勇者パーティーVSノワール•スルト
私の体は真っ赤に燃え、赤くなった髪が炎のように揺らめく。
勇者「もう、お前なんか怖くねぇぞ!」
戦士「今度こそ、テメーをぶっ殺してやる!」
うるさい敵の口上にスルトが私の口を借りて勇者たちに語りかけた。
ノワール「ほう?これはどうだ。」
身体からまばゆい閃光が放たれる!
炎の盾を構えた勇者を先頭に防御態勢を取る。
僧侶「ウォーターベール!」
魔法使い「バブルウォール!」
勇者一行を水のベールと泡が包む。
カッ
キュドーン!
全方位の熱線、スルトの最大出力が屋敷を瞬時に吹き飛ばす。
辺りはクレーターのように消し飛んだのに、勇者一行は無事だった。
勇者「ヒュー!あっぶねぇ!」
僧侶「防御魔法が!?」
戦士「装備を新調してなきゃ今ので死んでたぞ!」
魔法使い「ハイドロキャノン!」
高速で放たれたウォータージェットは私には効かなかった。身体に触れた途端、水が体の高熱で気体になってしまう。少し押される程度だ。
ノワール「アグニ。」
魔法使い「うわ、来た!」
勇者「!」
プラズマ化した熱線を勇者の炎の盾が防ぐ。
ノワール「お?」
勇者「よし!防げたぜ!」
水の両手剣を持った戦士がその隙に突貫してくる。
戦士「ウォータースラッシュ!」
ジュゥゥゥゥ!
ノワール「なんだ?!」
受けた左腕が光を失う。
魔法使い「ハイドロキャノン!」
斜め後ろに飛び退いた戦士のいた所にさっきのウォータージェットが飛んできて私の左腕を肩口から吹き飛ばした!
戦士「効いた!?」
魔法使い「当たりじゃ!」
スルト「見事!」
アヌビス「感心してる場合か?!」
敵の連携に感心するスルトにアヌビスが噛みつく。脳裏が騒がしいが今はそれどころではない。
ノワール『なんてことなの!』
痛みはないが私は体が光を失えばハイドロキャノンが有効になることに焦った。
ノワール「アメミット!」
戦士の鎧に魔法の爪が心臓めがけて突き刺さるが、
ジュ!
マグマの鎧がそれを無効化する。
アヌビス「何!」
戦士「へっ効かねーぜ!」
アヌビス「これならどうだ!」
ノワール「タールの沼!」
勇者達の足元にタールの沼が出現し、スルトの熱で瞬時に燃え上がる。
しかし、
焦ってた分、沼は浅かったのか勇者達はすぐに這い上がって出てきた。
勇者「へへへ、お前の炎なんて効かねーって。」
僧侶「こっちの番よ!風神の加護を!」
僧侶が持っていた杖を天に掲げると勇者が人とは思えない速さで私との間合いを詰めてきた。
ノワール「!」
残った腕で咄嗟に身構える。
スパン!
右腕がきれいに切断された。
ノワール「嘘でしょ!?」
勇者「もういっちょ!」
ビジジ!
後ろに避けるも着ていたドレスのスカートがきれいに割ける。
勇者「雷神剣。知ってるだろ?」
魔法使い「やった!アイスブランドだけじゃ不安だから、覚えさせたかいがあったな!」
僧侶「今度こそ、私たちの勝ちね!」
戦士「勇者!早いとこやっちまえ!」
両の腕をなくして私は膝をついた。負けを感じた瞬間、身体が光るのをやめる。
ノワール『くっそー!やられる!これがハードモードなの?!』
またコンティニュー?
