ドレス試着
───国王主催のパーティー当日、時刻は16時丁度。
パーティーで着るドレスの受け取りと調整の為、仕立て屋のメイドに言われた通り、パーティー開催の2時間前に開催場所である王城に到着したディザベル。
パーティーの招待状と自分の身分を証明するギルドカードを兵士達に提示する。
招待状を見た兵士の1人が王城の中へ戻り、メイドを1人連れて来た。
連れて来られたメイドがディザベルの招待状とギルドカードを確認する。
「───お待ちしておりました、ルル様。どうぞこちらへ」
メイドに先導される形で入城し、仕立て屋のメイド達が待機している部屋まで歩いてゆく。
「こちらです」
「はーい」
メイドに案内されるがまま部屋に入ると、部屋の中心には赤いドレスを着せたトルソーが堂々と置かれていた。
「こ、これは───!?」
状況的に考えて、この目の前にあるドレスがワシの物なのだろうが……。
「少し……セクシー過ぎないか……?」
いや、少しどころではない、トルソーにディスプレイされている時点で分かる。
このドレス、大方はワシの希望通り、薄くて軽そうな生地でスカートには大きくスリットが入っている。色も別に問題は無い。
では何が問題なのか?
それは───生地が薄い!薄すぎる!トルソーの形がハッキリと分かるほどだ。
これでは実際に着たら身体のラインなど丸わかりではないか!!
「きっとお似合いになられますよ」
「え、え~……そ、そうかな~?」
メイドのお世辞……いやきっとお世辞だろう。ワシはメイドのお世辞に苦笑いで答える。
「では早速、試着を」
ワシの周囲にいたメイド達が一斉にワシを取り囲み、ワシの衣服を脱がせにくる。
「ひゃっ!?」
ほ、本で読んだ事がある。王族はこんな風に自分の着替えをやらせていると。
し、しかし、これは───!は、恥ずかしすぎるっ!!
だが抵抗する訳にも子供の様に駄々をこねる訳にもいかない。
ワシに出来るのは、このまま抵抗せず、着せ替え人形のように───
「下着もか!?」
不意に下着を上も下も脱がされて声が出てしまう。
「ええ、下着もです」
「いやでも!あの薄さなら浮き出てしまうのではないか!?」
「ええ、ですからこちらを」
メイドの1人が黒のショーツをワシに見せる。
「……殆ど紐では無いか」
「はい、このTバックなら下着のラインがドレスに浮き出ませんから」
「そういう事では……」
「上にはこちらを」
メイドが肌色の丸いカードのような何かをワシに見せる。
「これは?」
「これを貼って胸が浮き出ないようにします」
「あぁ……」
成程、そういう道具か……。
「では失礼します」
メイドがディザベルの左の乳房を持って肌色の丸いシールを乳首が隠れるように胸に貼り付ける。
「……すみません、少々サイズが合わないみたいで……すぐに別のサイズの物をお持ち致します」
…………乳輪が大きすぎてシールに収まりきらなかった。
部屋に一瞬の静寂が訪れる。
は、恥ずかしさで死にそうなんじゃが!!何故この様な仕打ちを受けねばならん!?ワシはただドレスを貰いに来ただけじゃぞ!?
「先程は失礼しました」
先程胸に貼ったシールより一回りも二回りも大きいシールを持ってメイドが戻って来た。
ディザベルは、あまりの羞恥に顔を真っ赤にして悶え苦しみながら胸にシールを貼られた。
「今度は大丈夫です」
「それは良かった……」
「次はドレスです」
ようやくか……ここまで長かった……。
Tバックに胸にシールを貼った変態の様な姿のワシに赤いドレスが着せられる。
やはりというか、薄手のドレスはワシの身体にピッタリと張り付き、ボディラインがハッキリと分かるほど浮き出てしまっている。
そして、このドレスを最初に見た時にも思っていた事だが、胸元を隠す布面積が少なすぎる。
これでは上から見られても横から見られても、ほぼ裸同然ではないか!
それに背中はバックリと空いてしまっているし……。
「や、やっぱり私にはちょ~っと大人っぽすぎるかなー」
「とてもお似合いですよ」
メイドはディザベルの台詞に被せるように言って来た。
「……特にドレスには問題無さそうですね」
ワシのドレス姿を見てドレスの調整は必要無しとメイドが言っている。
『問題大ありじゃ!!何なんじゃ、このドレスは!?恥ずかしくて、とても着れたもんじゃないわ!!』
───と内心思っていても決して口には出さない。
ドレスの品質自体は非常に良く、肌触りも良くて文句の付け所が全く無い。
それにここで駄々をこねても他に着るドレスは無いしのぅ……。
はぁ……せめてあやつが居てくれれば喜んで着るんじゃがな……。
見せる相手がいないのに、こんなドレスを着てものぅ……。
「次は、こちらを」
今度はメイド達に自分の二の腕まで長さのある赤いロンググローブを両腕にはめられる。
このロンググローブもドレスと同じ素材で出来ているようで肌触りが良い。
「最後に、こちらを」
ディザベルはメイド達に流れるように椅子に座らせられ、赤いパンプスを履かせられる。
「サイズは問題ありませんか?」
「問題は……無さそう……かな?」
強いて言うならこの靴のヒール、10cmはあるんじゃないか?
個人的には、もう少し動きやすい靴の方が良かったのじゃが……このドレスなら、この位はヒールの高さが無いと見栄えが悪いか……。
「これで衣装の方は終わりです」
ようやく終わった……いや本番はこれからなんじゃが……。
「ではこれからルル様のメイクをさせていただきます」
「あ、はいっ!!」
メ、メイクじゃと───!?
ま、まさかドレス一式貰えるばかりか、メイクまでしてもらえるとは夢にも思ってみなかった。
それに服装で分かる事だが、この者達は、仕立て屋と名乗ってはいるが、王族に仕える侍女達であろう。
そんな本場の侍女達にメイクをしてもらえるなんて、本当にお姫様になった気分……。
ああ……これだけでも今日来た甲斐があったというもの。
ディザベルは夢のような気分で鏡の前に座り、メイド達にメイクをされていく。
「髪型はこのままポニーテールでよろしいですか?」
「はい!」
「畏まりました」
ディザベルは、にこやかに受け答えをしながら目の前の鏡を見つめる。
鏡の中の自分が次第に別人のように可愛らしくなっていく、そんな様子を見て、ディザベルは嬉しさと高揚感、そしてもどかしさを感じていた。
本当に……本当に何でこんなに可愛くなれているのに居ないんじゃ!あやつは!!




