ゴブリンの労働環境改善ストライキ
辺境領イスラの直近の課題
●建屋の不足
宿屋、冒険者ギルド
武器屋、防具屋
道具屋
●ゴブリンについて
人口の増加(食料、治安、教育)
通訳の不在
●麻薬畑、鉱山秘匿化
屋敷の会議室に呼ばれてヴァイスの述べる議題を聞く。
なんとも、耳の痛い話ばかりで私は頬杖をついてうんざり気味に聞いていた。
ヴァイス「ノワール、ちゃんと聞いてよー。」
ノワール「私の弱体化も議題にしてよ、クリオがいなくなって、ゴブリンの通訳もそうだけど、他のもできなくなってるんだから。」
アルゲン「あ、盲点でした。」
何?その、私は禍津神がいなくても強いだろ的なニュアンスは……
アルゲンの横に並んで座る忍者たちもクスクス笑っている。
こういう話に参加するのは初めてなマリアッチは興奮気味に話を聞いていた。
フンフンと鼻息が荒い。
マリアッチ「だいたい、他の魔女に頼めば行けそうな問題点ですね。」
ヴァイス「たとえば?」
マリアッチ「通訳は魔法道具、秘匿化についても魔女の巣の結界を使います。」
ノワール『マリアッチ、アナタがやるわけじゃないのね……』
ルーカー「あぁ、実家の近くにもあったなぁ。」
イスキア「言わいる、迷いの森ってやつですね。」
アルゲン「なるほど、建屋の不足についてはどうでしょう?」
マリアッチ「魔女は肉体労働はちょっと無理ですね。一人ボディビルドが趣味の人もいますけど。」
ノワール『なにそれ?逆に見たいわ、その魔女。』
私はみんなの話を黙って聞いていた。うろ覚えだけど、神の声に“黙って待つ”っていうのがあった気がしたから。
ヴァイス「じゃぁ、そこは土建屋辺りに頼もうか。」
ノワール「木を切るならついでに道も作っちゃえば?」
アルゲン「どこへ続く道でしょう?」
ノワール「そりゃ、エンハンブルクでしょ?街道建設の話もあるんだし。
入札まだだし、どこに通すかも決まってないんだから。最大利用できるようにしましょうよ。」
ルーカー「まぁ、闇雲に伐採して、ゴブリンの巣に当たられても困りますしね。」
アルゲン「採取場所を指定するのですか?」
イスキア「人を増やすんだから、長屋やその人たち用の商業施設も必要なのか。」
ヴァイス「あ、そうだね。」
ノワール「今の資金ぶりじゃ、無理っぽくない?」
ヴァイス「そこは僕に任せてよ!」
あ、そう言えば、ヴァイスは公爵家の子だった。
それから私は魔女達の集会には積極的に参加しに行った。
マリアッチ「今日も行かれるんですか?私より、参加率高いですよ!ノワール様!」
ノワール「社交の場でしょ?」
出される紅茶には砂糖が少ないからと、バッグには角砂糖を詰めた小瓶を持っていく。
サトウ⇒殺到
いい出会いが殺到しますように、という呪詛の類でもある。
「クローサーのやつ今日も来てねーな?」
「ベタベタされないから平和じゃないか?」
サトウ⇒殺刀
にもなるのか?そこら辺の詳しいことは私もよく分からない。
私は集会場の奥のテーブル席で魔女たちの談笑を眺めている。みんなきれいで整った顔をしている、やや目の下のクマが気になるが。
ノワール『それだけでも来る価値がここにはある。』
目の保養。
「私にも砂糖をくれ。」
たまに、テーブルに置いた角砂糖の瓶につられてフラっと魔女が私の席に来る。そして、空いた席に腰掛けて私との談笑がスタートする。
魔女A「ゴブリン達と話したい?通訳かぁ。」
魔女は心当たりがないか右上を見ながら、ごちゃごちゃした頭の中から、めぼしい記憶を探している。
ノワール「それから、私でも使える魔法はない?できれば即応性の高いやつ。」
魔女A「それなら紋章魔法にしな。あれなら呪文は要らない。念じるだけでいい。」
ノワール「へぇ、そんなのがあるんだ?」
持参のティーポットから魔女の少なくなったカップに紅茶を注ぐ。そして、角砂糖も。
ポチャン、ポチャン
魔女A「へへ、悪いな。入れ墨自体が術式になってる。長々とした呪文を噛まずに行使したい!って思ったやつが大昔にいたんだろ?たぶん。」
ノワール「なるほど。それで?通訳は?」
魔女A「確か、リサがそんなの入荷してたなぁ。」
リサ「何?私の話?」
私たちの会話にちょうど本人がやって来た。そこらの魔女と違って人間の言う40代くらいの妖艶な美魔女といった雰囲気だ。
リサ「そうねぇ、今は現物持ってないから。今度うちの店に来るといいわ?」
