学校に向かう間も勉強です。
ブクマ、評価ありがとうございます。うれしいです!
「うう、サラ、気を付けるのよ…。」
「はい。母さん。」
青い瞳をたっぷりの涙で潤ませる母の手を握りながら、私は白い息をふぅっと吐き出した。
少し後ろには、同じく目を潤ませた父が苦笑いを浮かべて立っている。
「では、頼みましたよ。ハーレイア先生もお気をつけて。」
「はい。…では出発だ!」
「はい!!!」
引率のグイン・ハーレイア先生の言葉に、私達は大きな声で返事をした。
出発の朝、季節のせいかまだ薄暗い午前7時。
校門に集合した私たちは、それぞれの家族に別れを告げた後、必要最低限の荷物を抱えると、人力車に乗り込んだ。
…ちなみにこれ、間違いではない。
「じゃあ、出発しまーす!!」
私たちに声をかけるのは、この人力車を引いてくれる車夫さんだ。
彼らは、前世で言う恐竜を髣髴とさせる見た目をしているが、獣や魔物などではなく、れっきとした王国民である。
魔獣を手懐けて引かせる車もあるのだが、街道や街中を移動するには普通に意思疎通のできる彼らの方が役に立つらしく、私も数回お世話になったことがある。まあ、御者さんとかもいらないし、特に街中とかは融通が利く分こちらの方が確かに便利だろう。
ちなみに、魔獣の方は魔獣の方で、戦場や危険な場所に向かう時に需要があるらしい。ちょっとそれはどうなのよ、と聞いたときは正直そう思ったものだけれども、それが違和感なく商売として成り立っているあたり前世とは感覚が違うのだろう。
「サラちゃん、一緒に乗ろう!」
「うん。」
私に相乗りのお誘いをかけてきたのは、マルガレーテちゃん。
トカゲ人種の血を引いているらしい彼女は、暗めの肌色に緑がかったグレーという、神秘的な髪を持つ女の子である。
首筋の鱗や、縦長の光彩をした鋭い目が最初はキツそうに見えたけど、ごめんなさい、すごく女子力の高い優しい女の子でした。
最終的に私の学年で、王都の魔術学校に行くのは私を含め7人。騎士学校は6人。
人数の上限が決まっているわけじゃないみたいだから、やっぱり何らかの基準があるのだろう。
それを三年間で知ることができなかったのはいまだに心残りだけど、やっぱり前世と併せても30年も生きていない私が、国家ぐるみのプロジェクト(大げさかしら)の内情を探るというのはやっぱり無茶だったのだ。
その辺は身の程を知りました。ええ。
人力車は全部で五台。しかも先生以外は十にも満たない子供なので、荷物があっても内部はかなり余裕です。
一台の人力車を二人の車夫さんが引いてくれます。
王都までは途中で休憩をはさんでも2日で着くそうです。
ただし、これは彼らだからできる芸当である。
「彼らは、強化魔法のエキスパートだ。お前ら……特に騎士学校組!!よーく見ておけ!」
「はい!!!」
そう、もともとの強靭な肉体を、さらに魔法で強化するのだ。早いはずである。
そして、先生が騎士学校と強調したのには理由がある。
実は、魔力は高いけど魔力の外部放出が体質的に苦手で、通常の攻撃魔法の行使が苦手な子というのが結構存在するらしい。
向いていないだけで全く使えないわけではないけれど、外部放出が上手くできないため攻撃魔法等の威力を完全に引き出すことができないのだ。
そればかりか、場合によっては暴発の危険もあるとのこと。
その話を聞いたとき、私は妙に納得したものだ。
ああ、だからディアンは騎士学校に行ったのか、と。
以前ディアンは授業で魔法道具を使ったとき、大失敗したと聞いている。前髪コゲコゲ事件である。
魔法道具に魔力を流すのも、実は外部放出の一種である。
市販の魔法道具は暴発を防ぐための安全装置が付いているらしいから暴発の心配はないけれども、学校の魔法道具はわざと安全装置を付けていないらしい。危険を知るためだ。
シャルロッテからその大失敗の話を聞いた時は、ただディアンに落ち着きがなかったせいだと思っていたけれどどうやらそれだけではなかったらしい。
その代わり、そういう子は体内に魔力を循環させるのが上手な事が多いため、自らの肉体を強化する魔法……肉体強化魔法の優れた使い手になることが多いのだ。
しかも便利なことに、手に持ってさえいれば剣などの道具にも肉体と同じように強化魔法をかけることができるため、武器を持って戦う騎士にはぴったりなのである。
ディアンの場合、外部放出の制御はイマイチだけど、シャルロッテ同様魔力自体は高かったのではないのだろうか。
だから騎士学校を薦められたのだと私は考えている。何故!?とか思っててすまん、ディアン。
「へへ、あんまり見られるときんちょーするな!」
「毎年のことと言えば毎年のことだけど…俺たちの魔法が参考になるなら存分に見てくれよ。」
車夫のみなさんは見た目こそかなりいかついが、結構フレンドリーだ。
毎年のようにこうやって私達くらいの子供を送り届けているのだ。ある程度は慣れているのだろう。軽い口調は緊張をほぐすためだろうか。しかし、それとは裏腹に、強化魔法を唱えたとたん、魔力が均一に体に広がっていくのがわかる。
先生がよく見ておけと言うのも納得だ。
体内の魔力を循環させる強化魔法は精霊に頼らない魔法だ。つまり、自分自身の腕前が問われる。それを易々とこなすということは、彼らは確かに強化魔法のエキスパートなのだろう。
説明が多くて申し訳ございません。




