お好みのドレスを作りましょう
「……さん…………ルルさん?」
「んあ!?なんじゃ!?」
「ドレスの事についてなんですけど……」
「あ、ああ!な、何ですかー?」
ワシとしたことが、変な事を考えていたせいで意識が完全にそちらに持って行かれていたようだ。
「何か希望はありますか?」
「希望?」
「ドレスの色やスカート丈の長さなど何でも結構です。パーティーまで猶予はありませんが出来る限り要望には応えたいと」
「成程……」
「それで何か希望は?」
「希望……」
ドレス、か───
昔、お母さんが読み聞かせてくれた、あの絵本のお姫様。
あの子は舞踏会用に誰もが目を惹くドレスを新しく作ってもらって舞踏会に出ていた。
絵本だから、当時目が見えなかった私にはどんなドレスを着ていたか正確には分からなかった。
けれども、お母さんとお姉ちゃんが私に分かるように、一生懸命伝えてくれたお陰で、ぼんやりとだがイメージは出来ていた。
そんな私の頭の中にイメージとしてある、あの子のドレス。あんなドレスを私も着てみたい。
……けれど、それは別の機会にしよう。
「じゃ~あ、ドレスは薄くて軽い生地で、スカートにはスリットを入れて動きやすくして、いつでも戦闘出来るように!」
「……畏まりました」
国王主催のパーティーで護衛も警備も厳重でも自信満々に襲撃しに来る馬鹿はいるだろう、だから念の為な。
それに見せる相手もいないしのぅ…………あ、また腹が立ってきた!何であやつはいないんじゃ!もう!
「色はどうしますか?」
色……色か……別に好みの色など特に無いしのぅ、適当に任せてもよいが───
「…………赤」
「赤ですね?畏まりました」
あっ、しまった……。色の事を聞かれて、ぼんやりとキョウの魔力の色を思い出していたら口に出てしまった。
しかし訂正しようにも、他に思いつかぬし……もう赤でよいか……。
「他には何かございますか?」
「うーん……他には無いかな~?」
「畏まりました。それで完成したドレスの受け渡しについてですが、当日会場内でお渡し致します」
「はーい」
「そこでドレスの細かな調整もしておきたいので2時間ほど早めにお越しいただけますでしょうか?」
「はーい、分かりましたー」
「では私達は、これからドレスの制作に取り掛かりますので、これで」
「はーい、お疲れさまでしたー」
ギルドの応接室から出て行く仕立て屋のメイド達をワシは作り笑顔を浮かべながら手を振って見送った。
「……ドレス、かぁ~」
誰も居なくなった部屋で、ディザベルは子供の様に無邪気に笑っていた。
「ドレス……私だけのドレス……」
ドレスなど貴族でもない限り着る機会も無ければ持っている者も殆ど居ない。それはワシだって例外ではない。
それが……それが王族御用達の仕立て屋が作った自分だけのドレスでパーティーに出れるなんて……!
「───まるで夢のようだ……」
薄くて、軽くて、赤い、私だけのドレス……一体、どんなドレスが出来上がるのだろう?
「ああ、楽しみだ……!本当に楽しみだ!」
…………楽しみ、楽しみなのはそうなのだが……本音を言えば私が主役のパーティーで、あの絵本のお姫様の様なドレスで、キョウと一緒に───!
「…………ぬぁぁぁんで、あやつは居ないんじゃぁぁぁぁぁ!!」
パーティーに!お姫様に!ドレス!……とくれば普通、王子様じゃろうッ!!
ドレスを着たお姫様が居て王子様が居ないパーティーなんて、あるか?普通!?
「───ああもう!帰るッ!!」
激しい苛立ちを抱えたまま家に帰ったディザベル。
「うぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”~~~ッ♡♡♡!!」
家に帰った彼女は罪悪感を感じつつも、ベッドである事をして、そのストレスを発散した。