魔女A「アンタには特別に道を教えてやるよ。」
魔女がそう言うと、呪文を唱え始めた。すると、私の頭の中に魔女達の集会場からリサの店までの道のりが浮かんできた。
魔女A「道順はノウにインストールしてやったぜ?迷わず行けると思う。」
ノワール「ありがとう。リサさん、それの金額はオイクラ?」
リサ「アナタ、宝石箱ある?」
ノワール「えぇ、持ってます。」
リサ「じゃぁ、箱ごと持ってきて。中身を見て決めるわ。」
ノワール「?」
後日、リサの道具屋に宝石箱を持って立ち寄る。
レジカウンターにいたリサはさっそく宝石箱を開け、中を物色する。
リサ「あ、コレもあるのね、コレとコレも。」(ヒョイ、ヒョイ)
ノワール「どうするんです?」
リサ「ん?欲しがってる魔女に転売するのよ、高値で。」
うわー、転売ヤーだ。
リサ「こんなもんね、料金はもらったから、ハイこれ。」
リサはレジの下の引き戸から木箱を取り出し、そこから緩衝材の藁の中に埋もれてた鉱物でできたブレスレットを慎重に出した。
リサ「壊れやすいから、注意して扱ってね?」
ノワール『戦闘では外さないといけないのか……』「ありがとう、コレって複数個ある?」
私はさっそく、右手首にそれをはめた。
リサ「受注生産品だから、今はそれだけだけど。作ろうと思えば作れるんだと思うわ。」
ノワール『職人の魔女が他にいるのか。』「あ、それからリサさんは紋章魔法の職人知らない?」
リサ「居るけど、偏屈よ?」
みんなそうなのか?魔女は……
へパ•ホムンクルスの工房に注文していたダマスカス鉱でできた黒地の刀身に東洋風の白い龍紋をあしらったレイピアを受け取りにいった。
その帰りに数人のゴブリンたちが私の行く手を阻んだ。
ゴブリン「ウホウホ。ウホホホウホ!(我々は、労働環境改善を要求する!)」
あ、この前、こういう事言ってたのか……
ノワール「わかったわ、長老のところで詳しく聞こうじゃない。」
ゴブリン達は敵対されると身構えていたので、拍子抜けを食らった顔になった。
ゴブリンの巣
長老「我々、増えた。ここ、狭い。食料も、足りない。」
なるほどね。
確かに小さい幼体も増えてるし、畑は全部麻薬を栽培させてるから。今の食量じゃ食い扶持を賄えないか……
ノワール「聞き届けた。近日中に何とかしよう。」
私は魔女集会場に足を運んだ。
受付嬢「マタルさんですか?集会にはほとんど参加されませんよ?」
ノワール「そうなの?」『建築用のホムンクルスでもと思ったけど。あてが外れたわね。』
???「お、アンタ。確か、スルトが踏んづけた所のやつだろ?」
振り向くとそこには長い黒髪から黄色い目が光るワイシャツ姿の魔女が立っていた。
ドルガ「私はドルガ。ロボット研究をしてる。ちょうどこの前、ノリコがアンタんとこの地殻調査をしてたら地下に空間があることを突き止めたんだ。」
ノワール「はあ、そうなんですか?」『ノリコって誰?
つか、魔女って普通に外出歩いてんのね……』
ドルガ「ちょっと、見たいから、そこを開けてくれねーかな?人手は出すからさ?」
あ、人手。それは助かる。
ノワール「その人手、他でも使えるやつですか?」
ドルガ「発掘調査以外でか?もちろん。私の制作物は何でもこなすよ!」
ノワール「畑の開墾や建築とか?」
ドルガ「作業工程のインストールなんて簡単だよ。すぐやってやる。ところで、お代はそれでいいか?」
ノワール「こちらこそ、助かります。」
社交の場はこうでなくっちゃ。
ノワール「ヴァイス。アナタ、2〜3週間見なかったけど、どこ行ってたの?」
ヴァイス「えぇ?!首都だよ!行く前にちゃんと言ったよ?!ここで!」
夕飯の食卓の席に最近見なかった白髪のいい男の顔を久しぶりに見る。
こちらも忙しくしていたから気にしていなかった。
ヴァイスは存在を忘れ去られてたことにショックを受けているようだ。テーブルに突っ伏してシクシクと泣いている。
ノワール「あ!公共事業がどうのとか言ってたわね。」
ヴァイス「そうそう、国に計画表を持っていったんだ、ちゃんとゴーサインもらってきたよ!」
ノワール「やったわね!後はギルド辺りかしら?」
アルゲン「それと秘匿化ですね。」
ヴァイス「ギルドについても、交渉してきたよ。建物ができたらまた来てくれってさ。」
ノワール「よーし、これからこの町を大きくしていくわよ〜!」




