一方その頃
時刻は闇ギルドが社交パーティーを襲撃した少し後まで戻る───
「あれだけ御膳立てをしたというのに!一体どうするつもりだッ!?」
王城にある防衛大臣の執務室にて、マルテミ王国の防衛大臣である男、ダルスンは闇ギルドのボスであり協力者でもあるカルシュに対して怒りをぶちまけていた。
「たかが子供の新人冒険者2人の襲撃に失敗し続けて戦力を削られたばかりか、今回の襲撃も王と王女だけをやればいいというのに!!」
「……まあ見くびっていたのは確か、失敗したのも認める。───でもこれまでだ」
カルシュはヘラヘラと笑いながらダルスンの机に隠し持っていたナイフを勢い良く突き立てた。
「俺のプライドにかけて確実に殺してやる。だから安心して待ってろ」
机にはディザベルの顔写真があり、ナイフはディザベルの顔に突き立てられていた。
「いや可能なら殺すのは無しだ。この女はヤロソンが欲していたからな、高く売りつけられる」
「あのロリコンか?まあ出来たらな」
「そうだ、排除こそ優先しろ。アレが王女の周りに居たらこちらも動きづらい」
「はいはい。まっ、そこで吉報を待ってな」
「───ふん、これ以上『計画』に遅れが出るのは困る。分かっているな?」
「はいはい」
カルシュは手をひらひらと振りながら執務室から出て行った。
ダルスンがカルシュに言った計画とは王と王女を排除し、自分がこの国の王になるというシンプルなもの。
つまりコイツは悪い奴なのである。
───だが世に悪は蔓延らない。必ず滅びるのが世の常だ。
……というよりも、カルシュもダルスンも、とにかく手を出した相手が悪かった。
ダルスンが執務室でカルシュを見送ってから数時間後───
「島が何者かから襲撃を受けているだとォ!?」
ダルスンの声が執務室に響き渡る。
「は、はい!パーティー襲撃とほぼ同時刻に襲撃を受けていると報告が先程……」
ダルスンの部下の1人が不測の事態に焦りながら状況を説明する。
「クッ!!とにかく島に行く!!転移だ!!」
「は、はい!」
ダルスンは執務室に隠していた魔道具を起動し、執務室の床に転移の魔法陣を展開する。
この魔法陣は予め設置されている魔法陣にしか飛ぶ事が出来ず、距離の制限もあるが、それでも強力で便利なものだ。
ダルスンと数人の部下は展開された魔法陣の上に乗り、転移完了までの数十秒を焦りながら待つ。
不味い!不味いぞ!!島は不味い!!もし島の存在が公にでもなれば私は打ち首だ!!
───ダルスンが焦るのには理由があった。
ダルスンは防衛大臣という立場を利用して闇ギルドと手を組み数えきれないほどの不正や悪事を行っていた。
その悪事の中の1つに国家間で禁止されている麻薬の製造と売買があり、ダルスンは海から離れた位置にある小さな島を所持しており、そこで麻薬の製造を行っていた。
麻薬の製造に携わっている従業員は、これまた国で禁止されている奴隷達。
この奴隷達の出処は適当な場所から見境なく捕えて来た人間達だ。
こいつらに麻薬を作らせているのだが、もし誰かに見つかったり、奴隷達が脱走でもしたら、間違いなく
自分の首が飛ぶ。
だからそうならないように島の警備は万全にしており、奴隷達が暴れても問題無く鎮圧出来るようにしている。
例え自分の不正に感づいた人間や冒険者が100人程度襲って来たとしても返り討ちに出来る、出来るはずだ!
だというのに部下のこの慌てよう!もしや私の知らない所で軍が動いているのか!?
……不味い、不味いぞ!!あの島は犯罪の温床!!奴隷に麻薬の製造!やましい事しかない!
「カルシュは何処だ!?呼び戻せ!奴にも襲撃者を退治させろッ!!」
ダルスンは魔法陣に乗らず執務室で待機させる部下に指示を出す。
「……そ、それがダルスン様……」
「何だ!?」
「カルシュは任務に失敗したようで……つい先ほど生け捕りにされ収容されました……」
「───な、なにィィィィィィ!?」
直後、ダルスン達の島への転移が完了した。




