その時、友情が芽生える。
模擬戦を終えた俺とナリバスは、互いに健闘を称え合っていた。
「お前、最初の俺の剣どうやって受け止めたんだ?流石になんかあんだろ?」
「いや見た通り、身体強化しか使ってない」
「マジで言ってんのか!?」
ナリバスは驚きの声を声を上げる。
この反応、ジカスの時もそうだったが皆、驚くんだよね。
まあ俺も、こんなビックリ人間が居たら驚くが。
「逆に言うと俺には身体強化しかないんだよね、他はからっきし」
俺は自虐的に笑って見せる。
「それでガーンデーンのダンジョンを踏破したのか……一点特化、そりゃあ強いワケだ」
「えっ、俺の事、知ってるのか?」
「流石に今、お前の事を知らない奴はいないだろ」
「あっ、そんなに有名!?……いや~、ちょっと困ったな~~~」
まさか、ここでも有名になってるとはな~、ちょっと変装とかしないとダメか~?
それよりそろそろ……サ・イ・ン、考えないとダメかもな~?どんな奴にしよっかな~~~?
「お前の相方も有名……いや有名過ぎるしな、今」
「……へ?今?」
「今日の朝刊に載ってただろ?」
「……朝刊!そういや買ってなかった……」
島から逃げてきたり、スライムが女になったり、スライム女の為に服を買ったりと忙しくて新聞を買うのをすっかり忘れていた。
「ほらよ」
ナリバスは自分が買っていた今朝の朝刊を俺に渡す。
「お、サンキュ。えーと……」
俺はナリバスから受け取った朝刊を見る。
朝刊には昨晩、王城で開催されたパーティーが闇ギルドに襲撃された事と、パーティーを襲撃した連中を倒し、更に主犯とみられる闇ギルドのリーダーとその仲間達を生け捕りにしたディザベルの不機嫌そうな顔写真が載っていた。
「な、何──────ッ!?」
俺が模擬戦で主人公っぽいイベントが来た!と喜んでたのに、そんなのが霞むくらいのビッグ主人公イベントが起きてんじゃねーかッ!?何で!?
「グギギギギ…………」
この前もそうだった。ゴブリンのスタンピードだっけ?それを阻止して街を救ったり……どうして主人公イベントを全部ディザベルに搔っ攫われるんだ!?
…………ま、まあいいさ……!好きな女の活躍、素直に喜び、祝福するべきだ。
俺は精神面だけでもディザベルに相応しい男でなくてはならないのだ!
……しかし精神だけでは意味が無い、力が無くては……!
「うおん!こうしちゃあ、いられない!早速修行だ!」
そもそもの話、好きな女を守る為に修行しようとしたんだ。こんな所で油を売っている場合じゃない!
「お前の修行に俺も付いて行っていいか?」
「え?」
「流石に手も足も出なかったしな、一から鍛え直そうと思ってな」
「おお~、全然大歓迎!一緒に修行する仲間が欲しかったんだ。こっちこそよろしく頼む」
ナリバスの急な相談だったが圧倒的に対人戦の経験値が足りない俺としては嬉しい話だ。
今まで有象無象のザコばっか相手にしてナリバスの攻撃に一切反応出来なかったし、一緒に修行しながら模擬戦もして対人戦の経験値を少しでも増やしたい!
「ああ、よろしくな!」
「よーし!そうと決まれば早速修行だ!今度は山籠もりだ!!」
海の次は山と相場が決まっている。
「おい、ふざけるな、メシが先だ」
金貨の山を持って戻って来たクリスタル・ボゥルが抗議する。
「そういや、もう昼か……」
コイツには逐一、何か食わせてたが俺は朝から何も食べてなかったから流石に腹が減った。
「それなら美味いメシ屋があるぜ」
ナリバスがやたら自信満々に言ってくる。
「マジ!?」
「ああ、マジで美味いオススメの店だ」
「ちょっと~、Sランク冒険者のオススメってだけで期待しちゃうけど?」
「俺は料理には五月蠅いぞ」
美味い店と聞いてクリスタル・ボゥルが会話に乱入して来る。
「ああ、期待してていいぜ。……で、そっちの女は?」
ナリバスがクリスタル・ボゥルを見ながら俺に聞いてくる。
「え、ああ……俺の仲間で…………クリアだ」
「…………」
元クリスタル・ボゥルくんが無表情ながら凄まじい圧で、こっちを睨んでくる。
最初に頭に浮かんだ『たま』って名前にしなかっただけ、ありがたく思って欲しい。ボゥルってだけに、玉ってなァ。
「……そう言う事だ、早く料理屋に案内しろ」
「お、おう……」
「よーし!まずは美味しいご飯を食べて英気を養って!修行して強くなるぞー!えいえい、おー!」
俺は掛け声と共に拳を天に突き上げる。
「おー」
元クリスタル・ボゥル、現クリアちゃんは俺と長年仲間なだけあって、俺に合わせて拳を上に突き上げてくれた。
「お、おう!」
ナリバスも合わせてくれた。なんか俺達、いいチームになりそうな予感!




