腹をくくります。
ブクマ・評価ありがとうございます!!!
「サラ、貴女を王都の魔術学校に推薦しますよ。」
一年後、あっさりと、至極当然のことのように、担任のレミィ先生(31歳既婚・2子あり)はそうおっしゃった。
でも、私はやっぱり嫌である。
面倒臭いことは嫌な上に、この町だいすき!である。皆いい人だし、安全だし、結構裕福っぽいし。
ここはきっぱり拒否しよう。私はNoと言える子!
しかし、口を開こうとした私に被せるように、レミィ先生はにっこりと笑ってこう告げた。
「ちなみにご両親にもお話してありますよ。お二人とも寂しいけど、勉強好きのサラさんだから、この機会に町では学べない知識を身に着けてほしいおっしゃっていました。」
………先手を打たれた。外堀からがっちり埋められた。
さすが、レミィ先生。私の前世と今世を合わせた年齢よりも……ゲフンゲフン。
「ちなみに、他に誰が?」
「フェルナンデスと、カーク、そしてマルガレーテが既に確定しています。騎士学校にはリッツにロイド、クライブ、あとはフローラですね。他にも数人いますが、ほぼ全員間違いなく確定するでしょう。」
「……。」
先生はきっぱりとそう言った。
やっぱり、基本皆、断らないのだ。
名誉なことだから。
更にぶっちゃけると、成長期の子供にかかる費用がほとんど浮くのである(特に食費)。つまり、家計にも優しい。
衣食住が保証され、教科書代もかからない。就職にも超有利。もしかしたら有名人や大金持ちにだってなれちゃうかもしれない。
親としてはこの上なくいい話なのだ。
分かるよ?私も前世では大人と言えなくもない年齢だったから。
それは分かるのだが…。
(もうちょっと粘って欲しかった、かなぁ~?)
自分がわがままなのは承知している。
承知しているけど、なんともモヤっとするこの気持ち。
なんだろう。
可愛がられていないという可能性はないと思う。
だから厄介払いというわけじゃないのも重々承知している。
してるんだけどさ~!!
もうちょっとこうさ~?娘の気持ちをだね~?
「どうしたの~?サラ?」
「乱れてるよ~?」
やるせない気持ちに苦悶の表情でうんうんうなっていると、私の周りにいつの間にか現れた精霊たちが口々にそんなことを言いながら顔の周りを縦横無尽に飛び回りはじめた。ハエか。
(何でもない)
「えー?うっそぉ~?だって魔力が渦巻いてるよ~。」
(…!!!???)
そのいつも通りのカルい口調に、ついイラっとしてぶっきらぼうな返事をしてしまったのだが、ケラケラ笑いながら告げられたその言葉に私は大きく目を見開いた。
「サラさん?」
「!いえ、なんでもありません。か、帰って両親と話してみます。」
「?ん、そうですね。それがいいですね。」
突然目を見開いてフリーズした私に、先生は一瞬怪訝そうな顔をしたけれど、追及することもなくそのまま見送ってくれた。ありがとうレミィ先生。デキる女は違うね。
カツンカツンと、私は急いで階段を下る。
そのまま、教室の席から鞄を乱暴に引っ掴むと、周囲に適当に挨拶してから教室を飛び出す。
最初は小走りで。
学校を出たら、こんどは全力疾走で。
「サラ~?」
「これかぁぁぁぁっ!!」
周囲から人影が消えたあたりで足を止め、私は絞り出すようにうめき声をあげた。
精霊たちは相も変わらずすっとぼけた顔で、私の周囲にフヨフヨ浮いている。
「渦巻く…なるほど…これがさらに大規模になると、魔力暴走になるのか…。」
がっくりと肩を落とす私に精霊たちは不思議そうな表情を浮かべている。
「え?」
「今更?」
知らなかったのか、コイツといった表情で精霊たちはこっち見てるけど、そうさ、知らなかったさ!!
理屈ではわかっていても、こういった感覚で魔力が精神に引きずられるって経験がなかったから。
考えてみれば、この8年、凄まじく焦ったり、怒ったり、混乱したことってほとんどなかったかも。
だって、最初の転生のインパクトが強すぎてね…。
「だいじょーぶだよ、闇の魔力じゃないから~。」
「慰めのつもりかい…。」
確かに、闇の魔力を暴走させなければ、魔王とか魔人にはならないかもしれないけど、普通の魔法だって暴走させれば大惨事じゃい!
だけど…。
私はそこでふーっと大きく息を吐く。
確かに、こんなんじゃ、ダメだ。
正直うぬぼれていたのかもしれない。
他の子達より、人生経験が長くて、ちょっと周りを冷めた目で見てみたりして。
授業にも難なくついていけたし特に困ったことも無かったから、魔術学校なんか行かなくても平穏無事に過ごすことなんて余裕!前世の分もスローライフとか満喫しちゃう!!……とか思っていたのだ。
だけど、実際はどうだ?
三年間かけても、結局私は先生たちがどうやって子供たちの魔力や能力を測っているのか、知ることができなかった。
ちなみに精霊検索は役に立ちませんでした。
こいつらあんまりおもしろくなさそうなことには本気で無関心です。
授業に関しても、真面目に、しかし、目立つことをしたわけではない。
にも拘わらず、先ほど推薦の話が来たということは、私は一定の条件を満たしているということだ。
将来的に、国にとって脅威となる可能性が少しでもあるという、その条件を。
その時点でも私は、私に限って魔力の暴走とかwwないわwwwとか思っていたのだ。
だけどその直後、ほんのちょっとだけ魔力の暴走を体験した、ただそれだけで私の自信は急激にしぼんでしまった。
本や伝聞ではわからない、あの感覚。いとも簡単に、精神に魔力が引きずられるあの恐怖。
魔王になる気はサラサラないが(言っておくがダジャレではない)、暴走して事故を起こすのもごめんである。
両親を悲しませるなんて、もってのほかである。
そう考えたところで、ふと、私の中で一つの答えが出た。
あ、そうか、私、今の家族のことすごく好きになっていたんだな。
だから、強く引き留められなかったってことが受け入れられなかったんだ。
気付いたとたん、まだちょっぴり残っていたモヤモヤが胸の中から消え去っていくことがわかる。
我ながら単純である。
だけど、単純だからこそ恐ろしい。
「腹、くくるか…。」
げんなりするが、しょうがない。
義務だ、義務。
人並みに学び、魔法の基礎とやらも身に着けたつもりだったけど、まだまだ学ぶことはあるということだ。
しょうがない、こーなったら、ちゃんとできるところまで勉強してみよう。
人生、あきらめが肝心である。
できるとこまでやったら、早めに引退して、のんびり隠居生活してやるよ!!
若者としては、あまりにも枯れたそんな目標を掲げ、私は王都に行くことを(渋々)決意したのであった。
サラ・ゴールデンロッド、8歳(+19歳)頑張ります!!!!




