聖女ノワール
夕方頃、無人のドラゴン精製施設にワイバーン達を繋いで屋敷に戻ると、私が誘拐されたと言って騒然としていた。
玄関で部下を率いてこれから魔女狩りに行くところのアルゲン達にぶつかった。
アルゲン「ノワール様!ご無事で!?」
後ろでアルゲン達を見送ってたヴァイス達も私に駆け寄ってきた。
ヴァイス「ノワール!心配したよ!」
ホムンクルス「ノワール様!」
ノワール「私はなんともないわ。それより……」
ノワール誘拐の容疑でマリアッチがロビーの柱に縛り付けられている。
マリアッチ「ほら見なさい!戻ってきたじゃないですか!シンフィールド先輩はノワール様を襲ったりしません!」
ノワール「とりあえず、その子を離しなさいよ。」
魔女を脅威と認識していたルーカーとイスキアは互いに顔を見合わせた。
アルゲン「何があったか、お聞かせください。」
普段、食卓に使っている長いテーブルに着席して私は事の経緯を説明した。
私の隣にマリアッチ、マリアッチの反対側に、ヴァイスと並んでホムンクルスが着席している。
アルゲン以下、忍者のルーカーとイスキアは立って後ろに控えている。
アルゲン「なるほど、ドラゴンですか。」
イスキア「勇者一行はどうなるんでしょ?」
ルーカー「また復活するんじゃないか?」
ヴァイス「それより、ゴブリンのところの結界の事だよ!あれ確かシンフィールドさんって魔女が維持してたんでしょ?どうするのさ!」
ホムンクルス「すぐには解除にはならないと思いますが。いずれは消えてなくなるでしょうね。」
アルゲン「まずいな。」
ルーカー「貴重なマンパワーなんですが。ゴブリン。」
その中にあってマリアッチが手を挙げる。
マリアッチ「私やります!」
ノワール「できるようになったの?」
マリアッチ「はい!ノワール様が魔獣の世話を手伝ってくれてたから、空いた時間で結界の勉強をしてました!」
ノワール「偉いわ!マリアッチ!」
私はマリアッチに抱きついた。アヌビスだった時期も無駄ではなかった。彼女の成長に私は大いに喜んだ。
マリアッチ「うへへへ、ご、ご褒美……。」
ノワール「ふたりっきりになったときにね!」
チュッ
良からぬことを想像して鼻の下の伸びたヴァイスの尻をホムンクルスがつねったのか、ヴァイスが変な声を上げて飛び上がる。
それから数日後
私とヴァイスは首都の繁華街にある商業施設の一フロアを貸し切って金融業と宿屋の経営コンサルタントの面接を行った。
その面接が始まる前、固くなってるヴァイスの緊張をほぐそうと私は意地悪な質問をした。
ノワール「ねえ、ヴァイス、私はどんな顔してるの?」
ヴァイス「何の話?」
ノワール「エ○チの時。」
ボンッ!
真っ赤になったヴァイスは答えに窮してアウアウ言っている。
あー、おかしい!
まぁ、気にならなくもないから本人に聞いてみよう。
ノワール「時間よ。」
ヴァイス「さ、最初の方どうぞ!」
別の意味で固くなったヴァイスの声は上ずっていた。
「失礼します!」
部屋にリクルート姿の女性が入ってくる。金髪のショートカットの髪が動ける素敵な女性と印象付けている。
まずはテンプレ通りの最初の挨拶、私は席に着くよう促した。
ノワール「トレイスカさんは経営コンサルタント志望ね、一応、聞くけど、新卒?」
セレナ「はい。」
ヴァイス「よく来てくれたね。資格もあるのに今まで就活はみんな不採用だったの?」
セレナ「はい。今でも、不採用理由は分かりません。」
ヴァイス『あー、コンサルにトレイスカ(=13)かぁ、不採用にしてる理由がなんとなくわかるなぁ。』(ヒソヒソ)
履歴書に目を通してヴァイスはペンの端で頭を掻いている。
ノワール『敬虔な正教徒じゃあるまいし。私はそんなの気にしないわ。』「勤務地はドッグローズかゲルブムントになると思うけど大丈夫?」
セレナ「といいますと?」
ヴァイス「首都ほどインフラは整ってないし、田舎だから遊ぶとこがないんだ。」
セレナ「私、趣味が昆虫採集なんで望む所です。」
あ、私と気が合いそう。採用。
ヴァイス「今日は遠路はるばる、ありがとうございました。」
ノワール「採用通知は後日送付します。」
セレナ「こちらこそ!よろしくお願いします!ありがとうございました!」
セレナ•トレイスカ女史が退室する。
ヴァイス「次の方ー!」
次はオドオドした男性が入ってきた。テンプレ挨拶もぎこちない。
