チートと優しさ
「我ながらいい感じの名前だな!」
エイタは嬉しそうだった。
余程会心の出来だったのだろう。
「鳴神……ソウタ……? 名前……?」
僕はまだ『名前』というシステムをあまり良く知らなかった。
「ああ! 君だけの名前だよ。 何かと言われても……『名前』ってのはそいつの生存証明だったりだとか、個体判別の用途もあるけどな……」
そんな僕でも、彼は優しく教えてくれた。
「やっぱ1番は『大切な人からの最初で最大の贈り物』って言った方がいいかな」
普段ならこの辺りでエイタが言っている事を分かったのだが、その時は難しかったのだろう。
この頃の記憶は曖昧で詳しくは覚えていない。
「それはどういう事?」
「……まあそのうち分かるさ。それじゃ僕は色々と用事があるからまた明日、何処かで会おうか。
それじゃ」
こうして颯爽と現れた謎の青年『エイタ』はまた何処かへと消えていった。
「不思議な人だ」
暫くエイタの事を考えていた。
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その後から毎日、決まった時間にエイタが牢屋越しに話しかけて来るようになった。
僕は彼から、『人間の基本的な感情』を教えてくれたり、紀行録も語ってくれたりして貰った。
話を聞くに、エイタ同じ境遇の人であり、『心』や『感情』は彼の先輩(名前は聞き忘れた』から送られてきた事、
それに、度々この研究所の外へ飛び出して沢山の世界を見て廻っていると。
そして、彼はいつも同じ時間に『別の用事があるから』と言ってここを立ち去っていく。
という事は他にも僕みたいな人がいたのか。
そもそも、今迄エイタ以外の仲間の同じ人は見たことない。みんな檻の中でも閉じ込められたのだろうか。
じゃあ何故エイタは外にいるのか。
次第に僕はエイタがここにいない間やつまらない『実験』に付き合わされている時にそう考えるようになった。
そして僕はそれを溜め込む筈も無く、次の日にまとまってエイタを質問責めした。
今じゃ考えられないね。こんな事。
しかし彼は動じず、僕の一つ一つの質問を受けてハッキリと僕でも分かりやすいように教えてくれる。
『研究所』の外についてだったりとか。
研究は何の為のものかだったりだとか。
僕の他にも同じ境遇の人がいるかとか。
流石にエイタは『知る者』ではないから「それは知らないなあ……」と言う事もある。
しかし、大抵の質問には答えてくれる。彼は一体どうしてその事を知っているのだろうか。
などの疑問がまた生まれては質問し……の繰り返しが暫く続いた。




