政略結婚
ソリタニア王宮サロン
貴族A「聞いたか?エンハンブルクの件。」
貴族B「麻薬だろ?」
貴族C「目星は?教えろよ?」
コッコッコッ……
ミニスカ&ノーパンメイド服の巨乳ウエイトレスが横を通り、貴族達は鼻の下を伸ばしてその尻を目で追いかけた。
貴族B「で?誰なんだよ?」
貴族C「放った忍者からの報告だろ?」
貴族達はそばで聞き耳を立てている王族、大臣達に聞こえる声量で続けた。
貴族A「禍津神のノワールだ。」
貴族B「やっぱりか、辺境に行って当局の目が行き届いてないからって。」
貴族C「また派手にやってるよなぁw」
大臣たち「…………」
ルーカー「ソリタニアから?」
その日、ルーカーはポストから王族のハンコの押された封書をテーブルで一人朝食を終えた主人である私に手渡した。
ルーカー「今日はヴァイス様のところじゃないんですね。」
ノワール「最近、ヴァイスは朝早いのよね、またいつもの散歩でしょ?」(お口、ふきふき)
ルーカー『ホッペタのキスマークも拭けよ……』
私は封書を開けて中を確認した。
ノワール「エンハンブルクの奴と婚約?!私を?!…………どういう事?」
私は何度もそれを読み返した。エンハンブルクとの同盟強化のためエンハンブルクの地方貴族のところへ嫁げとある。
母の署名入りで。
ルーカー「政略結婚ってやつですか?断りましょうよ。」
ノワール「病弱な母がどうなることか。」
私は両手を組んで、下を向いた。
こんなことなら病弱な母には辺境への長旅は応えるだろうからと残さず、無理にでも連れてくるんだったと後悔した。
はぁ。
ノワール「とりあえず、今度相手方と舞踏会があるんですって、アルゲンにも言っといて?」
私は手紙をルーカーに返した。
ルーカー「へーい。」
ヴァイス「お見合い舞踏会?」
ノワール「そう。」
庭先で私たちは昼前のティータイムをその話で過ごした。
ヴァイス『……キスマーク。』
ノワール「なに?」
ヴァイス「あ、いや?なんかすごいなって。ハハハ……」
私は角砂糖二つ入れて混ぜた紅茶にさらに二つ投入した。スプーンで紅茶をかき回す。
ノワール「とりあえず、どんなブ男が見てきてやるわ、ヴァイスも行くでしょ?」(クルクル)
ノワールにはすでに男がいる。私はそう見せつけてやるつもりだった。
ヴァイス「……僕は辞めとく。行かない。」
え?
ノワール「ど、どうして?」
ヴァイス「君が留守を預かるのも僕の役目だし。それにやりたいこともあるんだ。」
ノワール「ついてきてくれないの?」
子分。優秀なおとうと。二つ返事でついてきてくれるだろうと思っていた私は思いがけない拒否に動揺した。
のだと思う。
ヴァイス「魔女のマリアッチもできたからさ。顔を直せる方法がないか知りたくてね。」
魔女の技術は神代から継承されたもの、その後、研究発展してるものもあると聞く。
確かにそれで彼の病気で崩れた顔を直せるかもしれない。
けど、なんか負けた気がして、彼を取られた気がして悔しい。
クリオ「デスマスクとかいらなくなるのかな?ノワール、マスクくれないかヴァイス聞いてみてくれ?……ノワール?」
クソー。
悔しい、羨ましい、寂しい。
色々な感情が噴き出し混乱した私は動揺を鎮めようと甘すぎる紅茶を飲んだ。
ノワール「あっま!」
ヴァイス「そうだろうねw」
コイツめ
コン!
