どいつもこいつも無能ばかりで嫌になる
「───まさか命令されたくらいで戦うなんて思わなかった」
賊共を殲滅した後、ヤマダ・ハナコがワシに向かってそんな事を言ってきおった。
「王女に命令されれば拒否出来る訳も無かろう?」
「ふーん、そんな風には全然見えなかった」
「ふん、言っておれ」
……ヤマダ・ハナコ、こやつ、少しは本気を見せるかと思ったが、実力を全く出さずに倒し切りおった……。
全く……ワシも面倒な奴に目を付けられたものよのぅ……。
「───貴様等ァ!何をやっているッ!?」
ディザベルがヤマダ・ハナコにイラついていた時、鎧を着込んだ髭面の男が急に怒鳴りながら近づいて来た。
「なんじゃ、おぬし?」
「この国の参謀総長だ!」
「ほぅ?参謀総長殿が何の用じゃ?わざわざ労いに来たのか?」
「その逆だ!先程の姫様への態度といい!何なんだ貴様らは!?」
「一介の冒険者に過ぎぬが?」
「こいつをひっ捕らえろ!」
いつまでも強気な姿勢で煽って来るディザベルに対して参謀総長は近くの騎士達に捕縛するように命じた。
「待ちなさい参謀総長」
アリアステル王女がディザベルと参謀総長の間に割って入ると、参謀総長はアリアステル王女の前に跪く。
「アリアステル王女……!ですが!」
「参謀総長、貴方が今やるべきことは、この者を捕らえる事ではないでしょう?」
「……申し訳ありません。ですがアリアステル王女、この者の発言や態度は目に余るものがあります」
「冒険者達と連携して警備を強化、襲撃者達の調査をしろと全て言わなければ分かりませんか?」
「───本当に申し訳ありませんッ!!」
参謀総長は己の無能を恥じ、深々と頭を下げる。
「防衛大臣と連携して対応を進めなさい」
「申し訳ありません。他にも不測の事態が起きた様で現場の指揮を私に任せて大臣は席を外しております」
「分かりました。では早急に対処を進めなさい」
「ははっ!」
参謀総長は立ち上がり、ディザベルの事を不服そうな目で見ながらもグッと堪えて現場の指揮を取りに戻った。
「───さて、お2人に折り入って頼みがあるのですが、私の護衛を引き受けて貰えませんか?」
「お待ち下さい、アリアステル王女!」
「…………何ですか、ヤロソン卿?」
アリアステル王女の提案に異を唱えたのは、ディザベルでもヤマダ・ハナコでも参謀総長でもなく、ヤロソンという太った上流貴族だった。
「この者達のような素性の知れない、責任能力も持たない冒険者はアリアステル王女の護衛には相応しくありません!王女の護衛にはもっと相応しい者達がいるはずです!それこそ騎士達を護衛に!」
ヤロソン卿の言い分はもっともで、この様な事態に備え日々訓練している騎士達こそ護衛には相応しい。
周囲の騎士達もヤロソン卿の意見に納得といった具合でガヤガヤと騒ぎ始めた。
実際ワシも、このデブの言ってる事自体は正論だとは思うが……時折ワシに対して見せる熱い視線に気色の悪い笑み、そして舌なめずり……このデブが何か別の事を企んでいるのは明らかだった。
───ああ、殺したい。こんな場所じゃなければ100回は殺している。
例え王女がデブの意見に納得したとしても、ワシはコイツには近づきたくない。いや隙を見て殺そう。
ディザベルが物騒な事を考えているとアリアステル王女が口を開いた。
「この会場で私達の命を守る事の出来た人間が、誰よりも賊共を多く倒すことの出来た人間が、私の護衛に相応しくないと?」
「そ、それは……」
正論には正論。
アリアステル王女に反論のしようがない正論をぶつけられてしまったヤロソン卿は先程まで余裕たっぷりだった顔がドンドン青ざめて行く。
周りの騎士達も内心では不服だろうが覆しようが無い事実を前に静まり返ってしまう。
「下がりなさい」
「は、ははぁ……!」
ヤロソン卿は、すごすごとアリアステル王女の前から退散して行った。
「はぁ……それで話の続きですが、私の護衛、引き受けてくれますか?」
「私、他に仲間がいるんだけど」
「それでしたら仲間の方々にも私の護衛をお願いしたいしたいのですが」
「うん、分かった。ちょっと呼んで来る」
「ちょっと呼んで来る───じゃないだろうッ!」
「あだっ」
人込みの中から170くらいの背の高い金髪の女と、そのすぐ後ろにフードを被った150くらいの身長の女の2人組が現れ、ヤマダ・ハナコは金髪の女に頭頂部を拳骨で殴られた。
「先程から王女に対してなんて口の利き方をするんだ!」
「別に───」
「良くない!」
「あだっ」
また殴られおった。一体何なんじゃ、こやつらは?
「お、おい!あの人は……!」
「あの人がいるって事は……まさか!?」
「もしやフードの方が!?」
金髪の女の登場で会場全体がどよめきだした。
おい待て!一体何なんじゃ、こやつらは!?知らないのはワシだけか!?
「お久しぶりです、アリアステル王女」
フードの女がフードを取ると、美しい青緑色の髪を持った少女の顔が見える。
「───まさか、貴女がここに現れるとは、リュララ王女」
な、なんじゃと───っ!?また王女じゃと───!?




