神様
「キャ───ッハハハハハ!!」
時の止まった静寂の世界で少女の笑いが響き渡る。
笑う事も出来ない女の声が、この世界で動く事も出来ない女の甲高い声が!俺の脳に響く……!
「え~っ、すっごい間抜け面!もしかして時間を止めたくらいで勝った気でいたのぉ?自分の事、大魔法使いだとか王だとか言ってたけど、全然大したことなくて笑っちゃうんだけどぉ~」
俺の、俺だけの世界で、目の前のガキが俺を煽り、俺を馬鹿にし、腹を抱えて笑いやがる。
「消え失せろッ!!」
俺は受けた屈辱をそっくりそのまま返すように『魂さえも焼却する地獄の業火を放つ魔法』を放つ!
「んー、1本でいっか」
対するディザベルは、蒼い光を帯びた白金の剣を1本だけ生成する。
生成した剣は独りでに宙に浮き、主人に仇名す火炎を只の一振りで完全に消し去ってしまった。
「───なッ!?なんだとぉぉぉおおおお!?」
「キャハハハハッ!だからその間抜け面やめてよぉ~、笑っちゃうからぁ~」
「何をしたッ!?あの炎は貴様の様な子供に消せるような代物ではない!あらゆる魔法を焼き払い、魂さえも焼き尽くす地獄の業火だ!お前に消せる訳が無い!一体どうやって!?」
クニアは、自慢の必殺の一撃をよりもよって自分より下だと思っていた女に難なく消されてしまった事で大きく動揺してしまう。
自分を最強だと信じて今日まで生きてきたクニアは、時を止める魔法といい地獄の業火といい、無効化されたのには何か特別なカラクリがあると信じて、自分のプライドを守る様に、動揺を掻き消すように、激昂しながら捲し立てた。
「え?そんなの弱すぎるから……あっ!『ちょーと扇いだらバースデーケーキの蝋燭みたいに消えたよ』」
ディザベルは何かを思い出したかのように、まるで誰かの言葉を借りたかのように、クニアの質問に答えた。
「それで~?次はどうする?」
「…………何だ……何なんだ、お前はッ!?」
クニアは自分の理外の存在であるディザベルを前に、自分でも気づかない内に後退ってしまう。
「うーん……神様?」
「はぁっ!?」
「だってそうでしょ?おじさんが世界の王様なら、おじさんより強い私は、もう神様になるしかないよね?」
「───ふざけるなァァァ!!」
自分のプライドが酷く傷つけられたと強く感じたクニアは、火炎や雷撃、激流など様々な属性の魔法を立て続けに繰り出してディザベルを殺そうとする。
アイツさえいなくなれば、あのイレギュラーさえ存在しなければ、俺が最強の大魔法使いであると、証明出来ると。だが───……
「効きませ~~~ん!」
たった1本の蒼の白金の剣によって、クニアの放った全ての魔法が掻き消された。
「な、あ───……」
あまりの出来事に、そして力の差に、クニアは愕然とする。
「ちょっと弱すぎぃ~、こんなに弱いのに王様になった気分だったなんて笑っちゃうんだけど~」
ディザベルは笑いながら、作り出した白金の剣を消滅させる。
「こんなのでアリアステルちゃんのお父さんを、アリアステルちゃんを、ルルの友達をメチャクチャにしようとしたなんて───本当にムカつく」
「───ッ!?」
一瞬、ほんの一瞬だけ、ディザベルの纏っていた空気が背筋も凍るような冷徹なものに変わった。
そして、それと同時に───何かが壊れる音がした。
「お、お前は……!お前は一体何なんだ!?」
「……はぁ……その質問もう何度目?いい加減面倒だし、もう飽きちゃった」
「飽き……た……?」
「無茶苦茶にしてくれたお礼に、貴方のプライドをズタズタに引き裂いてやろうと思ってやってたんだけど、それも大体達成出来たし……もう終わりにしよっ」
……そう言って、あの女は俺の魔法を『時を止める魔法』を何らかの方法で、まるでガラスを割るかの様に粉々に破壊した。
「じゃあね~、さようなら~」
ディザベルのクニアに向けた別れの言葉と共に止まっていた時が再び動き出し、時の停止前に放っていたディザベルの大量の白金の剣がクニアの身体中に突き刺さった。
……何が起きた?一体何をされた?何故俺の魔法は悉く奴に通用しない?何故止まった時の中で平然としていられる?何で時が動き出したんだ?
───何なんだ、あの眼は?
死の間際になって大量の疑問が洪水の様に押し寄せる。
その答えをクニアは思考を巡らせて得ようとするが、死んでもその答えをクニアが得ることは無かった。




