魔王とはいったい何なのか。
さて、二年間費やしただけはあって、私はかなりの数の本を読んだ。
読みやすい入門書のような本から、今にも朽ちそうで一瞬触るのをためらうようなボロボロの本まで。
時に子供が読むか!?こんな本!?と思う本もあったけど、実はここ、一般の人も使えるんだそうだ。
町の図書館も兼ねてるから、難しい本もあるってわけだね。道理で規模がでかいはずだよ。
そんな本の情報と、精霊さん達との雑談の中から、私は気づいてしまったことがある。
正直、研究者とか魔術師には気付いている人いると思う。私でも気づく位だから。
だけど、たぶん公にはしたくないだろうな。
魔人…つまり、種族で言うと魔族のことについてだ。
魔王と言われる人達や、その部下達はまずこの種族である。
基本的に突然どこからともなく現れ、魔獣の軍団を率いたり、強力な魔法で人々を蹂躙する…という、テンプレのように魔王ちっくな人々なんだけど、時々今まで普通の人と思われていた人が突然強大な魔力を身にまとわせ異形となり、大暴れすることがあるらしい。
魔族化、または魔人化といわれる現象だ。
それだけ見ると、人に化けていた魔族が正体を現しただけに思える。
でも、あれ?って思ったんだよね。
それはある記録というか、歴史書を読んでいた時のこと。
(…魔王アーバンは、一か月で西メルディ王国の大半を焦土にに変えた。正体を現すまでのアーバンは10歳まで西メルディ王国の隣国、ハーネル王国の辺境の村にひっそりと暮らしていた。)
二百年程に現れた魔王アーバン。
混血が一気に進んだという例の大虐殺をやらかした魔王ほどではないものの、彼も10年程の間に二人の国王を殺し、小さいけど山を吹っ飛ばし、そのふもとを魔獣の森に変えてしまうというトンデモなことをやらかしている。
10年位で勇者ラーンを筆頭とした複数国からなる連合軍により倒されたらしいけど、いまだにその時作られた魔獣の森は強力な闇の魔力に支配されており、中~高レベル冒険者以外は入れないほどの危険スポットであるらしい。
(アーバンが魔王と化した時、町にはまだ彼の両親が住んでいた。しかし、魔王アーバンのうわさを聞いた民衆は、恐怖のあまり両親を殺してしまう。)
…子供が魔王になったという理由で、その親が民衆に殺された…という、記録であるが…。
その記録には、魔族の両親が処刑の時に同じように魔族化したとか、抵抗して暴れたとか、そういう記述がなかったんだよね。
魔族が人間とか、獣人とかと同じように一つの種族だとしたら、その性質はある程度親から子供に受け継がれるはず。
そうなると、当然子供が魔族なら、その親も魔族の血を引いているはずだ。
それが最初の違和感。
確かに他の記録には、まるで跡を継ぐかのように親子二代で魔王やってました、っていう人達もいたけどさ。
ただ単に記述が漏れてるのかな?とも思ったけど、魔族…それも魔王の両親なら普通に考えたらかなり強いだろう。
激闘の末に倒したというなら、省かないと思う。魔族の恐ろしさとか勇者達の正当性を喧伝するなら、恐ろしい魔族は今際の際に正体を現して大暴れしたけど何とか仕留めたよ!とかの方が効果あるような気がするし。
なんかそこが腑に落ちなくて、私は他の歴史書も探してみた。
そしたらあったよ。逆に魔王の子と言われる人が、これまた周囲の人から迫害されて、ついにはあっさりと殺されてしまったっていう記録。
この記録にも抵抗したらしい記述は一切なかった。
ピンチの時に魔力を暴走させてしまうということ自体は、普通の子供すら結構あることらしいから、強大な魔力を持つ魔族の子供ならなおさらありそうなものだが。
だから私は思った。
魔力の制御が上手くいかなかったり、または桁ハズレの魔力のせいで、肉体や精神に変化が起きた状態を魔族化、魔人化っていうんじゃないかと。
魔人は非常に稀らしいし、大体人間と敵対してしまい、詳細がわからないから一般的には知られてないけど……なんかそれっぽいと思ったんだ。
で、精霊さん達に恐る恐る聞いてみたら、あっさり認めやがった。
むしろ、で?ぐらいの反応だった。
拍子抜けもイイとこだ。
まあ、そんなわけで知ってる人は知ってると思うよ。魔族の正体。
だいいち、私と同じように精霊が見えるっていうキュミラスさんがいるんだもん、同じように精霊さん達と会話までできると仮定すれば知る機会はいくらでもあると思う。
たぶん国がここまで教育に力を入れるのもたぶんそれが理由だろうね。
魔力の制御をミスって、怪我とかしないように!っていうのも理由の一つではあるだろうけど、実際の目的は、魔力の強い子供が魔力を暴走させて魔族化するようなことが無いように、ってことだと思う。
もちろん、人材育成の面もあるんだろうけど、監視の側面が強いんだろうな。
まあ、私もシャルロッテには(ついでにディアンにも)魔王にはなってほしくないからなぁ。
二人と離れるのは寂しいけど、魔力制御の失敗や暴走についての恐怖は、図書室の本や、精霊たちの世間話でちゃんとわかってるつもりだからね。我慢の子である。