ヴァイス「あいた!」
今回の婚約の話の相手はエンハンブルクの北の辺境領プレサングにいる、カメテック伯というらしい。
アルゲン「山深い土地で、一年の大半を雪に覆われた所です。」
ふーん。寒そう。
ノワール「で?そのカメテック伯とやらは?」
アルゲン「寒い土地柄なせいか、酒が多く、ずいぶんと体格のいい方で、短気で暴力的、手も早いとか。」
クリオ「調教のしがいがありそうだな。ノワール?」
ノワール「私の趣味じゃないわねー。」
私への当てつけかしら?それなら、この縁談を組んだやつはさぞいい性格をしているだろう。
ノワール『めちゃくちゃにしてやろう。』(ニチャァ)
ルーカー『うわー。また、なんか企んでるよ、うちの姫様。』
私の顔を見てアルゲンの後ろに控えていたルーカーとイスキアがひそひそ話を始める。
おっと、また顔をでていたかと思った私は紅茶を飲んでソレをごまかした。
イスキア『八つ当たりかな?』
ルーカー『八つ当たり?なんの?』
イスキア『さぁ?生理とか?』
ノワール「そこ!聞こえてるぞ!」
ルーカー&イスキア「ひぇぇ!」
アルゲン「舞踏会はエンハンブルクの王宮で行われるそうですがすぐに行かれますか?」
ノワール「遅れていくのも、印象悪いでしょ?早めに行って、観光でもしてくるわ。」
ノワールは手紙を受け取って数日でエンハンブルクに経った。その間に僕は顔を直せる方法がないかマリアッチに調べてもらった。
マリアッチ「書庫を管理している魔女のところに足を運んでるんですけど、あの人、整理が大雑把で、なかなか見つからないんですよねー。」
ヴァイス「魔法に頼んなくてもいいからさぁ。なんかない?」
マリアッチ「うーん、それなら、サディさんかなぁ?」
ヴァイス「サディ?」
マリアッチ「形成外科やってる魔女です。でも、私、あの人の連絡先知らないんですよね。」
なんか、もう少しで手が届くような光明に僕はすがった。
ノワールの子分を卒業して彼女の隣に立てる男になりたい。
ヴァイス『そのためには僕は、なんとしても元の顔に治りたい。』
彼女を振り向かせたい。彼女に気持ちを伝えたい。
今回の婚約の話を聞かされて僕の心には火がついた。
ヴァイス「誰でもいい!その人を知ってる人を紹介してよ!」
マリアッチ「えぇ?誰でも?それならクローサーさんですかね?学生時代仲良かったし、あの2人。」
さっそくマリアッチはクローサーに連絡をしてくれて僕は待ち合わせ場所の魔女の集会場に行くこととなった。
ヴァイス「ノワールのメガネ。」
スチャッ
マリアッチ「寸法とか大丈夫ですか?」
ヴァイス「大丈夫だよ。」
魔女の集会場に行くための姿鏡の前に立つ僕の醜い顔。これをどうにかしたい。髪の色はここに来てから、より白くなった印象だ。
ヴァイス『色々あったからなぁ……。』
マリアッチ「私、今回はついてきますけど、ノワール様に言われてるゴーレム作成がありますので。次から一人で行けるように。道覚えてください。」
ヴァイス「わかった。」
マリアッチ「あと……」(モジモジ)
マリアッチは次の言葉に言い淀み、マゴマゴしている。
ヴァイス「まだ、何かあるの?」
マリアッチ「その、クローサーさんは性的な意味で手が早いので……」
キュッ(何かが閉まる音)
ヴァイス「き、気をつけるよ……」
魔女の集会場に着くと受付のところでクローサーは僕たちを待っていた。
マリアッチの言うには男性を会場の奥に招き入れるのは性的な意味でとても危険だから、らしい。
ヴァイス『確かに、奥にいる魔女達のギラギラした視線が怖い……』
クローサー「よう!マリアッチ。貸した金は体で払ってもいいんだぞ!」
マリアッチ「ち、ちゃんと返しますからぁ!」
クローサーはマリアッチのでかい胸を人差し指でつついた。乳首あてゲームか?
マリアッチ「あ!やめてください!」
クローサー「いいじゃないか?女同士なんだし。つか、そっちのデスマスク君か?サディに用があるってのは?」
クローサーは少し情気した顔で舌なめずりをしている。
ヴァイス『ひええ。』「顔を元通りにしてほしくて来ました。」
クローサー「へぇ、いいねぇ。」
僕の手を取ったクローサーは手の香りを胸いっぱいに吸い込んで白目をむいて喜んでいる。
クローサー「わかった、わかった。デスマスクくん!サディに連絡してあげよう。」
ヴァイス「あの、お代は……?」
クローサー「それはサディ次第さ。たぶん金はいらないって言うと思うぞ?」
クローサーは僕の手を離さず、ずっと頬にスリスリとおしあてている。
マリアッチ「ただですか?!やったです!ヴァイス様!」
そ、そうなのか?なんだかやな予感がする……。