勇者の振り上げた雷を纏う剣が怖くて私は目をきつく瞑った。
いやだ、死にたくない。
その時、僧侶が何の前触れもなくジュワッと音を立てて溶けて消えた。
ノワール「?!」
魔法使い「え?!」
勇者も異変に気がついて、振り向いた。
戦士の背後に立つ大きな太い両足。
勇者「せー!」
ガシッ
大男の戦士は巨人の右手に鷲掴みにされ軽々と宙に浮いた。
戦士「くっそ!離せ!」
ティアマト「人間。まずそう。溶かすのがいい。」
テュポーン「ち、小さい。」
巨人達が物珍しそうに戦士を眺める。テュポーンはおもむろに戦士の頭を左手で摘んだ。
戦士「ひっ」
プチ
溢れた脳髄がボトボトと腰を抜かした魔法使いの頭上に落ちる。
魔法使い「あわわわわ……」
その魔法使いも大きな蛇にまたたくまに巻き付かれる。
ヨルムンガンド「シュー」
魔法使い「こっ呼吸がっ……!」『なんという、極上のしまり!』
ミシミシ
顔を真っ赤にした老骨が蛇の万力のような締め付けに音を立てる。
勇者「クソ!爺さん!」
仲間に駆け寄る勇者に多頭の蛇が立ちふさがる。
勇者「クソ!クソ!なんなんだお前ら!急にエンカウントしやがって!」
勇者の攻撃でラドンの首は確かに跳ね飛ばされるが、すぐに違う首が噛みつきにかかってきて、その間に、切断されたところがみるみる再生する。
勇者「きりがねぇ!?」
マリアッチ「お前も同じようにしてやる!」
私の背後から魔獣の飼い主の声がする。
フワッ
一刃の風が吹くと勇者の両腕が肩口から綺麗に体から切り離される。
勇者「おぎゃー!」
両膝をつく勇者の周りに巨大な魔獣たちが取り囲む。
ヨルムンガンド「……」
ボキボキボキ……
血を勢いよく吹いた魔法使いの顔は何故か恍惚としていた。
あーん
ヨルムンガンドが口を大きく開ける。
マリアッチ「そんなの食べちゃお腹壊しますよ?ヨルムンガンド。やめなさい。」
ヨルムンガンド「!はーい。」
ホムンクルス「無事ですか!?ノワール様!」
ノワール「ホムちゃん、私の腕取ってきて?」
ホムンクルス「え?!は、はい!」
じゅ!
ノワール「やっぱりね。」
くっついて普通に動かせる左腕を見て私は欠損があっても腕くらいなら元に戻ると確信した。
落ちていた右腕を取り、立ち上がる。
ノワール「ふぅ。死ぬかと思ったわ。」
くっついた右手をグーパーさせながら勇者を取り囲んだ魔獣とマリアッチのところに行く。
マリアッチ「この人、どうします?」
ノワール「どうしよっか?」
ホムンクルス「復活して、また来ますよ?」
ノワール「そうなのよねぇ?」
勇者「ちくしょう!覚えてやがれ?!絶対仕返ししてやる!」
マリアッチ「(ピコーン)殺したら元通りになるんですよね?」
ノワール「そうね?」
マリアッチ「じゃぁ、殺さなきゃいいんじゃないですか?」
勇者「え?!」
ホムンクルス「なるほどー。」
ノワール「なんかあるの?」
マリアッチ「ノワール様、コイツの喉を焼いてください。」
私が勇者の喉を掴むと勇者は口から煙を吐いた。
勇者「こ、げ?でっ……い!」
ホムンクルス「これで魔法のたぐいは唱えられませんね。」
マリアッチ「それじゃコイツは私が持って帰ります。」
ノワール「?」
マリアッチ「培養液で一生、飼うんです。」
ノワール「あぁー、なるほど!」
ホムンクルス「それなら死なないですね!」
マリアッチが素早く猿ぐつわを噛ませて、勇者が舌を噛んで自殺するのを防いだ。
自分の行く末に絶望し涙を流す勇者を立たせマリアッチは魔獣たちとともに消えた。
ノワール「あの子、いつの間に。」
ホムンクルス「私もアレで来ました。瞬間移動とか?やるとお腹が減るらしいです。」
ノワール『だから、今まで使わなかったのね……』
その後、吹き飛んだ屋敷を新しく立て直すまで私は新しくできた、まだ開業してない宿屋にホムンクルスと共に身を寄せた。
ホムンクルス「領民館でも良かったのでは?」
ノワール「あそこは古いから建て替えが必要なの。それに、人が多いほうがアナタが急に産気づいたときにすぐ対処できるでしょ?私は出産なんて手伝えないもの。」
ベッドに腰掛けているホムンクルスの前に跪き、日々、大きくなっていくホムンクルスのお腹に耳を当てる。
「パパは?」
お腹から聞こえる幻聴に応える。
ノワール『さぁ?ヴァイスはどうしてるのかしらね。』
バン!
ヴァイス「ノワール!」
ホムンクルス「アナタ!」
2人は互いに駆け寄って抱き合う。
あ、ホムンクルスのことをヴァイスは私の名前で呼んでるのか。私じゃなかったけど2人が仲睦まじいのはいいことだ。
ノワール「ヴァイス、どうしたのよ?」
ヴァイス「どうしたって?!屋敷が吹き飛んだって聞いたから慌てて帰ってきたんだ!」
そしたら、私達は無事で宿屋に宿泊していると聞いたらしい。
ヴァイス「ノワールは身重なんだ。無茶させないでよ、ノワール!」
聞いてるコッチが混乱する。
私なのか?ホムンクルスのことなのか?ヴァイスの中では区別がついてるのだろうか?
ノワール「ま、ゆっくりしてくんでしょ?ちょうどいいわ、ホムちゃんをお願い。」
ヴァイス「どこ行くの?ノワール。」
ノワール「マリアッチのトコよ。定期視察。」
私は扉を開けて外に出た。




