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王都

 翌日、王城前の群衆のなかに俺もいた。王様の話を聞くためだ。

 魔王が軍勢を率いて本格的に攻め込んできたこと、しかし勇者が現れ、必ずや魔王を打ち倒してくれることを宣言した。

 宣言と同時に勇者が剣を掲げ、民衆が歓喜と盛大な拍手を送る。

 そして魔王軍に対抗すべく義勇軍の発足も始めると宰相から話があった。

 俺は何とか勇者と話をしてみたかったが、どうすれば良いのか分からずに、同じ方角に進めるだろうと勘違いをして義勇軍に入った。

 義勇軍に入ったものの、すぐに前線に向かう。実戦訓練として魔物の軍勢を相手に立ち向かう日々、指揮が乱雑になり疲弊していく、戦死するものや重傷を負って戦線を離脱していくものも多くなった頃、勇者が畏敬訪問に合わせて義勇軍と共に戦うことになった。

 勇者パーティは皆、強者と噂通りの実力であっという間に魔王軍に併合しているガニデ族の軍隊を返り討ちにしたそうだ。

 そんな野営地で俺は勇者を探した。まだいるはず、一声さえかけられたらと気持ちが焦る。

 遠くからでも分かった。純白のマントを羽織っている黒髪の人間がいる、顔は見えないが間違いない。

 俺は一言「こんばんは」と声をかけた。その瞬間、勇者は恐ろしい速度でコチラに向き直った。こちらもびっくりしたが、事前にシュミレーションした通り大きな声で勇者様のファンだと、自分も勇者様に憧れて義勇軍に入ったこと、できれば英雄譚を聞きたいが今日は遠慮しておくと握手だけ求めて足早に去った。

 勇者がどういった状況かは分からないがこちらの意図は従者に気が付かれずに伝えられたと思う。

 今はそれで良い。いつか情報交換でもできればいいのだから。先ずは生きること、その為に戦うことにだ。

 それから1年後、俺は義勇軍の副団長になっていた。

 上が死ねば勝手に上がっていく仕組み、気に食わない奴が多かったがいまの団長は信頼できるし、俺が任されている部隊はいい奴が多い。

 普通はこの理不尽な世界でずる賢い奴や他人を蹴落としても生き残る奴が残って行くのだと思っていたが、どうも違うらしい、性格の悪い奴は誰からも助けられないし、ここは貴族が一人しかいないからなのか理不尽な階級社会でもない。

 仲間意識は芽生えたし、そうでなければ生き残れない場面が多くあった犠牲者も出たが団長や仲間たちと乗り越えられた。

 傲慢な貴族からの嫌がらせはあったが、公爵家三男の団長が何とかしてくれた。

 彼はなぜ正規軍では無くこちらにいて、我々の味方であり続けてくれたのかは最後まで分からなかった。

 この世界に来て、7年目、俺に軍隊でのノウハウを全部教えてくれた団長は死に、その死を受け入れる間もなく戦い続けた。

 団長は不思議な人だった。大貴族の生まれなのに山賊みたいな風貌で、誰よりも気さくで誰よりも気使いが上手かった。

 義勇軍の物資が不足すると国王や王太子、実家の公爵家に腹が減ったと手紙を書く、それでも足りない時には取りに戻ると手紙で脅す。

 そして届い物資は全員で分かち合い、自分だけで使うどころか出し惜しみすらしなかった。

 孤児上がりの団員はまだ若く、満足な食事にありつけていなかった為、彼らの成長のためにも食事はたらふく食わせてもらえてた。

 俺も下位の魔族を倒す機会があり、一時的な報奨金を貰えていたので金銭的にも余裕があったし、若者が食えないのは耐えられない偽善者だったから、空いた時間に食材を買い、足りなければ狩り、料理をして若い団員に食わせてやる事が多かった。それによく食いついたのがドラドとネイビーだった。

 彼らを含め、若い連中には懐かれたし、必死に生き残りたいから酒の差し入れと引き換えに先輩たちからは戦い生き残るための知識をねだった。

 そんな俺だったからなのか団長とは気が合ったし、無謀な作戦で義勇軍を捨て駒にしようとした貴族軍に公爵家としての権力を振りかざし、無謀で無いならお前がやれと二人で抗議もした。

 正規軍は変なプライドは無いが騎士としての誇りがあり、あくまで自分達が正規であり義勇軍は仮の存在として目立った活躍の場には立たされなかった。

 死地へ追いやられるより良かったが、問題は貴族軍で彼らはこちらを使い捨ての手駒にしか思っておらず、前線には出ないくせに手柄ばかり誇張する厄介者で常に偉そうな態度で義勇軍を顎で使おうとしたり、物資を独り占めしようとしていたり無能な味方は優秀な敵より厄介だと実感した。

 ただ辛い戦争のなかであの人といると楽しかった。安心できた。寂しくなかった。

 だから、だから、いまは寂しいよ

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