もっとこう……あるだろ!?
「いんや~、決まっちゃったね~、俺のスクリューパイルドライバー」
超巨大になったクリスタル・ボゥルとの激闘を必殺のスクリューパイルドライバーで制した俺は巨大化を解除して勝ち誇っていた。
「いや~、まっさっか、こんなとこで密かに温めていた巨大化を使う事になるなんてな~。ディザベルには内緒だぜ~?」
俺は勝ち誇った余裕の面で巨大化したままのクリスタル・ボゥルに話し掛ける。
だがクリスタル・ボゥルは、ぷるぷると小刻みに震えるだけで俺の声には応えない。
「おーい、大丈夫かー?」
心配して声を掛けても、ぷるぷる震えるだけで何も───
「うおっ!?汚ったね!!」
クリスタル・ボゥルは突然、口から……多分、口だよな?……うん、口だな。
クリスタル・ボゥルは、口から自分の身体と同じ水色の体液を滝の様に吐き出した。
「おいおいおい、大丈夫かよ!?」
しかしクリスタル・ボゥルの嘔吐?は止まらない。
いや止まらないどころか、吐きながらドンドンと身体が縮んでいってる。
「え、あ、そういう感じ!?そういう感じで戻んの!?」
そうして眺めること3分。
クリスタル・ボゥルのサイズは元の26mよりも20m、10mと小さくなっていき───
「あっ……たま痛てぇ……」
クリスタル・ボゥルは170cmの巨乳の美女になっていた。
「……………………なんで??なんでお前、女になってんの?」
「あ”ぁ”?」
元クリスタル・ボゥルの美女は俺に言われて自分の身体を見る。
元の透明な水色の身体じゃなく、色白の美女。
髪は短く水色で、胸はデカく、身長は高い。
「あぁ~?本当だ、何でだ?」
「何でだじゃねぇよ!お前、さては人間を食っただろ!?」
「食う訳無いだろ、俺はグルメだ。ゴブリンやオークみたいな下等生物と一緒にするな」
「じゃあ何だって、そんな事になってんだよ!?」
「俺が知るか。あったま痛てぇ……」
裸の美女と化したクリスタル・ボゥルは片手で頭を抱えながら、頭痛に耐えていた。
「……ってか、もっとこう……あるだろ!?スライムが美女になってんだぞ!?レベルが上がったり、突然変異やアイテムの力とかで人間になるとかなんだよ、普通は!?それが何で拾い食いして巨大化したスライムにスクリューパイルドライバーを決めた結果、大量のゲロを吐いて美女になるとか……もっとこう……あるだろ!?見ろよ!リヴァータなんてアホ面で驚いてんぞ!?」
「知るか」
「そもそも何で女なんだよ!?お前、カイザースライムだろ!?オスじゃねぇのかよ!?」
「それは人間どもが勝手につけた名前だ、そもそもスライムに性別があると思ってるのか?」
「た、確かに…………って、そうじゃなくて!なんなんだよ、お前は!その胸は!?」
俺はクリスタル・ボゥル(人間体)の巨乳を舐め回すように見つめる。
……見た所、ディザベルクラスの爆乳だ、すんごい。
「さあな?人間の女は最近だと、あの女しか見てなかったからな、それに似たんじゃないのか?」
「えぇ……」
「……ん?スライムとしては根本が変わっていないみたいだから、サイズも好きに変えられそうだな」
そう言って、クリスタル・ボゥルは腕や身長を伸ばしたり縮めたりして身体の機能を確認している。
「スライム人間……」
「胸の方も変えられそ───」
「そこはそのままでいい!!」
「んぁ?そうか?」
「ああ!」
「そうか」
「そうだ!」
あれを失うのは勿体ない。立派な損失だ。
「……そういえば、それ、元の身体に戻れるんだよな?」
「ん、ああ、元の身体か。元の…………あぁ?」
「あぁ?」
「元の身体ってどんなだったっけ?」
「いや!いやいやいや!!何も難しい事ない!ただの丸ッ!忘れる事なんて無いだろ!」
「あぁ?いや分かる、分かってるが分からない。元の身体に身体を戻せない……!?」
「いやいやいや!…………えぇ!?そんな事ある!?決まり過ぎたか?俺のスクリューパイルドライバー!?頭の打ち所が悪かったってやつ!?いや頭って、あれの何処が頭なんだよ!?」
キョウは動揺しすぎてパニックになっているが、言っている事は大体合っていた。
