教えてルルちゃん先生リターンズ
───マルテミ城で突発的に開催されたパジャマパーティーの翌朝。
城内ではアリアステル王女様の母君であらせられる、ミースティア女王が崩御なされた時以来の騒ぎになっていた。
「何じゃ?朝から騒がしいのぅ」
起床して着替えを済ませたディザベルが部屋を出ると、何やら忙しそうにしているアリアステル王女と目が合った。
「す、すみません!ちょっと色々あって……!」
「色々?」
「その……国家転覆とか……」
「ああ、あやつらの事か」
ディザベルは、昨夜、生け捕りにした連中の事を思い浮かべた。
「ルルが生け捕りにした闇ギルドのメンバーもそうなんですが……実は今朝、我が軍の兵士達に奴隷として麻薬工場で働かされていたという方が大勢現れて……」
「なんと」
「その対応と首謀者を探すので朝から忙しくて……」
「何というか……ゴタついてるのぅ……」
「お恥ずかしい限りです……」
「……ふむ、じゃが安心せい!ワシがアリアステルの護衛をしておる限り、アリアステルには指一本触れさせん!」
ディザベルは自分の胸に手を当てて自信満々に言ってのける、
「ありがとうございます。それで……ルルに、お願いがあるんですが……」
「ん、何じゃ?」
「先日の襲撃といい、もしもの時に自衛も出来ないようでは話にならないと痛感しました」
「ふむ」
「今はルルが居ますが、この先、ルルが居ない時もあるでしょう」
「……そうじゃな」
アリアステルの言う通り、四六時中、ワシがアリアステルの近くに居るとは限らない。
そこを狙ってアリアステルを襲う姑息な奴もいるはずだ。
それは数日後かもしれぬし、5年後、10年後かもしれん。だから───
「ですから……ルル、私に魔法を教えて下さい」
「うむ、よいぞ!ワシにかかれば、1年もあれば優秀な魔法使いになれるぞ!」
ワシは自信満々に胸を張りながら優しく笑いかける。
「ありがとうございます!心強いです!」
「お主達も一緒にどうだ?」
ワシはタイミング良く部屋から出て来たリュララ王女達に聞く。
「いいんですか!?」
リュララ王女が信じられないといった顔をしながら驚いている。
「別にアリアステル1人に教えるのも、お主達3人をプラスして教えるのも大して手間は変わらぬからな、ついでじゃ」
「ついで、ですか……」
「うむ」
まさか白金の魔女直々に魔法を教えてもらえる機会が来ようとは……。
唐突ですが、この機会を逃す手はない。
もしかしたら彼女の力の、その一端でも知る事が出来るかもしれない。
「ではお言葉に甘えて、私達もよろしくお願いします」
「うむ!大船に乗ったつもりで任せるがよい!」
「くっそ~~~!泥船に乗った気分だ~~~!!」
───時刻は昼前。
島からの脱出用に作ったイカダが海上で沈没し、酷い目にあったキョウ達だったが、どうにか海上を走ってマルテミに戻って来る事が出来た。
「海の家でシャワーも浴びたし、コイツの服も買った」
「腹減った」
「後はメシを食って───って分かった、分かったから」
催促しながらスライムの時と同じ様に絡んで来るクリスタル・ボゥルを俺は無理矢理引き剝がす。
「早く」
「はいはい…………あっ」
クリスタル・ボゥルに構いながら歩いていたら誰かとぶつかってしまった。
「すみません」
俺は謝りながら、ぶつかってしまった人を見る。
俺がぶつかったのは、青髪の犬の耳が生えた獣人のマッチョマンだった。
「チッ!テメェ……!」
犬の獣人は誰が見ても分かるぐらい激昂している。そ、そんなに怒らなくても……。
「───ッ!?」
怒っていると思ったら、犬の獣人は、こっちを見るなり驚いている。
「おいテメェ、そのナリ、冒険者だろ?」
「そうですけど……」
「ちょっとツラ貸せ」
「え”!?」
「俺と戦えって言ってんだ」
俺と戦え~?俺と戦えですと~?
「テメェが、ぶつかって来たんだ、文句は言わせ───」
「いいだろう!!掛かって来い!!」
こういう荒くれ者の冒険者のやり取り……!実は憧れてたんだ!!
マジで急で、本当に何の脈絡も因縁もコイツには無いけど、こんな機会逃す手は無い!受けて立つぜ!!
「お、おう……じゃあギルドまで付いて来い。あそこの訓練場でやるぞ」
「おうッ!!」
俺は、この獣人と戦う為にギルドにあるという訓練場に向かって歩き出し───
「メシは?」
「これでも食ってろ」
俺は我慢の出来ないスライム女の為に、わざわざアイテムボックスから、おにぎりを幾つか取り出して投げ渡す。
「おお~」
おにぎりを受け取ったクリスタル・ボゥルは、もぐもぐ食べながら大人しく俺に付いて来る。
よーし、よしよしよし!これでコイツはOK。後は戦うだけだ!
フフ……!急に降って湧いた初の冒険者同士の戦いだが、腕が鳴るぜェ!!




