挨拶は大事
「お初にお目にかかります国王陛下」
マルテミ国の王、ユゥル・バケンス・マルテミの前に出来た貴族や冒険者達の行列。
その行列の最前に赤いドレスを身に纏った少女、ディザベルは居た。
「私、Sランク冒険者のルルと申します」
ディザベルは、どこぞの高名な貴族のご令嬢の様に優雅に、華麗に王への挨拶をこなして見せる。
───あの女の事は気になるが、今は王への挨拶が先だ。
「おお!そなたがルルか!話に聞いていた通り、本当に子供なのだな」
「ええ、ですがSランクの肩書は伊達ではありません」
「ふむ……礼儀作法は勿論の事、物怖じしない度胸もあるか……。実はそなたをここに呼んだのは私自身の目で見てみたかったというのもあるが、娘がどうしても会いたいと言うのでな」
娘……娘というと、隣に座っておる第一王女か。
「初めまして、アリアステル・バケンス・マルテミです。この度は急に招待してしまって申し訳ありません」
アリアステル・バケンス・マルテミ
白いドレスを着た、マルテミ国の第一王女。
父であるユゥル国王と同じ褐色の肌に金色の髪、そして赤い瞳の7歳の少女。
身長はワシと同じくらいか、それより低いくらいか───
家族は父だけで母とは死別、他に兄妹はいない……だったか?
「いえいえ、私もこのパーティーには以前から興味があり、是非とも参加したいと思っていましたので」
キョウと一緒ならばな!
「そうですか……!あの……お願いがあるんですが…………」
「お願い、ですか?」
「はい……あの……その…………えっと…………!その……」
アリアステル王女は、言うべきか、言わざるべきか悩んでいると言った様子で、ルルを見たかと思えば直ぐに目を伏せたりと挙動不審になっている。
ディザベルは、そんなアリアステル王女の様子を見かねて、アリアステル王女の両手に優しく触れる。
「遠慮せず何でもおっしゃってください、アリアステル王女」
ディザベルはアリアステル王女に優しく微笑みかける。
「……何でもいいんですか?」
「ええ、例えば空飛ぶ絨毯や箒に乗って雲の上に行ったり、一緒にダンジョンに行ったり、私に叶えられる事なら何でも!」
「そんな事が出来るんですか!?」
「ええ、魔法使いですから」
「そ、それじゃあ……あの───っ!」
アリアステル王女がディザベルに何か言いかけた、その時───!
突如、パーティー会場全体が白い煙で覆われた。
「て、敵しゅ───がフッ!?」
警備にあたっていた騎士の1人が敵の存在を周囲に伝えた瞬間、彼は何かに襲われ絶命した。
煙で一寸先も見えない中、剣と剣がぶつかるような音、何かが倒れる音、人々の悲鳴がごちゃ混ぜになって聞こえて来る。
「陛下達を守れ───ッ!」
騎士の1人が叫び、会場に居た騎士達、冒険者達も王を守ろうとするが、視界も効かず自身も敵に襲われている、この状況では───!
「グギャァァァ!」
兵士の悲鳴。
「魔法使いは居ないのか!?誰かこの煙を晴らせ!!」
「ダメだ!無効化されて……ッ!?」
冒険者の必死な叫び。
「チッ!コイツ等めんどくせぇ!!」
バカ犬の鳴き声が何処かから聞こえて来る。
…………ふむ。
「死ねぇ!国王!!」
煙の中から騎士の格好をした男が剣を引き抜いてユゥル国王の真横から襲い掛かる。
「お父様ッ!?」
「へへ、お前はこっちだッ!」
アリアステル王女の背後から、騎士風の男では無い、別の男がアリアステル王女に手を伸ばす。
「きゃあああ!!」
「殺しはしねぇよ、お前───はばぁあああ!?」
「グゲェェェ!?」
鎧や肉や骨が砕け、潰れる音と共に男達の悲鳴が聞こえる。
「全く……話している最中だと言うのに……」
ディザベルはパーティー会場に蔓延していた白い煙を魔法で晴らす。
何者かが抵抗した感覚があったが、ワシが相手では無駄な努力。
台風を前に蝋燭の火が消されまいと懸命に頑張るようなものじゃ。
床には王と王女を襲った賊の2人が、ワシの作った土の拳によって押しつぶされ転がっている。
「───さて、アリアステル王女よ。願いは何じゃ?こやつらを倒せ、自分達の命を守れと言う願いならワシが勝手にやるから願わなくてもよいぞ?」
ディザベルはアリアステル王女に微笑む。
「さあ、お主の願いは何じゃ?」
「えっ!?えぇっと…………私と、お友達になってください───っ!」
「ふむ、良いぞ」
「あ、ありがとうございます!」
「……………………なぬ───っ!?」
ディザベルは王女の予想外の願いに遅れて反応した。