これはキョウ達が知る事は無いのだが、クリスタル・ボゥルの身体の変化は麻薬の原材料である植物を大量に食べてた事で脳にダメージを負った事と、キョウのスクリューパイルドライバーで脳に大きなショックを与えた事によるものだった。
この2つの大きな要因によってクリスタル・ボゥルの脳が新生され、人間の身体を得たのだった。
「まあ、いいや。じゃあ早速やろうぜ」
クリスタル・ボゥルはそう言って俺に近づいて来る。
「やるって何をだよ?」
「お前と、あの女がやってる人間の繁殖行為だ」
「え”!?」
「こうして人間の女になったんだ、興味がある」
そう言ってクリスタル・ボゥルは俺を押し倒して、俺の身体の上に馬乗りした。
「待て待て待て!今はそんな事をしてる場合じゃない!!逃げなきゃいけないんだよ!こっから!一刻も早く!」
「逃げる必要なんて無いだろ?ここには誰も居なくなったんだ、修行もここでやればいい」
「来るんだよ!ここに!人が!調査しにな!!」
「そうなのか?」
「そうなの!奴隷にされた人達がマルテミに着けば絶対騒ぎになって、ここを調査しに来る!そうなった時に俺達がこんな所で呑気にしてたら一発で刑務所行きだ!そうなったらディザベルがどうなるか……!?」
「……あの女の機嫌を損ねるのは避けた方が良いな」
納得したのか、クリスタル・ボゥルは俺から離れる。
「そう言う事!分かったら、これ着ろ」
俺はアイテムボックスから自分の予備の服を適当に取り出して全裸の女になったクリスタル・ボゥルに投げ渡す。
「着ろって言われても、俺が服の着方なんて知る訳ないだろ」
「こんなの適当に着りゃあいいんだよ!」
俺は親が子供に服を着せるみたいに手際よくクリスタル・ボゥルに服を着せる。
「おお、こういう風に服を着るのか」
クリスタル・ボゥルは男物の服を着ながら感心しているが、俺はそれよりもデッカい胸に、尻に、太ももを辛うじて抑えてミッチミチになっているクリスタル・ボゥルの方が気になっている。
性欲に負けないようにディザベルから離れたっていうのに、こんな凄まじい身体を持つ奴が近くにいて、これ俺、大丈夫なのか?耐えられるのか?襲って来るのに?行けるのか?
「……今はとにかく、船に乗って脱出だ!!」
俺はアイテムボックスから、お手製のイカダを取り出して乗り込む。
取りあえず今は考えない事にした。きっと未来の俺が何とかしてくれるはずだ。
「腹減った、喉が渇いた」
「……はいはい」
まるで子供の様に駄々をこねるクリスタル・ボゥルに、俺はアイテムボックスから適当に食べ物と飲み物
を取り出してクリスタル・ボゥルに渡す。
「……美味い!あんなのを食うなんてどうかしてたな!」
久々のまともな食べ物にクリスタル・ボゥルはご満悦だ。
「ってかクリスタル・ボゥルってのも変えないとな。もう全然クリスタルでも、ボールでもねぇし」
「別に俺は……ん……何でもいい、勝手に決めろ」
「口に物を入れながら話すな、行儀悪い」
「行儀?」
「そこからかぁ……」
名前を考え直さないといけない、ルールもマナーも教えなきゃいけない、ギチギチになってる服も合う奴を買わないといけない。
「マルテミに戻ったらやる事が目白押しだ……」
「なあ、ここで繫殖行為をすればいいんじゃないか?」
「それはまた今度!また今度な!?」
「わかった」
取りあえず今度、保健体育の教科書でもコイツに買っておくか。それで我慢してもらおう。
それにだ、コイツとセックスなんてしたのがディザベルにバレたら何をされるか……!
「なあ、元のスライムには戻れないの?マジに忘れちまったの?」
「美味い料理を食えば思い出すかもな」
「コイツ……!」
さっき、散々頭が痛いってコイツは言ってたが、今は俺の方が痛てぇよ……。
呑気にメシを食っている元スライム、コイツらといると飽きないなと呑気に思っている馬、そして馬鹿で呑気な高校生を乗せたイカダは、ゆっくりとマルテミに向かった。
「オアアアア!?ぶっ壊れたァァァ!!」
───素人の、夢見がちな馬鹿な高校生が作ったイカダが持つ訳がなかった。
「畜生───ッ!こんな事ならもっと勉強しておけばよかったァァァ!!」
いつ、異世界に召喚されてもいいように勉強だけはしておこう。それが今回の教訓だった。




