怒りのやけ食い
「全く……!」
キョウ達が無人島を目指して海上を爆走していた頃、ディザベルはマルテミ国内で美味しいと有名なスイーツカフェに来ていた。
ディザベルはカフェの店内で、バターとシロップが乗った分厚い3段の熱々パンケーキを頬張っていた。
「はむっ……師匠のワシを置いて……あむっ……ん…………修行に行くなど!」
ディザベルはパンケーキにフォークを突き刺し、それを口に運び───
「何を考えておるんじゃ、あやつは!?」
バカな弟子に怒っていた。ディザベル怒りのやけ食いである。
「そもそも!身体強化以外、碌に魔法を使えぬ癖に、ワシ抜きで何を修行するんじゃ!?馬鹿か?馬鹿なのか!?」
ディザベルは怒りながらパンケーキを切り分け、次々に口に運ぶ。
「あむ……全く……全く…………ああもう!何なんじゃ、あやつは!!」
好きな甘い物を食べていても収まる事の無い怒り。
ディザベルは追加で何か頼んで気を紛らわせようと考え、メニューを見ていた。
「おお、居た居た」
「んん~?」
自分の席に黒い肌の筋肉質な大男がやって来た。
こやつは確か冒険者ギルドのマスターだったか?名前は確か───
「何ですか、ディランさん?私、こう見えて忙しいんですけど?」
一緒に住んでいるキョウ達以外とはディザベルとしてではなく、Sランク冒険者、ルルになって会話をする。
「まあ、そう言うな」
ディランは懐から赤い封蝋で閉じられた一通の手紙を取り出し、テーブルに置く。
「これは?」
面倒事の予感しかしないが、一応聞いてみる。
「今日から2日後、明後日に開催される国王主催の社交パーティー、その招待状だ」
そら来た。
「どうして私に?それも明後日のパーティーに急に招待だなんて」
「それだけ有名になってるって事だ」
はぁ……面倒な。だから悪目立ちしたくなかったというのに……。
「本来なら1ヶ月前に招待は終わってるんだがな、最近大活躍のお前達2人がこの国に来たっていうんで、お前達の顔が見てみたいって、国王が今回特別に招待を出したんだ」
「ふーん……でもタロウが無人島目指して丁度今朝、どっかに行っちゃって……残念だけど今回は……」
2人に出した招待だ。これなら上手い事、欠席出来ないか?
「そうか、それはタイミングが悪かったな。それなら仕方ない」
おお?これは回避出来そうか?
「国王には俺から言っておくから、ルルだけでも出てくれ」
やはり駄目か。
「分かりました」
了承はしたが社交パーティーなんて面倒事、普段なら絶対に行きたくない。
しかし今回は王族が相手。それも直接自分達を指名されていては逃げようが無い。というより逃げた方が余程面倒な事になる。
…………キョウの馬鹿!面倒事を押し付けおって!
ますます自分を連れて行かなかった事に腹が立ってくる。
というより何であやつは、毎度毎度あやつが好きそうなイベントが起きる度にいないんじゃ!?ここまで来ると最早、意図的じゃろ!?
ディザベルは笑顔を顔に張り付けたまま、静かに激しく、ここにいないキョウに対して怒っていた。
「参加自体は別にいいけど、ドレスの用意なんて出来ないよ?」
国王主催のパーティーともなれば正装は必須。
まさか私服で参加なんて出来る訳無い。これなら……!
「それならウチに王家御用達の仕立て屋が来てる、食べ終わったらギルドに来てくれ」
駄目だ、逃げようが無い……。
「なるべく早くな?」
ディランは招待状を置いて店から出て行った。
「…………ああもうっ!!追加でアイス!」
ディザベルはパンケーキを食べながらバニラのアイスクリームを注文した。




