第十一話 スラムへ身をひそめる
「……ん? ケイン。どうかしたのか?」
ノアとのんびり歩いていると、前方からケインが全速力で走ってきた。
「話はあと! 路地裏に行って、ローブを着ろ」
「あ、ああ」
ただ事ではないと感じた俺は、ノアの手を引いて、ケインと共に路地裏に入った。
そして、マジックバッグから黒いローブを二つ取り出すと、一つをノアに渡した。
「それで、一体何があったんだ?」
俺はローブを羽織り、フードで顔を隠すと、若干の不安を感じながらそう問いかけた。
「お前たちのことを尾行していた奴を見つけたんだけどな。そいつ、俺の元同僚だったんだ」
ケインは真面目な顔でそう言った。
「それってつまり……」
「ああ。ガルド公爵の諜報部員だ。つまり、ゲルディンの領主館を襲撃した犯人がお前らだってことがバレたんだ」
「まじかよ。俺としたことが……」
ガルゼンたちに気づかれないように衛兵や屋敷の人に意識を向けすぎていたせいで、他の貴族の目のことを全く考えていなかった。
「くっそ……取りあえず、スラムに潜伏するか。ケイン、いい場所知らないか?」
スラムは犯罪者が多く住む危険な場所だが、潜伏するにはもってこいの場所だ。
「ああ。使えそうな場所なら知ってるぞ。それじゃ、ついて来てくれ」
「分かった」
俺とノアは、ケインの後ろを走り、スラムへ向かった。スラムまでは入り組んだ路地裏の角を何度も曲がる必要がある為、この街の構造を理解していなければ絶対に道に迷ってしまうだろう。
「……ここだ」
ケインはスラムにある一軒のボロ屋の前で立ち止まった。この家には窓はなく、屋根には所々に穴が開き、部屋のあちこちにカビが生えていた。
「このボロ屋の地下にそれなりに使えるスペースがあるんだ。昔凶悪な犯罪組織のアジトがあった場所だから、記憶に残ってるんだ。で、地下への入り口は……あ、あった」
ケインはボロ屋の中を歩き回ると、落ちていた木の板をどかした。すると、そこには地下へと続く階段があった。
「よし。入るか。〈創造〉緑光石」
俺は緑光石で先を照らしながら、下へ降りた。そして、俺の後ろをノアとケインが歩く。
最後に下りたケインは、木の板で入り口をふさいだ。
コツコツコツコツ
俺達は緊張感に包まれながらも、階段を下りた。そして、二階分の高さを下りたところで、地下室についた。
「〈創造〉〈操作〉緑光石」
俺は緑光席を追加でたくさん作ると、それを部屋全体に〈操作〉で動かしておくことで、部屋の明るさを確保した。
「〈創造〉机、椅子」
俺は〈創造〉で木製の机を一つ、椅子を三つ作った。
「それで、これからどうするか……」
俺は椅子に座ると、腕を組みながらそう呟いた。
「街の外に出たいのなら、スラムに接した城壁にある隠し通路を使うといい。ただ、出る専用の通路だから、注意が必要だな」
ケインは椅子に座ると、真面目な口調でそう言った。
「私はカインがしたいことをすればいいと思うよ」
ノアは無邪気に笑うと、椅子に座った。
「俺はあいつらに復讐するまで出るつもりはない。髪色を変え、眼鏡をかけ、ローブを羽織ればなんとかなるだろう」
「そうか。それで、俺は変装セットを用意しろってことだろ? はぁ……人使いの荒い主だなぁ」
ケインはため息をつくと、そう言った。
「まま。宿代と食費はちゃんと俺が払っているだろ? それに追加で月三万セルを渡しているんだしさ。それに、これが終われば暫くはのんびりできるぞ」
俺はそう言うと、変装の道具を買うお金として、取りあえず小銀貨二枚を渡した。
ま、いい職場っていうのは身に染みて分かっているよ」
ケインは立ち上がると、変装用の道具を買いに行った。
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