決戦
聖王国に入るとすぐにモンスターの群れと交戦になる。どうやってかは分からないが魔女はモンスターを使役している。
こんな事が出来るのは魔族でも上位の存在だけだ、前回の戦いの後、魔界の門を調査したが開いた形跡も封印が破られた形跡も無かったらしい。
しかも魔女の使う魔法は不明な事が多く、この世界の常識では魔法は精霊の力を借りるものである為、ドワーフに土魔法は効かないと言うよりドワーフに土魔法だけだが魔法的な影響が及ぶ前に土魔法が消滅する。
これは精霊の子供であるドワーフに土の精霊が危害を加えるはずが無いのと、ドワーフ自身の身に宿る精霊力が相殺されるからだとされる、これは他の種族も同様であり、例えばドワーフ族とエルフ族が争った場合、ドワーフ族に協力するエルフ族がいればエルフが使う木の精霊魔法が相殺される箇所が生まれる為、現代の戦争の場合、混成部隊が基本となるが六大国家は基本的に六種族が統治し人口割合も多い為、偏りが生まれる。
ちなみに人間族はあまり魔法が得意では無いが中には精霊と契約し魔法が使えるものもいる。どの精霊とも契約できるが、契約できる精霊は基本的に一回だけで何種類もの精霊と契約はできないが勇者や賢者は例外だ。
ドワーフ程では無いが土精霊と契約している人間族の魔法使いは土魔法が効きにくい。
だが魔女が使う土魔法のようなものがドワーフに被害を出し、魔女が使う火魔法が鬼人族を焼いた。
原因は不明だが魔女の使う魔法は人類と異なる事が判明している。王都の魔術研究所では魔女が魔法を使用する時に精霊活性化も低い為、こちらが使用する魔法を精霊魔法とし、魔女の魔法を別な魔法として研究が開始されている。
王都付近で輸送隊の中継地点とする為、かつてトルトロの街と呼ばれた場所を接収する。接収と言っても住人はいない。
すでに打ち合わせが済んでいる樫の国の部隊も到着し、数日以内には結界の解析が終わり最終決戦までカウントダウンが始まる。
俺は勇者ことソウマ大公が率いる第三正規軍の第16歩兵部隊として従軍している。今回の戦争に向けてガーデナント王国は聖剣を新造した。計120本が新しい聖剣として制定され勇者も含め各正規軍の上位陣に齎された。
今回の聖剣は前回の様な特殊仕様ではなく、基本的には身体能力向上系と光の精霊魔法が付与されアンデット特効となっていると勇者が教えてくれた。
そして決戦の刻、補給部隊とその防衛部隊を残した全軍で聖王国の王都に進軍する。道中、モンスターの襲撃を難なく対処して王都の前まで到着した。
到着後に数時間の待機があり、警戒態勢の指示が入ると数分後に結界が崩壊するのが分かった。それを合図に最大限の警戒をしつつ前進を開始、王都に入るとモンスターや屍兵が襲い掛ってきたが問題無く対処、しかし大型のモンスターや巨人族が現れ少なく無い被害が出るが各部隊の実力者がこれに対処、更に前進し王城まで到達する。
中から無数の蜘蛛型のモンスターが溢れ出し、前進が阻まれるが勇者を先頭に突き進む。城内に侵入する頃には多くの場所で戦闘が今だに続いている為、そして狭い建物内で戦うには少数精鋭部隊として勇者を中心に再編がされ、俺も勇者部隊に加わる事になった。
目指すは魔女がいるとされる玉座の間、空から鳥人種の獣人による観測で分かっている。無理の無い範囲で勇者部隊が前進し、後方部隊がその経路を維持する。部隊は順調に進み玉座の間まで到着する。
扉が開かれると王座には魔女とおぼしき女性、その傍らには2体の重戦士型のモンスターにラミアが待ち構えていた。
また左奥に大きめな鳥かごの様な檻に男女3名程が入れられていた。もしかしたら聖王国の法王と家族なのかもしれない。
開口一番、勇者が投降を促すが余裕の笑みを浮かべ配下に攻撃を指示する魔女、この世界で勇者相手に余裕があるって余程の馬鹿かそれほどの実力があるって事だ。
それ程までに勇者は強い、俺もあれから相当ステータスが向上し正規軍の実力者に劣らない、もしくは超えた強さを持っているがそれでも勇者の強さは別格だと思う。
ラミアの変則的な動きから放たれる攻撃や2体の重戦士型の重厚な物理攻撃、それの間を縫って様々な魔女の魔法が放たれる。
確実にこちらが追い詰めていると思っているが魔女は余裕の表情を絶やさない。黒鐡のガーランド侯爵の長女であるミットラン・ガーランドがラミアの頭部を戦鎚で粉砕し、閃光のリュース伯爵が華麗な剣技で重戦士型1体を細切れにした。
勇者が放つ剣撃が重戦士1体を真っ二つにして残るは魔女のみとなった。相手は魔法使い、接近戦に持ち込むべく俺たちは盾役となり魔女の魔法を防いだり、いなしたりしながらゆっくりとだが確実に魔女との距離を詰める。
何人もの犠牲を出しながら勇者の射程範囲まで到達する。魔女の攻撃が苛烈さを増す中、勇者が隙を突き突撃する。
その剣は魔女の首を落とし、俺たちは戦いは終わったと一息つくが勇者は直ぐに捕らえられていた者たちを解放に向かった。
俺も何となく勇者と勝利を分かち合いたくて追従した。その時、リュース伯爵が大声で勇者を止めるが放たれた檻から女が勇者の傍らまで迫っていた。
確実に良くないことが起きている。勇者の胸には異様な装飾が施されたナイフが突き刺さり、俺は勇者の肩を持って渾身の力で引き剥がす。俺に投げ飛ばされる勇者をバーミル伯爵達数人で受け止めてくれたのを目の端で捉えつつ、目の前の怪物に盾を構えるや否や俺は後方にふっ飛ばされた。
左腕の感覚が無い。動かせないのかそもそも左腕が無いのか分からないが気力だけで立ち上がり、腰に剣を差してそこら辺に落ちてる盾を右腕で持ち上げる。
再び2体の従者を引き連れ魔女が顕現する。首と胴体が離れた魔女の死体は顔が別人に変わっていた。
敵の猛攻を防ぎながら勇者を後方に避難させるべく、俺たちは決死の覚悟で盾になる。左手は使えないので右手だけで盾を構え俺も勇者を下がらせるためだけに肉壁となる。
しかし勇者は立ち上がった。魔術研究所から来ている者が早く治療を受けなければ命の危険があると止めに入るが、勇者はここで仕留めると本気の目をして魔女を睨む。
勇者の気概を感じた部隊全員が再び戦闘態勢を防御から攻撃に切り替える。勇者が命を賭してまでここで魔女を倒さなければならないと感じた直感を疑う者はいない。




