あれから0年
皇暦260年土の月
気が付けば森にいた。
酷く混乱したが、落ち着かなかったのでただ歩き続け森を彷徨う中で、混乱は収まるが新たな混乱が生まれた。
それは見たことのない植物や小動物たちがいたからだ。別に動植物の専門知識がなくても分かるほど元いた世界では考えられないもので溢れた世界だと認識した瞬間に自分が異世界にいるのだと認識するしか選択肢が無かった。
当時、15歳の子供だった私は自分の無力さを実感する毎日だった。運よく森を抜け村を発見したが、見知らぬ人へ話しかける恐怖、外国人への言語の壁に立ち止まった。
何処から来たのか、誰なのかを尋ねられ、困惑して黙り込む私を家に招き入れ、暖かいお茶を出してくれた優しさに涙が溢れた。
何とか言葉は通じるため、村長宅に居候させてもらうことになった。
翌日、ただ飯食いはいけないと思い立ち、やったことの無い農作業の手伝いを申し出たは言いが半日も持たずに地面に倒れ込んだ。
それからは家の手伝いとして水汲みなどの単純作業や村の子供たちと一緒に軽作業をして過ごしていった。
何とか作業や優しい村人と仲良くなれた頃、もっと役に立ちたくて、井戸に木製の滑車を付けるため、夜に木材の加工を見様見真似で行なった。
なれない作業や失敗と調整を繰り返して、二カ月かかって井戸に滑車を取り付けた。
村人に感謝もされたこと、子供たちにダメな兄ちゃんと舐められなくなっていった。
村に来て半年が過ぎたある日、森での採取活動を終え、村に帰ると衝撃を受けた。
村が襲われている。ワイルドウルフだ、村人や子供たちから聞いていたモンスター、それが集団で村を襲っている。
恐怖で膝が震え、何とか家の壁に寄りかかりながら村長宅を目指す。途中、ワイルドウルフに農機具や木の棒で応戦する村人がいたが恐怖で隠れ怯えることしかできなかった。
何とか村長宅にたどり着いた時にはワイルドウルフの集団は撤退してくれた様で、村長に無事を心配されたがただ隠れることしかできない自分の無力さに涙しか出なかった。
何人か傷ついたが、重傷者はいなかったため隣町に避難することになった。
何でもワイルドウルフは諦めたわけじゃないらしい。
丘の上に本隊とおぼしきボスを擁する一団がいたのを村人が見ていたらしい。またいつ襲われるか分からないため、隣町に避難して、領主様に助けを求めるらしい。
それから2日ほど歩いて隣町に着いた。野宿の際に暗闇からモンスターが襲ってくるのではないかと恐怖したが、自分より小さい子が我慢している姿を見て、うろたえるのだけは止めようと誓う。
隣町は村より大きく、低いが木製の壁もあり元いた村とは大きく違っていた。
外縁には畑があり、最低限の柵もある為、村に入った時には安心した。安心しきってへたり込んでしまった。
そこから街の町長が村人の為に空き家を開放してくれて、休んでいると村長がやってきたので皆で集まった。
沈黙の後、村長は首を振りながら騎士団の派遣は無理だと話し始めた。
この街より馬車で3日ほど離れた先の領都で魔物を率いた魔族の襲撃があったらしい、襲撃は今も不定期で起こっており、主要都市の防衛用の衛兵以外は全て領都の防衛に充てられているらしい。
諦めるしかないと村長はうなだれた。しかしそんな事を簡単に受け入れられない村人が色々反論するが、誰も何も出来なかった現実を忘れられるほどではなかった。
ワイルドウルフが数匹出ただけでも騒ぎになる様な小さな村にあんな大群が来て、死者がいなかった事が奇跡だった。
後ろに控えていた本隊ではなく拙攻程度の規模に反撃出来ただけでもただの村人なら凄いことだった。自分は怯えて隠れるしか無かったのだから。
それから数日、この街や近隣に頼れる親類縁者がいないものだけが残り、協力的な町長が仕事などを斡旋してくれた。
ただこの世界の言葉で迷い人と呼ばれる自分は先ずは自分の素質を測るために教会に行くことを勧められ、そこから素質に合った道を進む事を言われ、教会に向かうことにした。
村にあった小さい木造の教会では無く、そこそこ大きな石造りの教会を眺めているとシスターらしき人に案内され教会内へと入る。
素質を測るには鑑定の儀を行う必要があり、鑑定の儀をお願いしたところ、少し驚かれたがすんなり鑑定の儀をしてくれるらしい。
