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手紙と魔女と御茶会と  作者: 野花 智
第三幕 貴方を救うために。
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三十七封 愛に輝く花は。

「まず、わたくしが、何百年もこの部屋に囚われている理由。それは、私が『呪い』にかけられているから」


「だけだと話は早かったのですが……。もう一つ、私はとある人と『契約』しているから」




 ――事の始まりは……何年前かしらね。


 わたくしは、とある大きな家の中に生まれました。三人の()()()をもち、何人もの魔女の姉妹の一人として、一つ屋根の下で暮らしていた。

 ですが、そこには一つの決まりがありました。



 

 「人間には近づくな」



 

 これを大々的に掲げ、少しでも人間に近付こうものなら、お母様達からとても怒られてしまうのです。お母様達がこうも叱責するのにはちゃんと理由があって、これは聞いた話でしかないのですが……。

 

 昔、それもわたくしが生まれる前、人間と魔女は大層仲が悪かったらしく、何度も戦争を起こしてきたみたいなんです。

 

 とある時代の戦争で、お互い引けを取らず、長期戦が予想されていた時、人間側が「これから先はお互い干渉しない」という契約で、戦争の終結を持ち掛けたそうで。

 

 お母様達はその契約を飲み、それから先、魔女と人間が戦争をすることはなくなった。

 

 だが本来魔女は長寿。戦争に参戦したお母様達は人間を極度に嫌っていました。そのせいもあって、人間に近付くのを断固として禁止していました。

 

 そしていつかの日にわたくしが生まれ、二十年程度お家で過ごしました。ところがある日、当時とても仲の良かった友人に「人間の町に近付かないか」と誘われたんです。

 正直わたくしも気になっていたこともあって、二言返事で承諾したんです。まぁ、問題はここからで……。



 

 それから何回か、お母様達には内緒で人間の町に忍び寄りました。お母様達の偏った教育のせいで、当時のわたくしも人間嫌いでして……。

 そしてその何回目か、帰ろうと諭す友達とは相反して、わたくしはまだ人間の村の見える森に残ったんです。

 

 その時、後ろから名前を呼ばれたのです。木の枝の上、足を揺らしながらこちらを見下ろしていたのは、人間。

 何故わたくしの名前を知っているのか、その謎はすぐに分かりました。先に帰った友達と去り際にした会話、その時に、名前を呼ばれていたんです。

 

 そして身構えるんですけれど、魔女が魔法の使えない人間に負けるわけがないと、高をくくっていました。

 魔力というのは、基本いつも目に見えるものなんです、隠されなければ。その魔力で相手に勝てるかどうか見定めるのですが、隠していた魔力が放たれた時、瞬時に悟りました。



 

「こいつに、あたしは勝てない」



 

 その瞬間、人間に主従関係の契約をされて、晴れてあいつは主になったと……。本当、いつ思い出しても気分が悪いったらありゃしない。


 そこからあいつの身の回りの家事やら、お館の掃除やらをさせられて。最初の方こそ険悪でしたけど、時間が経つにつれて、わたくしもあいつも、気を許していきました。

 それも最初なんて、わたくしは人間嫌いですし、あいつも殺気駄々洩れでしたもの。

 

 あいつを好きになって、村の人達も好きになって、お家にいた時より、順風満帆な日々でした。

 


 

 その均衡が壊れたのは、お館に入り浸っているのが友達にバレて、お母様に言いつけられた日。

 

 朝起きて、最初に見たのは、友達の青ざめた顔でした。「お母様達が、人間を殺しにいった」と。

 

 あいつは、かの戦争で前線に立っていた。唯一、人間の魔法使いの血を引いていました。もう既に息絶えているはずの、因縁の人物の血を引くもの。お母様達にとってあいつは、殺さなくてはならない人、だったのです。

 

 それを聞いたわたくしは、身なりを整える前に、お館に向かいました。森を走り抜ける中、お母様達の疲れ切った姿と、血だらけなあいつの姿を見ました。すぐさま応戦しましたが、時は既に遅かった。お母様達が亡くなられたあと、あいつの命も長くなかった。

 最期にあいつは一言、こう言ったんです。



 

「お前を救ってやれない、そんな私を、どうか、どうか。――許しておくれ」



 

 その言葉を聞き届けた後、あいつの亡骸を抱え、お館の庭に墓を作り、植えました。

 

 このお館は、本来あいつのお館ですわね。

 

 呪いの正体は、わたくし達の姿をみたお母様が、最後の力を振り絞って行った、わたくしへの「罰」。そして、主へのせめてものやり返し。

 


 

 呪いの内容は全部で四つ。

 

 一つ。(魔女)の不老不死。

 二つ。未来永劫、この部屋から出られないこと。

 三つ。主との、絶対的な出会い。

 四つ。主への、殺人欲求。

 


 

 この呪いを上回るのが「主の命令」。主が自害の許可さえくえれば、わたくしは呪いを無視して死に至れる。

 のが、一向に許可をくれないせいで、わたくしは永遠に死ねない。

 

 今までの子達が死に至ったのは、魂の憑依という精神的死と、わたくしが主を殺害したことによる肉体的死、この二つの意味ですわね。

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