敗北
「国中の人間が、ぶっ倒れてるのに誰に助けを求めに行ったの……かなッ!?」
「助けを期待して行かせた訳じゃないッ!」
白金の剣とダイアの剣が空中を舞い、ぶつかり合い、粉々に砕け散っていく───
世界最強の魔法使い同士による本気の殺し合い……だというのに、砕けた白金とダイアの欠片が煌めきながら玉座の間に降り注ぐ光景は、見る者の目を奪う、まさに幻想的な光景だった。
「じゃあ何?本当に、ただ逃がしたの?身内以外を殺して来た貴方が?」
「だったらッ!?」
「ホンッ…………トーに気持ち悪すぎっ」
ディザベルの直上から雨霰の様にヴィスタのダイアの剣が次々と降り注ぐ。
「クッ……ソ女がァァァ!!」
ディザベルは、巨大な白金の剣を自分の真上に召喚し、それを攻撃を防ぐ盾代わりにする。
剣と剣がぶつかる激しい衝突音と共に、攻撃を受ける度に徐々にディザベルの召喚した巨大な白金の剣にヒビが入り、欠けて、砕けてゆく。
「あはは!そんなので防げるぅ?」
「チッ!」
ヴィスタの言う通り、このまま奴の攻撃を防ぎ切る事は出来ない。
……かと言って真っ向から撃ち合っても創造魔法の練度はあっちが上。
そもそも、この残り魔力じゃ磨り潰されて終わるだけだ。
───だったらやる事は、1つしかない。
ディザベルは、残り少ない魔力を使ってアイテムボックスを開き、中から愛用の絨毯を取り出す。
あの男との戦いで魔力もだが、体力を持っていかれすぎたせいで、私は満足に動くことが出来ず、正に防戦一方で攻撃に転じる事が出来ずにいた。
それなら、この絨毯で足りなかった機動力を補えばいい。
これに乗って馬鹿女の攻撃を躱し、一気に奴を叩く!
「───ちょっと、そのまま死ぬ気?」
ヴィスタは、白金の剣の影に隠れたまま、一向に動かないディザベルに対して話し掛けるが、ディザベルからの反応は無かった。
「へー……」
何かを企んでいるのか、それとも本当に打つ手が無いのかは分からないが、ヴィスタは、ダイアの剣による波状攻撃を継続したまま、巨大なダイアの剣を一本創造する。
「じゃあ、そのまま死ねば?」
今も波状攻撃によって摩耗し続けているディザベルの白金の剣に向かって、ヴィスタは、ダメ押しと言わんばかりに巨大なダイアの剣を投下する。
投下された巨大なダイアの剣は、ディザベルが盾代わりにしている白金の剣を一方的に粉砕しながら王城の地下まで深々と突き刺さる。
ヴィスタは、その光景を冷ややかな目で見ていた。
「所詮は家畜の生き残りか…………って思ったけど───!」
砕け散る白金の剣から空を飛ぶ絨毯が飛び出して来た。
ヴィスタは、天井近くで飛ぶ魔法の絨毯を見上げながら笑う。
「あはは!そんな無防備に腹を見せながら飛んで、どうするのッ!?」
ヴィスタは、大量のダイアの剣を創り出して、自分の頭上を高速で飛ぶ絨毯に向かって射出する。
絨毯の移動スピードよりも速く撃ち出されたダイアの剣は、ディザベルの絨毯を串刺しにした。
「アハッ!串刺しじゃん!」
「───お前がッ!」
砕け散る巨大な白金の剣の中から、箒に乗ったディザベルが目にも留まらぬ速度でヴィスタ目掛けて突っ込んで来た。
「串刺しになれッ!!」
もう新たに白金の剣を創り出させない程に魔力を消耗したディザベルは、防御に使っていた背中に停滞している6本の白金の剣をヴィスタに向けて撃ち出した。
「ふーん、あの絨毯は囮…………でもさぁ」
突如としてディザベルの視界からヴィスタの姿が消え失せた。
「消え……っ!?」
「余裕なさ過ぎて忘れてない?」
ヴィスタの声が上から聞こえて来る。
ディザベルが上を見上げると、天井に縫い付けられた絨毯を踏むように逆さになったヴィスタの姿があった。
「私も位置の入れ替えが出来る事を!」
「チィィィッ!!」
ディザベルは、先程撃ち出した6本の白金の剣の軌道を無理矢理変えて、上にいるヴィスタに向かわせる。
「残念、もう詰み」
ヴィスタの言葉と共に、玉座の間の床に溜まっていた全てのダイアモンドの破片が光り出し、その形状を小さな剣へと変え、ディザベルに向かって飛んだ。
「───ッ!?」
「攻撃を避ける為だけに飛ぶワケないでしょ、私が」
防御に使っていた白金の剣は攻撃に回してしまって、今、ディザベルに手元には無い。
新たに剣を創り出し防御しようにも、肝心の魔力が無い。
そして箒に乗って攻撃を躱そうにも、小さなダイアの剣は、この玉座の間の全域にあって逃げ場など無い。
もはや防御も回避も出来ない。ヴィスタの言う通り、ディザベルは詰んでいた。
「痛ッ、ア”ア””ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!」
ディザベルは、悲鳴を上げながら全身を無数の小さなダイアの剣によって何度も何度も繰り返し斬り刻まれた……。




