勇者パーティー
雪の降りしきる一面真っ白な新年。日の出と共にその一行はソリタニアの王都の方からこの辺境の地にやって来た。
戦士「なぁ、寒いからゲルブムントについたら、早く宿取ろうぜ?」
大剣を背負った大男が先頭を行く青年に声を掛ける。兜で表情が読みにくい、その大男は分厚い外套の下に高そうなフルプレートのアーマーを着込んでいる。
僧侶「この時期に開いてるかしら?宿屋?さっき立ち寄った道具屋は正月休みだったじゃない?」
成熟したエッチな体を露出度0の神官服で包んだ、その女性は正月休みについて心配している。
話すときは身ぶり手ぶりを加えるのが癖なのかブンブン腕を振っている。
勇者「大丈夫でしょ。」
一行の先頭を行くツンツン頭の青年は、楽観的に答えた。しかし、やはり寒さは応えるのか鼻水をすすっている。
魔法使い「フォッフォッフォ、ゲルブムントはいい子がおると評判じゃワイ、今から息子も熱が入る、入る!」
真っ白になって久しいヒゲを撫でながら股間を膨らます
魔法使いの老人を振り返った戦士と僧侶はジト目で大きなため息をついた。
僧侶「また、その話?どこへ行ってもそればっかり!」
戦士「まったく、スケベなジジイだ。」
勇者「じいさんはそうでなくちゃ。」
ヴァイス「大変だよ!ノワール!」
昼食を終えて自室に戻ろうと廊下を歩いていると、慌てた様子のヴァイスとアルゲンがかけてきた。
ノワール「何なの?アルゲンまで、マリアッチの魔導生物がまたバグって暴れてるの?」
アルゲン「違います、ノワール様!」
ヴァイス「とにかく、部屋で話そう!」
ホントに、何なの?
私は自室の席についてヴァイスに向き合った。アルゲンが報告書を渡してきたのでそれを見つつ、冷めた激甘の紅茶をすする。
その報告書の題目にはこうあった。
ノワール「……勇者一行?」
ヴァイス「この街に来てるんだ!」
アルゲン「東方の牛の魔王を討ち取ったとかで最近、株を上げてきた連中です。」
私は報告書の彼らの略歴とこれまでの功績を読んだ。
ノワール「……コイツラがエンハンブルクに入るの?」
アルゲン「十中八九そうでしょう。」
ヴァイス「そんなことになったら、すぐエンハンブルクの奴等が倒されちゃうよ!どうしよう!」
ノワール「いいじゃない、ほっとけば?」
ヴァイス&アルゲン「えぇ?!」
バサッ
驚く2人をよそに、私は報告書を執務机に投げて続けた。
ノワール「下手に動いて出元がここだってバレるより。奴等がモンスターを狩り尽くして、去った頃合いにまた、送り込めばいいのよ。」
アルゲン「魔導生物も材料費がかかりますし、もっと大事に扱うものかと。」
ヴァイス「彼らを定期的に修復に行ってるマリアッチにはどう言うんだよ?ノワール?」
ノワール「そうね?
“おお!マリアッチよ、倒されてしまったではないか!今度はもっと強力な魔導生物を作るのだ!”
かしら?」
2人は芝居がかった私の言葉に意表を突かれたのか逆に冷静さを取り戻した。
ノワール『あ、滑ったかな?』
ヴァイス「とりあえず、武器屋は長めの正月休みを入れてもらおう。」
アルゲン「かしこまりました。」
ノワール「それと、土建屋の売春宿にも連絡して、奴等が来たら適当な理由つけて出禁にしてもらって?」
とりあえず、勇者一行には塩対応することで様子見となった。
勇者「あれぇ、領主が挨拶に来ないなぁ?」
戦士「ここらは田舎だからまだ俺たちの名声が届いてないんだよきっと。」(違います)
僧侶「ねぇ?エンハンブルクにはいつ入る?関所開いてるかしら?」
三人が宿屋でゆっくりしていると魔法使いの爺さんが暗い顔で外から戻ってきた。
戦士「あ、スケベジジイ!」
勇者「どうだった?ここの娘は?」
魔法使いは肩を落としてため息をついている。
魔法使い「出禁食らってもーた……」
僧侶「モー、何やらかしたのよ!キモい!」
魔法使い「わしゃ何もしとらん!はず!」
戦士「完全に否定できないのかよ……」
魔法使いはベッドにあぐらをかいていた勇者にすがりつくように提案した。
魔法使い「エンハンブルクのダシマ領にもあるんじゃ!早う、エンハンブルクに行こうぞ!勇者!」
勇者「そうだなぁ。」
青ひげが気になりだした勇者は朝剃ったばかりの顎をジョリジョリ言わせている。
戦士「まあ確かに、お目当ての武器屋も1月末くらいまで開かないってんじゃ、ここに足を運んだ意味ねーべ?」
僧侶「他のところはその土地の領主が宿代見てくれてたけど、ここのは馬鹿にならないしねぇ?」
