アリアステル、お主は本当に筋がよい。魔法の才能があるぞ
───王城で行われたパジャマパーティーでディザベルとアリアステル王女が友達同士と言える関係になってから数日が経過していた。
「……まさか、自分がここまで魔法を使えるようになるとは思わなかったな……」
ゼクシレンが自分でも信じられないといった顔をしながら言っている。
「ワシの教え方が良いからな」
アリアステル王女の願いでディザベルは王女達に魔法を教える事になり、この数日、アリアステル王女の護衛もしながら魔法を教えていたのだが、その結果は上々と言えるものだった。
「ああ、それは本当にそうだな。実際、相手の魔力の流れを見ながら教えられるような魔法使いなんて、クシジアスには居ない。本当に優れた魔法使いだな、ルルは」
「……まあな」
ゼクシレンが気持ち良く褒めてくれるが、そんな事を喜んでいられる余裕は、今のワシには無かった。
「……ルル?どうかしましたか?」
アリアステル王女が普段とは違うルルの様子を見て心配そうに尋ねる。
「……いや……もうじき、あやつが帰って来るんじゃ……」
「あやつ?……ああ、もしかしてサトウ・タロウさんの事ですか?」
「うむ……あやつが、後3日ほどで帰って来る……そうしたら……」
そうしたらキョウに召喚の事、リュララ王女達の事を話さなければならない。
それを知った時、もしかしたらキョウはリュララ王女達の元へ行くかもしれない。
そんな事は無いとアリアステルは言うが……もし……もしそうなったらワシは…………。
「大丈夫です、もっと自分に自信を持ってください」
アリアステルがワシの手を両手で握る。
「自分に自信……?」
「そうです。好きな人よりも優先する事なんて無いはずです。愛よりも優先される事なんて無いはずです」
「そう、か?」
「そうです!だから今は自分を置いてけぼりにした事の埋め合わせを、どんな我が儘をサトウ・タロウさんに聞いてもらおうか考えましょう。何ならいっその事、行かないでってお願いするのもいいかもしれませんよ?」
「そう……じゃな。それがよいかもしれんな」
「それがよいと思います」
アリアステルはワシの顔を見ながら微笑んでくれる。
「ありがとう、アリアステル。またアリアステルの言葉に救われたよ」
「当然です。私達、友達なんですから」
「フフ……ああ、そうだったな。ワシ達は友達だったな」
「ええ、友達です」
「……ならば!ワシも友達として!魔法の先生として!アリアステルを一流の魔法使いにせねばな!」
「ふふふ、私は凄く頼りがいのある友達を持ってしまいましたね」
元気を取り戻したディザベルを見て、アリアステルは優しく微笑んだ。
「そうじゃ、アリアステルよ。これを渡そう」
突然、ルルから白金のブレスレットを手渡された。
「これは何ですか?」
「なに、ちょっとした防御を上げる魔道具じゃよ。これがあれば不意に襲われても身を守ってくれるぞ」
「頂いて良いんですか?」
「うむ」
「ではありがたく頂戴しますね」
アリアステルは、白金のブレスレットをルルの見ている前で腕に付けて、お礼を言った。
「お父様、本当に私の生誕祭をやるおつもりですか?」
ルルの恋人である冒険者サトウ・タロウが戻って来るという日の2日目の朝。
私は父、ユゥル国王と直談判に臨んでいた。
「当然だ」
「こんな時にですか?」
自分達が刺客から狙われ───
国の兵士達が人々を奴隷として捕らえ───
捕らえた彼らを使い麻薬製造に関わっていたと分かり───
ただでさえ、それらの対応に追われているのに、市民たちの不満や不安が爆発しそうなのに、国が傾きそうな、こんな時にやるのかと?私は聞いた。
「こんな時だからこそだ。アリアステルだけではない、ミースティアの命日でもある。これを利用しない訳にはいかない」
父は、傍らに置いていた黒紫色のキューブを手に持つと、まるで吸い込まれるように覗き込んでいる。
「…………あーあ、本当に───!」
私は『友達』から教えてもらった炎の魔法で剣を作り、その剣を握って父の腹を正面から刺した。
「───ゴフッ!?」
父は血反吐を吐き、私はその血反吐を頭から被る。
「あ、アリアステル?な、なに……を……?」
私は身体ごと剣を引き抜き、父から離れる。
私に腹を刺された父は、刺された場所を手で覆いながら、床に倒れた。
「これからは私が、マルテミの王です」
床に倒れた父は、蹲るだけで動かない。もう声も出せはしない。
ああ───私はなんて都合のいい、便利な『友達』を持つ事が出来たのだろう。
私は父の残した黒紫のキューブを持って部屋から出た。