ちなみに料金やお布施は必要無いみたいだ。おそらくこの世界には実際に神と呼ばれる超常の存在が確定的であり、基本的には信心深い人が多く、その最初に超常の存在を感じるのが鑑定の儀らしい、実際に神がいる世界なら自然と寄付は元の世界より集まりやすく、この鑑定の儀が実質的に勧誘行為なんだろう。大抵は遅くても7歳までには行うのが一般的で10歳を超えて受ける人は少ないから先ほどの驚きなんだと思う。
神官の前に誘われ、神官が自分の方へ手をかざすと光り始めた。
突然の事でビビって硬直していたが、よくよく見ると光っているのは自分らしい。
そして、神官が告げる。戦士と、戦士?一瞬戦で死ぬ事を想像したが適切なジョブを教えてくれるようだ。
何となく儀式が終わったと思ったので頭を下げるとステータスウインドウが目の前に広がる。
びっくりして後ろにのけぞり、尻もちをついてしまった。
神官は何だこいつって感じで一瞥して退場していく、シスターは心配そうに声をかけてくれるが恥ずかしくて逃げるように教会を後にした。
教会からの帰り道、ステータスウインドウを眺める。他の人には見えていない様で、イタズラの様に人の前に置いてみたりもした。
ただ、自分が知らないだけで、個人にだけ見えるのが当たり前の世界かもしれない。
確認するため、村で仲良くなった子供に聞いてみたが、頭のおかしい人をみる目で見られた。
一番世話になった村長にこれ以上、世話になるわけには行かないので別れを告げ、冒険者ギルドに向かう。
冒険者はセーフティネットの役割もあるらしく、登録だけなら無料らしい。
別れ際に村長から押し付けられた小銭しかないため、早急に稼がなければならない。
ステータスの確認もじっくりやりたいが、できれば食事付宿代を稼ぎたい。
街の外に出るのは怖かったから街のなかで出来る配達などの荷物運びをやって、何とか冒険者ギルドが運営してる駆け出し冒険者用の宿代が稼げた。
街からも援助がある為、銅貨10枚で1食付きで泊まれる。
ただ、ここは大部屋でマットや毛布も無い宿と呼べないレベルだった。野宿よりかは良いが気になることがある為、早めに1人になれる空間に行きたい。
早速依頼を受けたいが、外に出てモンスターを狩るには武器も何もないし、薬草がどれなのかもわからないため郵便や荷物運び、外壁補修の見習いなどを必死にこなした。
一月ほどで何とかお金が貯まったので武具を買うことにする。
ギルドの職員に初心者向けの武具屋を教えてもらい、向かったバロック武具屋は弟子が練習で作った武具も販売する初心者にはありがたいお店だった。
安物のショートソードとナイフ、革の胸鎧を購入し貯金を使い切った。
これで何とか外に出て稼げるようになる。
翌日、朝から街を出て、近場の小さな森に向かう。ここは冒険者仲間のクロックが教えてくれた場所だが、街のものなら大概知っている場所だ。
クロックは少人数のパーティリーダーでアイアンの冒険者だ。細身だがしっかりとした体つきに細身でそこそこイケメンだが髪形がモヒカンの為、最初はかなり警戒したが、お調子者で面倒見が良い若手からはアニキ的なポジションで上からは可愛がられている。
こんなソロの根暗にも話しかけて色々と教えてくれるが若干、ウザいが彼の言うことは最もで堅実的、俺のやり方に合っていたと思う。
人となりを見極めてアドバイスしているとなると、かなり頭がキレるのかもしれないがよく分からない。
スライム狩りには絶好の狩場で初心者はほぼ必ず寄る場所で、到着するとやはり狩りをしている人がいるので、邪魔にならないようにゆっくりと別な場所を探す。
適当な場所を見つけたので、ゆっくりと散策しながら森を進むと少し離れたところにスライムを発見、周りを警戒し射程に入る。
クロックに教えてもらった通り、石を投げる。スライムに当たるとスライムは硬直するのですぐさまショートソードで切り裂くと水が弾け魔石(極小)がその場に落ちた。
初めてのモンスター討伐、興奮したがすぐに気持ちを切り替える。
それから数匹のスライムを狩っているとホーンラビットに遭遇、クロックの言葉を反芻する様に余裕をもって横に避ける。曲がる事が出来ないらしくそのまま通過するホーンラビット、離れたところで止まり向きを変えて再び突進、余裕をもって横に避け、ショートソードを振り下ろす。
ホーンラビットを仕留めたが、解体する技術もその度胸も無いため、街に持ち帰る事にした。
ホーンラビットをギルドに卸し、その日の宿代くらいは軽く稼げたのでギルド運営の安宿で早めに就寝、次の日は朝早くから活動し、スライム狩りとたまにホーンラビットを狩ること数日後、レベルが上がった。




