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シサツ

そう言えば、と執事のアルゲンシュタインは唐突に声を上げた。私とヴァイスは昼食のステーキを切り分けるのをやめ、次の言葉を待った。


ノワール「何なの?アルゲン?」


おかっぱで首筋が気になって部屋の中でもマフラーをしている私はそれを首にかけ直しながら聞いた。


アルゲン「いえ、明日、中央から大臣たちが役人を連れて街道の設置場所を視察に来られるんでした。」


ノワール「で?」


おっと、“黙って待つ”、だったわね。私は切り取った肉切れを放り込んでお口にチャックをした。


ヴァイス「街道敷設場所って――」


ゴブリンの巣の近く、鉱山の近く……。

あ、ヤバイんじゃない?


アルゲン「下手に動かれるとバレますね。」


ヴァイス「それもだけど、今ある関所を通さずに森を切り開くメリット、デメリットの説明ができないとまずいんじゃない?」


素直に、

ゴブリン達の食料供給、

密造した麻薬と武器の密輸に使いたいです!

とは言えないわよねぇ……


ヴァイス「公金を注入するんだし、そりゃ、見学には来るよね。」


それともう一つとアルゲンは続ける。

その時点で私はうんざりして目をつむり眉を上げて聞いていたと思う。


アルゲン「しかも、何名かはここに宿泊される予定です。」


ノワール「えー、屋敷の中を汚いオッサン共にウロウロされたくないんだけど。」


ヴァイス「領民館は?」『キタナイ……』


アルゲン「狭すぎると大臣たちが嫌がっているとか。」『キタナイのかぁ……』


ノワール「ゴブリンの巣や鉱山とかは後でマリアッチに相談するとして。

まずはメリット、デメリットを考えましょう。紙とペンを持ってきて?ヴァイスが書くから。」


ヴァイス「えぇ?!僕?!」


アルゲン「かしこまりました。」




視察につき

 旧道を利用しないで街道を新設する

  ●メリット






  ●デメリット


ヴァイス(カキカキ)

 

私とアルゲンはヴァイスの席の左右から紙を覗き込んだ。

ヴァイスは何かいいたそうに、私の顔をジト目で見る。


ノワール「アナタは私の大切な頭脳。期待してるわ。」


私がウィンクしてみせると、

ドキッ

としたのかヴァイスは顔を赤らめてやる気を出している。

かわいい、そしてチョロい。


ヴァイス「メリットかぁ、うーん。」


アルゲン「ダシマ領の町の中心部に直接アクセスできるとかどうでしょう?」


ヴァイス「今ある旧道は結構、遠回りっちゃ、遠回りか。なるほど、それ採用!」


ヴァイスはメリットの欄にその内容を書きたした。


ヴァイス「デメリットはゲルブムントの端になるってとこかなぁ?」


アルゲン「いえ、ソレもメリットでは?」


ノワール「新しく宿屋もギルドもそれに沿って作るしね?」


ヴァイス「あー、そっか。今ある家を取り壊す手間も立ちのき料とかも発生しないもんね。」


私がそうそう、と言ってる間にもメリット欄は埋まっていく。


アルゲン「切り出した木も建築に使いますし。」


ノワール「デメリットなんてウチらの悪行がバレるかも?くらいじゃない?」


ヴァイス『自分かやってること、悪行って自覚あるんだ……』




私は大臣たちが私たちの屋敷に泊まる事を隠し部屋のマリアッチに言いに行った。


マリアッチ「そうですか。この子たちどうします?」


部屋には魔導生物達がひしめき合っていてマリアッチやその雇い主の私に体や額をこすりつけてきていた。


ノワール『今回のはめっちゃ、なついてる……』


魔獣たちのうめきや鳴き声が外に漏れるとも限らないので、一時的に幽世かくりよに封じてもらうようにした。


ノワール「あ、それと。ゴブリンの巣や麻薬畑、鉱山の秘匿化を頼める?」


マリアッチ「わたしですか?!やったことないんですよね!鉱山の方はへパ•ホムンクルスでいけると思いますけど。」


ふーん、ホムンクルスは魔女と遜色ないのか。って、感心している場合ではない。


ノワール「え!できないの?!」


マリアッチ「アハハ、今まで普通に賃貸で一人暮らしていたもので……」


どうしよう……


ノワール「そうだ!ドルガならやってくれるかもしれない!」


マリアッチ「ドルガ先輩とお友達なんですか?すごいなぁ!」


ドルガは多分、くだんの地下施設とやらの発掘に行ってるはず。

その場所はゴブリンの巣のさらに山奥に行ったところだ。


私は帰りは深夜になることを承知で山の中に入っていった。




一応、護身用でこの前もらったレイピアは持ってきたけど……


ノワール「やっぱり男装に着替えるべきだったかな?」


…………独り言、もうクリオは居ない。今は遠いお空の星のどれか、なのだろう。


その時、脳裏からかすかな鈴の音がした。


(チリーン)


