いざバカンス!ここはマルテミ王国
───ダンジョン都市ガーンデーンを出て今日で7日目。
…………遂に、遂にッ!念願のリゾート、マルテミ王国にようやく到着!!
ここまで本当に長い道のりだった……。
出発早々、盗賊の方々に襲撃されるというアクシデントに見舞われるものの、問題無く返り討ちにした。ここまではいい。
……まさか、そこから連日、ずっと襲撃され続けるとは思わなかった。
さながら昔のエンカウント率の調整がおかしいゲームのように盗賊やら蛮族やら夜盗やら自称闇ギルドの構成員に朝昼晩、一日中代わる代わるに襲われ続け、その度に返り討ちにし、ついでに襲ってきた奴らのアジトも粉砕しながら、なんとかマルテミに着いた。
いや、まあね、俺は逆にスリリングで楽しかったよ?
ここまで来ると次は誰が襲ってくるんだ!?って期待感もあって。
……ただ、ディザベルがいちゃつこうとしたタイミングで、まるで見計らったかのように襲ってきたのが本当に良くない。
見てよ、ディザベルのこの顔。もう滅茶苦茶不機嫌。
襲撃者のエントリーで延々と寸止めされ続けていたせいで、もう修羅の顔。
結局、ガーンデーンを出てからマルテミに着いた、今日この日までキスすら出来ていません。
はい、ディザベル君は欲求不満です。
「───では私達はこいつ等を引き渡してきます」
ここまで道中の旅を護衛してくれていたガーンデーンの騎士の皆さまに声を掛けられる。
こいつ等というのは道中襲ってきた奴らの事だ。
全員では無いが、それでも何百人以上を生け捕りにして俺のアイテムボックスに放り込んでいたのを引き渡す為にアイテムボックスから引き釣り出していたんだった。
「よろしくお願いします!ああ、それとこれで良いホテルでも取ってゆっくり休んでください」
俺は護衛をしてくれていた騎士達のリーダーに宿泊費を多めに渡す。
「いいんですか!?」
「ええ、受け取って下さい。私達のせいで皆さんにはかなり迷惑を掛けましたから」
本当に。
「……では有難く」
リーダーの騎士は俺からお金を受け取り、マルテミ王国の衛兵達と連携して野蛮人共を連行して行った。
「さ~~~て!念願のマルテミに着いたことだし!じゃあ早速───」
「ホテルに行くぞ」
ディザベルが俺の言葉を遮った。
「……いやいやいや、最初に言ったでしょ?マルテミに来たら、まず家を買うって」
「そんなの明日でもいいじゃろ、さあ行くぞ」
ディザベルは俺の腕を引っ張りホテルに向かおうとする。
まあ一日くらいゆっくりしても…………いや駄目だ!ここで譲歩したら絶対に確実にいちゃつけなかった分、一週間は搾り取られる!!
そうなったら疲れて家を買うどころじゃなくなる。
そしてそのままズルズルと家を買うのが遅れて『別にホテル暮らしでもいっか……』ってなるに違いない!
ここで折れる訳にはいかないッ!!
「ダメダメダメ!さあ行くよ!」
「ああ~~~」
俺は駄々をこねる子供を無理矢理連れて行く親の様にディザベルの腕を引っ張って冒険者ギルドに連れて行く。
「すいませーん!どっか家買えるとこ知りませんか~!?」
「おお、お前らが例の奴らか。話は聞いてるぞ」
マルテミの冒険者ギルドに入って早々、家探しをする俺と、そんな俺を出迎えてきた身長190はありそうな筋肉モリモリの黒い肌のハゲのおっさん。
誰???
「俺はここのギルドマスター、ディランだ」
「ああ、これはご親切にどうも。俺はサトウ・タロウ、こっちは同じパーティーのルル」
俺は自己紹介をしながら懐から青白いミスリル鉱石を使用したギルドカードを取り出してスッとカッコよく構えて見せる。
フゥン!説明せねばなるまい!
まあ察しの良い人は予想出来てると思いますが、ポートリスとガーンデンでの活躍がギルドに認められ、Sランクに昇格していたのだ!!
いいぜぇ、このミスリルのギルドカード!
青白いカードに金色の印字!カッコいいぜ~!!
「おう、お前らの事はガーンデンから聞いてる」
「ん、あっ、そうなんすね」
俺はSランクの証明、ミスリルのギルドカードをスッと懐に仕舞う。
「しかしまさか、ガーンデンといい、ウチでも早速やってくれるとはな!」
……いや何を!?
「自分達を囮にして闇ギルドの連中を一網打尽にするとはな!アイツ等には手を焼かされてたから、いやぁ助かったぜ」
あ、そういう事ね!?いや別に狙ってやった訳じゃないんですけど……。
「ん、まあ?これくらい?別に何ともないですけどね???」
まあいいか!乗っかっておこう。
「フッ、頼もしい奴だぜ。そういや家を買いたいって言ってたな」
このハゲ……いやギルドマスターのディランはニッコニコで俺に近寄って来る。
「不動産ギルドには俺が付いて行こう」
「おぉ?」
「なぬっ!?」
ディランの発言にディザベルが過剰に反応する。
この女、もしかして路地裏にでも連れ込んでキスでもしようとしてたのか?
「紹介状を書くよりもこっちの方が手っ取り早いしな。それに道すがら話も聞きたいしな」
「そういう事なら別に構いませんよ。じゃあ早速、不動産ギルドに行きましょう!ほら行くぞ、ルル」
「あああ~~~」
ディザベルは引きずられながら不動産ギルドに連行された。




