助けを呼ぶ声が聞こえた
大事な所で邪魔をされ、少し不機嫌そうにしていたヴィスタだったが、ノコノコやって来たアリアステルの姿を見て、すぐに機嫌を戻した。
「へー!戻って来ちゃったんだ?」
信じられない馬鹿を見て、思わず笑ってしまうヴィスタ。
「ば、馬鹿ッ!何で戻ってきた!?」
ヴィスタとは対照的に、命がけで逃がしたはずのアリアステルが戻って来たのを見て、ディザベルは信じられないという感情と、怒りと呆れが、ないまぜになって複雑な表情をしていた。
「そんなのっ!置いて行ける訳ないじゃないですか!!ナリバスさん、ルルを助けて!!」
「馬鹿犬ッ!!アリアステルを連れてさっさと逃げろ!!お前じゃ逆立ちしたって奴には勝てない!」
「逃がすワケ無いでしょ!?わざわざ死にに戻って来たんだから、リリの目の前で殺してあげる!」
ヴィスタは、無数のダイアモンドの剣を創り出し、アリアステルとナリバスに向けて発射した。
「───ッ!ナリバスさん!!」
「馬鹿犬ッ!!」
「チッ!!」
どいつもこいつも好き勝手言いやがって!
───などとナリバスは内心思いながらも、冷静に状況を分析していた。
ダイアの剣……王女に聞いていた通りの攻撃だが、物量も速度も圧も凄まじいな。やっぱり聞くのと実際に見るのじゃ全然違う。
それに今のルルの姿……何がどうなって、どんな原理で、あんなダイアまみれになってんのかは知らねぇが、あのダイアの剣をまともに受けるのはマズイ。
それなら王女を脇に抱えて攻撃を避けながら倒せばいいんだろうが……。
ナリバスは、チラっと周囲に倒れている貴族や兵士達を見る。
アリアステル王女に聞いた話じゃ、ルルがアイツとドンパチやり合いながら自分を逃がしてくれたって言ってたが……。
ルルの野郎……!あんなのと戦いながら、倒れてる奴らが巻き添え食って死なねぇように立ちまわってやがったな!?
その証拠に、倒れてる連中は魔力と体力を根こそぎ吸われて気絶こそしているが全員無傷だ。
コイツ……魔力もスタミナも持って行かれて余裕なんかねぇってのに……なんて女だ。
…………だったら避けながら戦うなんてナシだ。コイツの努力を無駄には出来ないだろ。
俺は、ギア・ザ・ボリックを握る力を強める。
王女を守りながらアイツを倒して、ルルを助ける。
たったそれだけの事だ。出来るだろ、ナリバス!?お前は男で、冒険者なんだ!!
悪を倒して、王女も、あの女も、他の奴らも助けるなんてこと───
「男の俺が!やらないワケにはいかねぇだろうがッ!!」
俺は全神経を集中して、高速で突っ込んで来るダイアモンドの剣を、大剣ギア・ザ・ボリックで叩き落とす!
「ウォ……ッ!ラアアアアアアア!!」
ギア・ザ・ボリックの能力でギア・ザ・ボリックの重量を紙のように軽くして、来る剣、来る剣をギア・ザ・ボリックに触れた瞬間に軽くして吹き飛ばしていく。
しかし、いくら軽くしても、ぶつかった時の衝撃は腕を痺れさせる程で、何より数が多すぎる!
「王女!俺の後ろにッ!!」
「は、はいっ!」
だが泣き言は言ってらんねぇ!
「王女を守りながら反撃!そんでお前を倒す!それだけの事が出来ねぇとでも思ってんのかァァァ!?」
ナリバスは叫びながら、既に100を超えるダイアの剣を叩き落としていた。
「こんだけ魔法をバカスカ使ってんだ!もう余力ねぇんじゃねーか!?」
「全然?」
「ハッ!どうだか……なあッ!?」
ナリバスは、呼吸が乱れ始め、汗もかいているというのに、ヴィスタは汗1つかかず、退屈そうにしていた。
「……リリと戦ってたから物差しが狂ったけど、今の奴らは、この程度だよねー」
ヴィスタは、あくびをしながら指をパチンと鳴らす。
「馬鹿犬!後ろだ!!」
「後ろ……?後ろだとぉぉぉ!?」
「う、噓…………」
ディザベルに言われてナリバスとアリアステルが後ろを振り向くと、アリアステルの後ろには100本以上のダイアの剣が出現していた。
あ、ありえねぇだろ!?こんな真っ正面から俺に向かって何百本も撃ちこんでる最中に、離れた場所に同じ数の剣を出現させるなんて!?
ナリバス達が驚くのも無理はない。
魔法とは自分の魔力を使い行使するもの。
自分という魔力の器から離れれば離れるだけ魔法の発動とコントロールは難しくなる。
離れた場所にいる人間に自分の声を言葉を正確に届けられるか?それと一緒だ。
魔力量もだが、技量も桁外れのヴィスタでなければ出来ない芸当だった。
「クッソがァァァ!!」
だ、ダメだ!目の前の剣を防ぐので手一杯で、アリアステルのカバーまで行けねぇ!!
1から鍛え直して少しは強くなったはずだってのに、なんてザマだ!
「ぐぅ”ぅ”ぅ”……ッ!」
ディザベルもアリアステルを助けようとするが、魔力も無い、指一本ですら動かす事が出来ないディザベルに出来る事は無かった。
「ほらほら、よく見て、リリ」
ヴィスタは、両手でディザベルの両目を無理矢理開かせて、これから起こる惨劇を目に焼き付けさせようとする。
「う”……ぐ……っ!」
「リリが守ろうとした王女様が死ぬところを!」
「や”……め”…………ッ!」
「はい、さよなら~」
ヴィスタは、アリアステルの背後に出現させたダイアの剣を発射した。
「クッソォォォォォ!!」
「やめろォォォ!ヴィスタァァァァァ!!」
ナリバスもディザベルも動けない。
「あ……ああ……」
狙われているアリアステルでさえ、恐怖で動けなかった。
私が……私が、ルルの言う通りにしていれば……逃げていれば……こんな光景を、私が死ぬなんていうシーンをルルに見せずに済んだはずなのに……。
「……ごめんなさい、ナリバスさん……ルルを助けて…………」
「もう諦めるの?」
「───え?」
アリアステルに迫っていた数多のダイアの剣が、急にアリアステルの前に現れたヤマダ・ハナコによって全て叩き落とされていた。




