お泊り会をしませんか?
『リュララ・モア・クシジアス』
肩口の辺りまである長さの青緑色の髪に、きらきらと輝く黄金の瞳。
そして、まるで人形の様な白い肌を持つ彼女は、このマルテミから海を越えた先にある大国、帝都クシジアスの第一王女である。
「こうしてユゥル国王とアリアステル王女にお会いするのは、王女の5歳の誕生パーティー以来ですから、2年ぶりですね」
顔を隠していたフードを取り、その姿を衆目に晒したリュララ王女は、ユゥル国王、アリアステル王女に、にこやかに笑いかける。
「お見苦しい所をお見せしてしまいましたな、リュララ王女」
「いえ、ご無事で何よりです、ユゥル国王」
「……それでクシジアスの第一王女である貴女が、まさかサプライズで、このパーティーに来たという訳ではありませんな?」
「えぇ、今回は全くの別件でマルテミにお邪魔していたのですが……騒ぎを聞きつけ助力に参りました」
「成程。それで、こちらの冒険者は?」
ユゥル国王は、ヤマダ・ハナコをチラっと見ながらリュララ王女に質問する。
「この者は私の友人でありSランクの冒険者です。それ以上でもそれ以下でもありません」
「つまり正規の手段でここにいると?」
「ええ、そうです」
ユゥル国王はリュララ王女の腹を探り、リュララ王女は、それを飄々と笑顔を崩さずに、かわし続け───
「リュララ王女!今回の件が落ち着くまでの暫くの間、城にお泊りしませんか?」
アリアステル王女が張り詰めた空気など無視して提案して来た。
「アリアステル?」
「お父様!今回の黒幕がクシジアスの王女であるリュララ王女を襲って来るかもしれません。もしリュララ王女の身に何かあったら大変です!ですから……」
「ああ、アリアステルの望む様にするといい」
「ありがとうございます!」
「私も、泊めて頂けるのでしたら是非ともお願いしたいです」
「ありがとうございます……!ゼクシレン様も大丈夫ですか?」
「こちらとしては願ってもない事です。是非ともよろしくお願い致します、ユゥル国王陛下、アリアステル王女陛下」
ゼクシレンと呼ばれる、先程ヤマダ・ハナコを殴っていた金髪の女は、襲撃者が再び襲って来ないか、周囲を警戒しながらアリアステル王女の提案を承諾する。
「ヤマダ・ハナコさんも大丈夫ですか?」
「リュララ達が良いって言うなら問題な───あだっ」
「貴様ッ!不敬だろうが!!」
ヤマダ・ハナコは、再びゼクシレンに殴られた。
「あはは……ルルさん、ルルさんも一緒にお泊り会しませんか?」
「…………ん、あ、あぁ……問題無い」
ディザベルは、アリアステル王女に話し掛けられても、心ここにあらずといった感じの反応をする。
「なんかさっきまでと全然違うんだけど?」
「……そんな事は無い」
ヤマダ・ハナコの指摘にも数秒遅れて返事をするディザベル。
「泊りになるのなら、ワシは着替えを取りに一度自宅に戻らなければならぬ。よいか?アリアステル王女」
「ええ、構いません。ですが……なるべくお早く戻って来て下さい。その、不安なので……」
「うむ、分かった」
ディザベルはドレスを着たままパーティー会場から出て行った。
「ハナコ、お前も宿に預けている私達の荷物を全部持って来い。大容量のアイテムボックスを使えるのはお前だけだからな」
「分かった」
ゼクシレンに指示され、ヤマダ・ハナコもディザベルの後を追うように会場を出る。
「───注意しろよ」
「分かってる」
───暗い夜道、ディザベルは月明りと街灯の光に照らされながら、ゆっくりと自宅に向かっていた。
「……クシジアス、か…………」
帝都クシジアス、あそこには以前、世話になった事がある。
…………そう、100年ほど前に……。
「……全く」
ディザベルは歩くのを止めて、背後にあった建物の上を見つめる。
「狙うのなら、もっと殺気を隠せ」
「───ッ!?」
建物の上に陣取っていた襲撃者はディザベルの強く鋭い殺気に当てられ、思わず息を呑む。
「はぁ……それで何の用じゃ?」
ディザベルは屋上の人物とは違う、建物の影に隠れてこちらの様子を伺っていた人物に話し掛ける。
「いやぁ驚いた、まさかここまでとは」
「確か……カルシュ、と言ったか?」
カルシュ───確か、パーティーで馬鹿犬に絡まれていた時に出て来た男だったな。
そいつは建物の影からワシの前に姿を現した。
「試すような真似をしてすみません。先程の騒ぎの時、襲撃者達をものともしない貴女の力がどうにも目に焼き付いてしまって……」
カルシュは、ばつが悪そうに苦笑いする。
「ならば、もっと見るか?」
ディザベルは挑発するようにカルシュを笑いながら言葉を続ける。
「今なら『好奇心旺盛な冒険者の悪戯』として可愛がってやる」
「……いえ、もう大丈夫です」
カルシュは頭を下げ、ディザベルの前から退散しようとする。
「何を勘違いしている?」
「───うっ!?」
しかし、ディザベルから放たれた身も凍るような殺気で動けなくなってしまう。
「お前にあるのは2つの選択肢だけじゃ。ここでワシに馬鹿な冒険者として可愛がられるか───」
何百、何千という白金の剣がディザベルとカルシュを避ける様に地面の至る所に突き刺さり、更にディザベルの周囲に6本の白金の剣が浮かぶ。
「馬鹿な襲撃者の残党として惨殺されるかの2択じゃ」
「な───!?」
カルシュは突如出現した無数の剣の数々にも驚いたが、それ以上にディザベルから放たれる圧倒的な魔力の量、そして質にたじろいでしまう。
「ワシの実力が気になっていたんじゃろう?ならば特等席で見せてやろう」
ディザベルは笑いながら蹂躙を開始した。




