クニア・ロディ・ノォス
「アハハハハ!!やった!成功だ!やはり俺の理論に間違いは無かった!!」
───クニア・ロディ・ノォス
今から500年前に生まれた彼は、生まれながらにして魔法の天才だった。
彼の扱う魔法の技術は、威力・精度・発動までの時間の短さなど、どれを取っても卓越していた。
人からも国からも認められる魔法の天才───大魔法使いになるべくして生まれた存在だと思われていた。
……だが彼には人より決定的に足りない物があった。
「な、何故だ!何故俺には魔力が無いんだッ!?」
彼に足りない物……それは保有する魔力量だった。
仮に、一般の人間が保有する魔力量が100、魔法使いは200だとすると、クニアの魔力量は50にも満たなかった。
自分より技術力が下で、内心見下していた魔法使い共が上級魔法を2~3回使えるのに対し、クニアは発動すら出来なかった。
この事が発覚すると、クニアを見る人々の目は変わり『将来を期待される魔法使い』から『実戦では役に立たない、教員向けの人間』に変わってしまった。
……だが変わったのは、クニアも同じだった。
「───魔力ッ!魔力だ!!魔力さえあれば!俺は最強の魔法使いなんだッッッ!!」
クニアは自分を見下した周囲の人間を見返す為に、そして自分が最強となる為に『他者から魔力を吸収する魔法』をゼロから創り上げた。
「簡単な話だ。自分に魔力が無いのなら持っている奴から奪えばいい!」
この吸収の魔法を作った事でクニアは変わった。
魔力吸収を得た事で人の数だけ強くなれるクニアは、自身の少ない魔力量と言う弱点を克服し、魔法使い達のトップに躍り出る。
それだけに留まらず、クニアは魔力吸収の魔法を改良し続け、遂には魔力と同時に生命力も吸収出来る様になり、更に短かった効果範囲も拡大していった。
そして元々優秀だった魔法技術と頭脳で、常人では技量と魔力不足で到底扱えないような強力無比な魔法を新たに創っていった。
当然、その中の1つに『自分以外の時を止める魔法』もあり、他にも自然の法則を支配出来るような魔法を数多く存在していた。
……しかし、この神の領域にまで到達したクニアの魔法の数々は、1度も使われる事は無かった。
増大したクニアの力は、同時に彼の心をより傲慢に、苛烈に歪めてしまっていた。
その結果、クニアは更なる力を求め、吸収の魔法で人々を犠牲にするクニアを国が許すはずも無く、彼は大勢の冒険者、魔法使い達によってキューブ型の魔道具に精神だけを封印されてしまった。
───こうしてクニア・ロディ・ノォスは、500年、あのキューブの中で自分を封印した人間を恨み続けながら復活の機会を待ち続け……マルテミにてアリアステル達を利用し、今、復活を遂げたのだった。
「……しかし、この時を止める魔法は魔力の消費が激しいな。持って10分といった所か?」
クニアは時の止まった世界で、初めて使った魔法の分析を冷静にしていた。
「この身体を維持するのに魔力がいる。無駄に消費は出来ない……となれば……」
クニアは悠々と歩き、ディザベルに近づく。
「身体が必要だな」
クニアは、ほくそ笑みながらディザベルの身体を吟味する。
この女の魔力量はハッキリ言って規格外だ。この女があの頃の俺の前に居たなら、俺は確実に嫉妬で狂っていただろう。
実際、吸収の魔法を手に入れた今でも、この女に俺は嫉妬を感じている。
「───しかし、これからは俺の身体だ」
実質無尽蔵の魔力を得た俺ではあるが、それでも保有魔力量はあるに越した事は無い。
極論、生物が存在しない場所では俺は元の無力な人間に戻ってしまうのだからな。
「もしいるのであれば俺は神に感謝してもいい。俺の為に、こんな優秀な身体を用意してくれたのだからな!」
先程から笑いが止まらない、自分に都合が良すぎて顔がにやけてしまう。
まあ500年も封印されていたんだ、これくらいの幸運は寧ろ当然か。
「これで俺は魔法使いとして更に飛躍する事が出来る……!」
クニア・ロディ・ノォスは、欲望と共にディザベルの胸元に手を伸ばす。
この女の身体を手に入れたら、まずは不老不死の研究でもするか。
折角手に入れた優秀な身体をすぐに腐らせてしまうのは、あまりにも惜しい。
なに、世界の時間だって止められたんだ。不老不死などすぐに───
「ちょっと、触んないでよ」
「───は?」
一瞬、頭が真っ白になる。
時の止まった世界で声が聞こえる……だと?
「なんで声が……誰の声が……?」
「いや、目の前にいるじゃん」
「───は?」
クニア・ロディ・ノォスは、呆けた顔で目の前にいるという声の主を見る。
そこにいるのは俺が時を止めたせいで石像の様に動かなくなった、ディザベルだけだ。
「やあ!間抜け面の幼女趣味のおじさんっ!」
ディザベルがヘラヘラと笑っていた。
「なん……で……だ……!?」
「時間を止めたくらいで私が止まると思ったぁ?」
───白銀の瞳を蒼く輝かせながら。