たまにある幻聴に私は立ち止まって精神を集中させた。


ノワール『そうだ、遭難防止にゴブリン達に山に入ったって言っておこう。』


私は木々に引っかかり所々ほつれ始めたスカートを持ち上げるとゴブリンの巣に向かった。




わざと鳴子を鳴らして、見つかる。ゴブリン達は私の顔を見て口々に、


「神が来た。」


と漏らす。

今はクリオは居ないが、なめられないようにその事はゴブリン達には伏せている。


ノワール「ウホウホ!」


彼らの言語を真似して挨拶する。外で斥候に出ていた、まだ若いであろう個体は面食らってキョトンとしている。


ノワール『ちゃんと通じたかな?』




長老「我ら、アナタ、歓迎。る。」


穴の中、ロボトミーにしたお腹の大きい娘たちは以前よりふくよかになっていた。黙ってニコニコと微笑みながら我が子に乳をやっている。


ノワール『コイツラ、ちゃんと母体を丁重に扱うのよねぇ。

言葉が通じないし、人はゴブリンのところには嫁には来ないから誘拐するしかないんだろうけど。』


リ○カンもしないし、生殖は選ばれた、優れた個体しかできない。彼らには彼らの文化、秩序があるのだ。


ノワール「食料増やしたけど足りてる?」


長老は首を縦に振った。


あ、そうだ。


ノワール「へパ•ホムンクルスに斧を数本注文するから、山の奥に向かって畑を大きくなさいよ。」


長老「?あの、食べる、ない、葉、植える?」


ノワール「いいえ?あなたたちの食料用よ。」


それを聞いた長老とその後ろに控えていたゴブリン達も顔を見合わせて喜んでいる。




さらに山奥に分け入っていく。


日は西の山にあって、見上げる空は赤い、そして、東の空から暗い青い空が近づいていた。


ノワール『そ、そろそろ発掘現場に出るはずだけど。』(ゼーハーゼーハー……)


その時、頭に魔女の声がする。


ドルガ「あ、黒いの。どうしたんだよ?」


声と同時に目の前の森がサーッと消えて、木が切り倒された広い開けた場所になった。


目の前には腕を組んでる黄色い瞳の魔女と、見たこともない金属パーツを体に組み込んだ人間達が露天掘りに大きな穴を掘っていた。


ノワール『こ、コレが魔女の巣の結界。アルゲンの幻術とは、また違うのね?』


ドルガは私の思考を読んだかのように続けた。


ドルガ「術と魔女の固有スキルは発動形態が違う。同じチャクラシステムを回すんだけどね。」


ポンポコポン!


ドルガはお腹を右手で叩いて見せた。


固有スキル?チャクラシステム?訳が分からない。

生まれてこの方、触れたことのない専門用語だ。


術は辛うじて忍者たちの口から聞いたことがあるが?


ドルガ「私は講師じゃないから、詳しく知りたいなら、黒いのも魔女学校に行けばいい。推薦状は書いてやるぞ?」


非常に知的好奇心を刺激される内容ではあるが、今はそれどころではない。


ノワール「ドルガ、その固有スキルってのをゴブリンのところで使ってくれない?」


ドルガ「えー?」


ドルガは両の目で私を見据えた。


ノワール「うぁ!?」


すぐさま頭を手でかき回されるような感覚を覚える。痛くはないが、気持ちが悪い。


ドルガ「あー、視察ね。そりゃまずい。わかった、別料金になるが、請け負ってやるよ。」


ノワール「後払いでよろしく!」


ドルガ「そういうの、私が決めるんじゃないの?まぁ、いいけど。」


ドルルルル……


ドルガの合図で何かの装置が揺れ始め、変な機材に光が点灯する。この人だけ私たちとは別の時間に居るようだ。


ドルガ「神代の技術だ。人間には使えないさ。」




暗い山道をドルガにもらったカイチュウデントウ(?)なる装置で照らして進む。


そこへ、横から何やら大きな獣が大きな鼻息をさせる。


ノワール「クマ?!」


咄嗟にレイピアを抜く。

通訳のブレスレットを外している余裕はなさそうだ。


光りに照らされた、巨体は立ち上がって、コチラに狙いを定めた。


ブオ!


クマはおおきく振りかぶった前足を振り下ろす。


ノワール「っ!」


爪を防いだレイピアをクマの腕の重みに耐えかねて落としてしまった。


突進。


私は後ろの木に激突した。


ノワール『ま、ずい!意識が!?』


朦朧とする視界の中、小さな緑色の集団がクマの右側面に現れた。


「神を守れ!」


ゴブリン達は勇敢にクマに立ち向かう。手傷を負ったクマは逃げていった。


その後の記憶はない。



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