ノワール『あら?この子も新卒さんじゃない?』
ジョン「ジョ、ジョン•マクシムです!よろしくお願いします!」
めっちゃ、目が泳いでるー。大丈夫かしら。
ヴァイス「え、えーと、オクシドの西区出身。君はもしかして、貴族の子かな?」
ジョン「は、はい!えー、家は男爵家になります!」
ノワール「ふーん。」
貴族と知った途端、私は斜に構えた。
父が留守で女だけのオルクス家は、財産目当ての貴族に昔から、たかられることが多かったから。いつものクセで警戒してるのだ。
ヴァイス『ちょっと!ノワール、貴族が嫌いなのは、わかるけどその態度は止めようよ!』「マクシム卿は金融業志望なんだ?」
ジョン「はい!会計士のし、しし、資格を在学中に取りました!」
ノワール「ちゃんと、目を見なさい。」
ヴァイス『うわー!イライラしだしたよ!けど、わかるなぁ、人が苦手なんだ、この子も。』
ジョン「す、すみません!人が怖くて!特に初対面だと上がってしまって!」
ジョン•マクシムは私のどすの利いた目線に恐れをなしたのか今にも逃げ出しそうだ。
ヴァイス「勤務地は首都だから安心していいよ。」
ノワール「教育係もつける予定だから、年上への接し方とかはちゃんとしなさいよ。」
ヴァイス『アレ?ノワール、雇用する気なの?』
ノワール『この手のキャラは試用しないと分からないでしょ?』
後のは、最近、税収が急上昇してる領地の領主だからとゴマをすってくる中途採用狙いの奴や、
公爵家のつてを頼った縁故採用狙いのボンボンばかりで、
めんどくさくなった私は圧迫面接して、残りは追い返した。
コレで、ソリタニアの金融業界に正式に参入していけるし、リーリアの宿も何とかなるはず。
サメンフントの事務所
首都から帰るとすぐにサメンフントのところに行き、風呂に沈んだ子たちを検品する。
ノワール『あ、スルト、アヌビス起きて?』
二人の神を通常モードで起動する。戦闘モードよりかは負荷は小さい。
ノワール『二人のどちらかでマインドコントロールとかできる?』
スルト「ロボトミーなら我だが、マインドコントロールか。」
アヌビス「それなら私の出番だ。」
「おげ?!」
その場にいた娘達全員が立ったまま白目をむいて痙攣しだす。あるものは失禁している。
その光景を目の当たりにした、サメンフントは絶句して歯をカチカチならしている。
ノワール「お前たちはゴブリンの所にやる。彼らの言うことをよく聞いて、子作り、子育てに励め。」
「い、いいいやぁぁぁぁ!」
アヌビス「無理だろ?」
ノワール『上書きできない?』
アヌビス「簡易霊か、やってみよう。」
「うガガガが……」
ゴロン。
娘達は石像のように倒れ、白目をむいて涙を流しながら泡を吹いている。
サメンフント『もう、やってることが人間じゃねぇ!』
ノワール「……お前もこうなりたいか?」
サメンフントは激しく首を横に振った。
ノワール「よし。仕事に集中しろ。」
サメンフント「は、はい!ノワール様!」
ゴブリンの巣に新しい腹を持っていく。
そうなるとロボトミーにした娘達がお役御免になる。
ノワール「魔獣に処分させるのはさすがに酷だわね。」
あ、そうだ。
私は介護施設を立ち上げることにした。
精神に異常をきたしたものや、身体障害者などを受け入れて。
その中にはロボトミーの娘達も居て、皆に、健やかな余生を送ってもらうことにした。
ヴァイス「だからって、施設運営費に公金や寄付にすがるの?」
ノワール「いけない?」
ヴァイス「まぁ、不足分は密造した諸々の売上を充てるんだからいいのか?」『僕も、だいぶ、倫理観が麻痺してきてるなー。』
これから新聞の取材があるということで、大きな鏡のあるヴァイスの部屋で私は服装を整えていた。
いつもの漆黒のドレスではなく写真用にピンクの春物のドレスを着ている。
ノワール『いつものじゃないから、着付けがめんどう。時間がかかるわー。』
メイド達に、コルセットを緩めに締めてもらう。
コレで施設にこの領地にいい人振りたい王族、貴族、
庶民の点数を稼ぎたい大臣どもから多額の寄付が集まる。
税収が急上昇してるからって周りの奴らも攻めにくくなる。
ノワール『人件費については魔女に頼もう。きっと、何かいいアイデアが出てくるに違いない。』
こうして、私の顔は一躍、ソリタニアに知れ渡った。
弱者を救済する聖女として。
まぁ、裏ではとんでもないことをしてるんだが?




