チートと立ち直り
無題
*月 *2日 (水)
もう一度、こんな所に帰ってくる事なんてあるのだな。正直こうなるとは思ってもいなかったよ。
さて、早速だけど始めるか。まだ本調子は出せないだろうし、出来るだけでいいからって**は言ってたしな、日々コツコツ頑張ってりゃ、いつかはこの事が**を通して……いや、アイツの事だからきっと自己満足でしかないんだろ。まあ、親友の頼みなら手伝うって言っちまったし、しかし、予算はなんとでもなるとはいえ、問題は時間だ。そんなのんびりしていると***に間に合わないだろう。これは嫌だ。**の株を落としたくないし、***には個人的に憧れてるし、わざわざ見逃す訳には行かない。
**も例の仕事が終わったらここに来てくれるから、それまで頑張るか。
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「暫く待つくらいならいいですか?」
「ええ、それなら貴方の気持ちが済むまでごゆっくり」
床にうつ伏せでぶっ倒れたまま言った。
幸い、甲は結構話が分かる様で、傷心かつ乱心状態の僕を宥めるのが優先されたのだろう。
取り敢えず感謝だ。ありがとう。
「落ち着いたら言って下さい。それまで好きなだけ喚き散らしても構いません」
発言の一つ一つに紳士性を感じる。
育ちがいいんだろうな、きっと。
「いいんですか?」
「いいですよ。どうせ僕以外に人が来るなんて滅多にない事ですし」
健康で、不摂生な生活なんて考えた事も無さそうに見える彼の笑顔は、何か優しさみたいなものを感じる。
エイタとはまた違う……なんと表したらいいのだろう。
「まぁ、こんな所に人を惹きつける面白いものなんて一つもありませんしね」
確かに、余程のバカでない限りあんな天国から地獄への移動用のような階段を下る奴はいないだろう。
それに根気よく進んで行ったとしてもこの仕掛けだ。本人以外解けそうにない。
苦労してここまで辿り着いた結果がこれだ。
とんだ骨折り損の草臥れ儲けってやつだな。
「うん。まあ……休みたいです」
掠れそうな声だった。
鬱になるというのはこういう事なのか。
気持ち悪いという言葉で形容出来ない、花曇りの中で一瞬の霽れを願い続けているようなこの感覚。
頭が痛い。
いや、痛いって程では無いけど、脳の奥の方から何かが迫って来る。
ああ、気持ち悪い。
「 」
「……水でも汲んできてあげましょうか」
流石に心配されたか、さっきの休憩室のウォーターサーバーまで行く様だ。
「ははは、まだ未熟だなぁ……」
この場を後にする甲の背中を見ながら呟いた。
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「よし、行ける!」
もう大丈夫だ。
気持ちを切り替えて、進む決意をした。
「いいんですね?」
まだ甲は僕の身の事を心配している。
まぁ、あんな事の前だし、仕方ないと言えば仕方ないんだけども。
「はい。じゃあヒントを……お願いします」
もう一度お願いした。普通の方法で。
「よくできました」
甲は微笑みながら褒めてくれた。
少し癪に触るけど……まあいいか。
「じゃ、教えましょう。元よりその気だったので」




