また会える日を楽しみにしてる
「あはっ!あははっ!アハハハハハッ!!」
突然、ヴィスタが壊れたかの様に笑い出した。
「……ん?うおっ!?」
キョウは、慌ててヴィスタの腹から拳を引き抜く。
しかし決して、ヴィスタの病変っぷりに驚いたからではない。
妙な違和感、いや手応えを感じて拳を引き抜いたに過ぎない。
「こ、こいつ!?」
向こう側の景色が見える程にガッポリと腹に大穴が空いているというのに、血が一滴も滴ってはいなかった。
「……人形、か」
ディザベルがヴィスタの正体を……いや目の前の物体の正体を見事に言い当てる。
「人形ォ!?人形だとぉ!?俺は人形と本気で戦ってたのかよ!?」
「だ~いせいか~い♪良いリアクションするねー♪君、名前は?」
「あ、サトウ・タロウです」
「ふーん、サトウ・タロウ君かー……よーし覚えた!」
ヴィスタは、新しいオモチャを見つけた子供の様に嬉しそうにしている。
「本体は何処だ」
「教えなーい」
「よし、壊せ。目障りだ」
「了解!」
「じゃ、次に会う時は、パパの魔眼でも賭けて殺し合いでもしようね」
「───待てッ!壊すな!!」
ディザベルが声を荒らげてキョウを止める。
「あれ?壊さなくていいの?」
「ヴィスタ!何処にいる!?」
「だから教えないって」
「何処にいるかと聞いているんだッ!?」
「次に会う時を楽しみにしててねー、じゃ自爆でもしちゃお」
「……は?」
突拍子もない事を言うものだから、キョウは間抜けな声を出してしまった。
だがヴィスタの偽物の身体が意味深に光り出した瞬間『コイツはマジでやる!?』とキョウの中で確信に変わった。
「ちょっ!?」
キョウは咄嗟に抱きしめるようにしてディザベルを守る。
「待て!ヴィスタァァァァァ!!」
「ばいば───」
直後、ヴィスタの偽物の身体は、別れの言葉を言い切る前に爆発した。
「───無事か?」
「……お主こそ無事なのか?」
「当ったり前!」
キョウは、ディザベルに笑いかける。
「……なぁ、アイツの言ってた、パパの魔眼って……」
「奪われた皆の魔眼の中で幾つか回収出来ていないものがある……その中の1つに……」
「じゃあ取り返さないとな!」
「……ありがとう。一緒に手伝って」
「いいぜ、旅の目的が1つ増えたな」
キョウは、笑って答える。
ディザベルが卑屈にならず、やっと素直に自分を頼ってくれたのが嬉しくて───
「……しっかし、その身体……どうやって治せば」
キョウは、ダイアまみれになっているディザベルの身体を見て、首を捻る。
「そうじゃのう……ん?」
傷の対処方法を考えていたディザベルの視界に、白金の剣が突き刺さったままのキューブが映る。
「あのキューブ……あの戦いの中にいたというのに、まだ壊れておらんかった」
「ん?……あ、あれ?」
キョウは辺りを見渡して、ディザベルの言っているキューブを見つける。
「なんか刺さってますけど、大丈夫なんですか、アレ───って」
キョウの見ている前で、白金の剣が消失し、キューブから水色の光と黄緑色の光が噴水の様に勢いよく漏れ出した。
「大丈夫なの、アレ!?」
「……ふむ、奴が国中の人間から吸収した魔力と生命力が漏れ出しておるな」
「おお~、じゃあこれで皆、元通りに?」
「一度コップに注がれた水が、コップが壊れたら元に戻ると思うか?」
「なーんて分かりやすい説明なんでしょ。じゃあ、コレはどうなるの?」
「空中で霧散するだけじゃろう───な?」
───その時、ディザベルのアイテムボックスから突然、何かが飛び出して来た。
「うわっ、なんか出て来た!?」
出て来たのはガーンデーンのダンジョン、15層の宝箱から手に入れた黒紫色の指輪。
鑑定を使っても一切効果が分からなかった、あの『反魂の指輪』だった。
反魂の指輪は、キューブから漏れ出した魔力と生命力を急速に吸い上げてゆく。まるで我が物にするかのように。
「へー……充電でもしてんのかなぁ」
「……ワシは、アイテムボックスを開いておらん!」
「え?あ?」
「アレは勝手に出て来た……!」
だが異変は、これだけじゃなかった。
な、何だ……!?何か大切な物が……私の身体から抜け落ちるような、この虚脱感は……!?
「警戒しろ!もしもの時は壊して構わん!」
反魂の指輪から薄い黄色の光が漏れ出し、その光が徐々に人の形へと変化してゆく。
「な、何が出て来るって言うんだぁ!?」
反魂の指輪が、完全に人型となった光の指に嵌る。
「…………ん?なーんか、この体型に見覚えが……?うわっ!?」
目も開けられないような強烈に眩しい光が玉座の間を包み……暫くして光が収まると、そこには───……
「あ、あれ───!?」
何故だか困惑している全裸の少女の姿が───
「お、お姉ちゃんっ!?」
「……………………な、なんだって───!?」
死んだはずのディザベルの姉の姿があった。