勇者は立ち上がると盾と剣を担いだ。
勇者「よぅし!善は急げだ!」
しかし、勇者一行が左右にそびえ立つ山々を縫うように作られた道を進み、昼過ぎにようやく、関所についたが、そこは無人で門は固く締まっていた。
勇者「もう、ぶち壊して進もーぜー?」
僧侶「ダメよ!指名手配されちゃうじゃない!?」
戦士「くそう、ここまできたってのによ!」
魔法使い「トホホ、厄日じゃ……」
宿屋に引き返した勇者一行は暇つぶしに町で情報を集めることにした。
酒場の店主「あー、そういやぁ山に通販の輸送車両が入っていくのを見たってやつがいたなぁ?」
勇者「マジかよ!おっちゃん。」
勇者は酒場の店主に金貨を一枚渡してビールを注文した。
酒場の店主「毎度。だからよ?あの辺りにエンハンブルクに続く道があるんじゃね〜かって話さ。」
ゴトッ
ジョッキで出されたビールを煽る勇者の両隣の僧侶と戦士が会話に入った。
戦士「そりゃいい。エンハンブルクに行けるかもな。」
あー、けど、と店主は続ける。
店主「あの辺りはゴブリンが出るって話なんだ。」
僧侶「そうなの?」
それを聞いていた魔法使いも焼き鳥を口で串から取りつつ、つぶやく。
魔法使い「物騒じゃのぉ。」(ムシャムシャ)
勇者「エンハンブルクに行くついでだ、見つけたら潰しとくわ!」
酒場の店主「そりゃ、ありがてえこった。」
僧侶「今からなら夕方になる前にエンハンブルクに行けるかしら?」
勇者「そうと決まれば、さっさと行こーぜ!」
勇者が現れた次の日、私は久しぶりに麻薬畑の状況を見に行こうと山に入った。
あの赤いマフラーをしてるんるん気分だった。
しかし……
ノワール「?なんか焦げ臭いわね?」
その臭いはゴブリンの巣に近づくにつれて強くなっていく。
そしてそれはマフィアの麻薬畑を燃やしたときのような臭いに変わっていった。
ノワール『え?嘘でしょ?』
そこには整然と生い茂る麻薬畑はなく、綺麗に焼き払われ焦げた地面が広がっていた。
私は雪に覆われた麻薬畑を想像していたので、その光景に衝撃を受けた。
ノワール「何なのこれ?麻薬だけキレイに焼き払われてんだけど?」
私は不安になりゴブリン達の巣を恐る恐る見に行った。
洞窟の前の広場には、既に半分、雪に埋まったゴブリン達の死体がそこら中に横たわっていた。
これは一大事だと思った私は屋敷に踵を返すと、忍者達を連れてゴブリンの巣に戻った。
ルーカー「うっわー。」
イスキア「こんなの、誰がやったんですかね?」
アルゲン「とりあえず、現場検証しましょう。」
忍者達は手分けして、凄惨な現場を見て回った。
一撃で撃たれたであろうゴブリン達。上半身、下半身を真っ二つに両断されて散らばった遺骸とそれぞれの切り口を調べながらアルゲンは予想する。
アルゲン「これは、犯人は複数人だな……」
イスキアがうつぶせで倒れていたゴブリンの顔を確認する。
イスキア「コイツなんて、顔が炭化してますよ。」
アルゲン「かなりの手練の犯行ですね。」
そこまで聞いて私はピンときた。
ノワール「勇者一行。」
アルゲン「おそらく。」
洞窟から青い顔をしたルーカーが出てきた。
ルーカー「中は、ひでーってもんじゃないです。幼体まで焼き殺されてます。」
アルゲン「ルーカー、女どもは?」
ルーカー「人っ子ひとりいません。」
アルゲン「ロボトミーにしといて正解でした。」
うん。私は冷や汗をかきながら頷いた。
ノワール「!鉱山は?!」
忍者達も最悪の想像をして青ざめる。
アルゲン「行ってみましょう!」
へパ•ホムンクルスの工房の方を見に行った2人が走って帰ってきた。
イスキア「たたら場も駄目です!」
ルーカー「へパも含めて全滅っす!」
入り口を丁寧に潰された鉱山からは鉱毒とも血とも判断できない黒っぽい液体が流れていた。私はショックでその場にへたり込んだ。
アルゲン「一足遅かったか……」
イスキア「ここまでする?」
ルーカー「下層民達は?」
アルゲン「ダメだろうな。」
アルゲンは閉じられた鉱山出入り口を見やった。
アルゲン「ノワール様、どうしますか?」
私は頭を抱えた。
ノワール「どうもこうも、コレじゃァ、領地経営どころじゃないわよ。ことが発覚するじゃない。」
アルゲン達も唸って腕を組んだ。
ルーカー「不味すぎやしませんかね?」
イスキア「とりあえず、どうするかをヴァイスさん含めて考えましょう。」
ノワール「おのれ、勇者共め……!」




