっという間に1年が過ぎそうなある日、ドラドが結婚する報告をしてきた。
相手は鍛冶屋の娘で、装備の為に何度も鍛冶屋に行く中で仲良くなったらしい、結婚式をする為に教会を整備したり新居を建てるのを手伝ったり、あっという間に結婚式が執り行われた。
いつも仏頂面のドラドが幸せそうに笑っている。嬉しい気持ちで一杯になる。
久しぶりにドラドと二人で酒を飲み、館の俺の執務室で、月明かりを眺めながらゆっくりとした時間を過ごしているとドラドが真剣な面持ちで俺にネイビーとはいつ結婚するのかと、まさかここまで連れてきて結婚しないってわけないだろと釘を刺された。
ネイビーは歳が一つしか変わらないが優秀な部下だった、特に事務的な能力や人を動かす能力が高かったから領地の運営にも有益だと思い誘ったが、この世界では当然、ゆくゆくは結婚するって意味で取られてもおかしくはない行動だったと思う。
しかも俺は王都にいるネイビーの両親には領地へ連れて行く前に挨拶もしているので、付き合う前の挨拶に近いものだったと思う。
しかし、まだ25の若造が領地運営も生き当たりばったりで幸せにできる自信どころか、ネイビーが俺を好いているのかも不安だと酒場でフライにダル絡みすると盛大に舌打ちされた。
何でも最近はどいつもこいつも浮かれやがってとフライは悪態をついた。なかでも自分の妹が村長の息子と仲がいいのが気に食わないらしい。
そこからフライの愚痴を聞くがこいつはかなり顔が良いやつだ、王都で仕立てのいい服を着れば逆ナンされるのは間違いないほどの中性的な美しさを持っている。
田舎ではやはりガタイの良い頼れる男が好まれるが、彼もそこそこの実力があるのに認められないとはもったいない限りである。
数日後、思い悩むなか、この村があるキリマンシェロ領の新領主で新しくキリマンシェロ候無き領地を納めることとなり領名も変更となりソウマ領に改め、領主であり勇者であるリュウ ソウマが視察に来るお達しが届いた。
勇者は勇者パーティのコアメンバーだった大賢者の子孫で公爵家のご令嬢と結婚し辺境伯領を拝命し軍事的な意味と、魔王を討伐した功績により大公の位を持つ四番でエース的な存在となっている。
もてなしの仕方なんて分からない俺に村長が手助けをしてくれ、ソウマ領を4分割し領都以外を統治する上位貴族で俺の上司にあたるダイスダーク伯爵が貴族的な振る舞いに拙い俺に官僚を派遣してくれて、何とか体裁を整えた。




